児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノサイト開設 容疑の会社員逮捕 神奈川

 横浜地裁H15.12.15、東京高裁H16.6.23、最高裁H19.3.28によれば、掲示板開設が正犯の着手で、投稿されたら正犯既遂になりますから、開設行為のみを取り出すと、正犯の未遂になって、不可罰ですね。
 神奈川県警、どうして正犯で立件しない? 自信ないのか?

 なお、名古屋地裁H18.1.16、名古屋地裁H19.1.10、名古屋高裁H19.7.6、最高裁H19.11.9は、掲示板開設管理行為を幇助としています。
 名古屋高裁が判断を避けたので、正犯説・幇助説ともに判例違反になっています。
 有罪には違いないのですが、処断刑期が2倍違います。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090530-00000049-san-l14
県警の調べによると、容疑者は平成18年5月、携帯電話の掲示板に「KING博士のマル秘画像庫」という児童ポルノサイトを開設。サイト内の「JC(女子中学生の意味)ハード」などという画像保管庫に東京都の男(35)=同法違反容疑で逮捕=ら2人が児童ポルノ画像3点を掲示するのを幇助(ほうじょ)した疑いが持たれている

東京高裁平成16年6月23日
2当裁判所の基本的な判断
(1)本件で問題とされているのは,児童ポルノの陳列であるが,陳列行為の対象となるのは,前記のような児童ポルノ画像が記憶・蔵置された状態の本件ディスクアレイであると解される。
(2)原審以来被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり,不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信させて本件ディスクアレイに記憶・蔵置させながら,これを放置して公然陳列したことである。
 そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーバーコンピュータによる本件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる。したがって,この陳列行為が作為犯であることは明らかである。そして,原判示の被告人の管理運営行為は,この陳列行為を開始させてそれを継続させる行為に当たり,これも陳列行為の一部を構成する行為と解される。この行為の主要部分が作為犯であることも明らかである。確かに,被告人が,本件児童ポルノ画像を削除するなど陳列行為を終了させる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解されるが,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される。
 なお,更に付言すると,被告人は,児童ポルノ画像を本件ディスクアレイに記憶・蔵置させてはいないが,前記のように,金銭的な利益提供をするなど,より強い程度のものではなかったとはいえ,本件掲示板を開設して前記のように前記送信を暗に慫慂・利用していたのである。この行為は,陳列行為そのものではないから,開設行為以外の点は原判決の犯罪事実にも記載されていないが,陳列行為の前段階をなす陳列行為と密接不可分な関係にある行為であるから,これも広くは陳列行為の一部をなすものと解される。そして,これが作為犯であることは明らかである。
(3)被告人の故意は,前記認定から明らかなように未必的な故意であって,本件陳列行為開始時点からあったと認定でき,この点の原判決の判断は正当である。

(2)所論は,要するに,本件犯行における被告人の実行行為が,児童ポルノ画像を認識しながら削除しなかったという不作為であるとするならば,?訴因において,被告人が本件掲示板に児童ポルノ画像が掲載されているのをいつ認識したのか明示しなければならないのに,これを特定させないまま審理判決をした原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある(控訴理由第3),?訴因において,作為義務の内容,発生根拠等を明示しなければならないのに,これを特定させないまま審理判決をした原審の訴訟手続には,判決に影響を及ばすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある(控訴理由第4),と主張する。
 しかし,前記のとおり,被告人の本件犯罪行為の主要なものは作為犯である上,所論のいう不作為についても,原判決は,被告人は,本件陳列行為の開始当初から,被告人に児童ポルノ画像の未必的な認識があったとしていて,この点を明確にしている。
 また,本件陳列の対象となっているのは,児童ポルノであって,犯罪行為を構成するものとしてすみやかに削除されるべきものであるから,削除義務の内容,根拠等も,原判決の認定事実自体から明らかにされていると解することができる。
 論旨は理由がない。

(3)所論は,要するに,児童ポルノ公然陳列罪は,状態犯と解すべきであって,被告人が本件児童ポルノ画像を認識する以前に既遂に達しているから,被告人を事後従犯に問うこともできないし,仮に本罪が継続犯であるならば,被告人には幇助犯が成立するにすぎないのに,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第14)。
 しかし,児童ポルノ公然陳列罪は,いったん陳列罪として既遂に達しても,その後も陳列がなされている限り法益侵害が続いており,また,陳列行為も続いているものと解することができるから,所論のように状態犯ではなく,継続犯と解するのが相当である。また,前記説示したところによれば,被告人は,自らの利益のために本件犯行に及んだものであって,その関与の態様,程度等に照らしても,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決の判断は正当であって,所論のように幇助犯にとどまるものと解するのは相当でない。
 論旨は理由がない。