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平成28年11月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官.
号懲戒処分取消等請求事件(原審. 福島地方裁判所)
口頭弁論終結日平成28年9月26日
判決
控訴人福島県
主文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は, 第1, 2審とも,被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
・主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,福島県立高校の教員であった被控訴人が,県立高校に勤務していた昭和61年11月頃から平成元年3月までの間,顧問をしていた部活動に所属していた女子生徒と部活動終了後に頻繁にみだらな行為を行ったことを理由として,福島県教育委員会が行った懲戒免職処分(以下「本件懲戒免職処分」という。)及び一般の退職手当等の全部を支給しない旨の退職手当支給制限処分(以下「本件退職手当支給制限処分」という。)は,いずれも裁量権を逸脱するものであって違法であると主張して,福島県教育委員会が所属する地方公共団体である控訴人に対し,その取消しを求めた事案である。
原審が,被控訴人の請求をいずれも認容したところ,控訴人がこれを不服として控訴した。
・・・(3) そこで, 上記のような観点に立って本件非違行為について検討するに,本件女子生徒は,精神的に未熟で,社会性にも乏しく, 両親にもっと愛してもらいたいという満たされない思いがあり,悩みを聴いてくれる被控訴人を慕うようになったものであり,.本件女子生徒が求めていたのは,親の代わりに本当に自分を大切にしてくれる人,愛してくれる人である。
被控訴人は,本件女子生徒が不遇な家庭で育っており,上記のような経緯で,自分に好意を寄せていることを承知しながら,本件女子生徒と婚姻する気持ちなど全くないにもかかわらず,妻と必ずしもうまくいっていなかったこともあって性交渉を持つに至ったものであり,被控訴人の行為は,本件女子生徒に社会性が乏しく,,未熟であることに乗じて,自己の性欲を満たすために本件女子生徒の尊厳を無視して性交渉を持つという福島県青少年健全育成条例違反に相当する行為を行い,その後も同様の行為を2年5か月にもわたって多数回重ね,成長の過程にあった本件女子生徒の心身に重大な傷を負わせ,その健全な成長の妨げになる行為を繰り返したものであり極めて悪質な行為といわなければならない。
被控訴人は,教育に携わる公務員であり,生徒の尊厳に十分に配慮しつつ,生徒の健全な育成を図るべく,社会一般のルールやモラルを教え導く立場にありながら,自己の立場を弁えることなく,顧問の先生として本件女子生徒が好意を寄せていることを奇貨としてこれに乗じ,指導の対象である生徒の尊厳を無視して性的行為を長期間にわたって継続するという,教育に携わる公務員としては想像を絶する到底許されない行為を行ったものであって,その動機に酌量の余地は全くないし,公立学校における教育全般や教育に携わる公務員に対する県民の信頼を大きく損なったというほかはない。被控訴人は,本件非違行為により,当時の妻と離婚し,子らとも別れることになるなど,それ相応の制裁を受けた旨を主張するが,これらの事情は被控訴人個人の私生活に関わる事情であって,公務員としての職務に関わる事情ではないから,考感すべきとはいえない。
また,被控訴人は,本件女子生徒と性的な関係を持ったことを素直に認め,平成24年3月12日には,福島県教育委員会に対し,職を辞してお詫びしたい旨の上申書及び退職願を提出しているなど,本件非違行為につき,反省悔悟の情を深めていると主張するが,被控訴人は、2年5か月にも及び性行為に及んでいるにもかかわらず,被控訴人本人尋問において,1か月に一度程度の性交渉にすぎないとか,本件女子生徒との性的な関係を現在も非常に真摯で真面目で良い思い出であったと認識していると述べるなど,本件非違行為の悪質性や重大性を真摯に受けとめているとは到底認め難い。
以上によると,被控訴人が平成2年頃本件女子生徒の母親に対し和解金として50万円を支払っていること,本件非違行為は,本件懲戒免職処分の23年以上前の事であり,被控訴人は,本件懲戒免職処分を受けるまでの間,懲戒処分を受けることなく,福島県の教育に携わつてきたものであることな'どを掛酌したとしても,上記のとおり,本件非違行為は極めて悪質であって,県民の学校教育に対する信頼を根底から覆す悪質極まりないものであるところ,福島県教育委員会に本件非違行為が発覚したのは平成24年2月であって,その後遅滞なく本件懲戒免職処分が行われていることからすれば,本件懲戒免職処分が社会通念上著しく妥当を欠くものとはいえず,福島県教育委員会がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできない。
したがって,本件懲戒免職処分は適法である。