児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

虚偽自白が撤回できない話

前田裕司・奥村回[編]「えん罪・氷見事件を深読みする国賠訴訟のすべて 」
p7
9 自白偏重そのもの
長能ら警察官は、アリバイ資料を入手しながら無視若しくは隠匿し、物的証拠がまったくないまま、柳原氏を恐怖に陥れ自白を強要した。
長能ら警察官は、事件をまったく知らない柳原氏から供述を引き出すわけだから、何らかの誘導、偽計がなければ調耆を書けないわ氏は、アリバイがあり、客観的証拠がない中で自白のみで有罪判決を受け、実際刑務所に入っているのである。
物的・客観的証拠がまったくないことを十分に知っていた松井検察官は、自白調書の内容を修正し追加もしていた。
警察も検察も、いつでも引き返すことができたはずで、その機会は何度もあった。
また、裁判所も十分に自白を吟味し、客観的証拠を厳しく求めることを日常的にしていれば正しい判決ができたはずである。
10弁護士も冤罪に加担
氏の逮捕時の当番弁護士が、国選弁護士として選任されたが、弁護士が氏の真摯な声を聴くこともなく事務的に事件を処理してしまったことが、真実を見抜けなかったことにつながった。
弁護士は、当初の接見で否認していたこと、物的証拠が氏との関係を示すものは全くないことから、弁護方針を慎重に考えなければならないのに、自白を信じて情状弁護だけに絞ってしまった。
家族も弁護人も、4月16日の新聞で実名入りの逮捕報道を見て氏が犯行をやったと信じてしまった。被害者二人に弁償金250万円を支払い、刑を軽くすることを目指したが、実刑判決となってしまった。
また、氏が頼りにしていた父親が、勾留中に死亡した。
氏は、裁判が進行するあいだ、結局自白を撤回することができなかった。
11裁判で有罪
裁判は、4回の公判が行われ、第一回公判では、公訴事実を認め、弁穫士は検察官請求証拠の取調べを全面的に同意した。
第二回公判では、兄が弁償金として被害者に支払ったこと、第三回では、氏に反省の弁を述べさせた。同年11月27日の第四回で、さらにもう一人の被害者.に弁償金を支払ったことを示した。判決は、即日言い渡され、懲役3年(未決130日参入)の実刑であった。弁護士が氏のところに寄ってきて、「控訴してもむだだから刑務所に行ったほうがいい」と言ったそうである。

13刑務所で服役
氏は、刑務所に送られる時に、「自分自身、本当に悪いことをしたから刑務所に行かなければならない」と思い込むことにした。
そうしなければ、刑務所生活を耐えることができなかったという。