児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

[取扱事件から]上田正基「コンピュータグラフィックス(CG)で作成した画像に係る記録媒体が「児童ポルノ」に該当するとされた事例(東京地裁平成28年月15日判決2016WLJPCA03156003)」立命館法学2016年3号

 国会図書館では複写謝絶されるのですがpdfで公開されていました。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/16-3/007uedamasaki.pdf
【まとめ】
本判決は,児童ポルノが適法であった時代に既に公表されていた,現行法上児童ポルノに該当し得る写真に,被告人が一部改変を加えて,CG 画像を提供目的で作成したという事案に関するものである。したがって,はじめから被告人が,CG 画像を作成する目的で児童ポルノに該当し得る児童の姿態の写真を撮影した場合に,「姿態をとらせ」て製造(現行児童ポルノ法条項)や「ひそかに」製造(同条項)に該当するのか否かについては判示していない。
また,本件においてはCG 作成の基となった写真が存在していることが確認され得た事案であったが,そのような写真の存在が証明され得ない場合にはどうするのかという問題も残されている。すなわち,本判決の立証構造からすれば,実写かCG かの区別がつかない程精巧なCG である疑いがあるが,実際の写真データ等が確認できず,実在の児童の存在が証明できないという場合には,全て無罪とせざるを得ない。そのような場合に,実在の児童が実際に被害にあっている可能性を考慮して,どのような規制を加えていくのかを立法論として議論することは有益であろう。もっとも,実在の児童の被害が証明されない限りは,現行の児童ポルノ法とは異なる規制根拠が必要であり,証明軽減といった目的を安易に挙げるべきではないだろう。