児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

長野県条例の処罰範囲は、淫行に留まるか、わいせつ行為に及ぶか?

 他府県並みに、「わいせつ行為」も含めるとして、定義は刑法と同じじゃだめですよね。刑法は社会的風俗という法益を前提にした定義だから。
 さらに、大法廷判決を前提とするとわいせつ行為についても、「(広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、)青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような行為」という絞りを掛けないと、広範な規制になりますね。
 難しい問題は長野県だけでは処理できないのでスルーして、隣県並みの規定になると予想しています。

http://www.shinmai.co.jp/news/20150509/KT150508ATI090032000.php
委員からは「(子どもに性被害を与える)常習性がある例もある」との指摘があり、安部座長を除く3人の委員は、最高刑の2年以下の懲役か100万円以下の罰金を科すことが妥当だとした。

 何をもって大人が子どもに性被害を与えたかを示す構成要件については、警察の恣意的な捜査を防ぐなどの観点が必要との指摘があった。「淫行」の概念を解釈した1985年の最高裁判例を部分的に採用し、「専ら性的欲望を満足させる目的で、性行為を行うこと」などを列記するべきだとした。

 他県の青少年健全育成条例の多くに盛られている「深夜外出の規制」についても検討。保護者が「深夜に青少年を外出させないように努めなければならない」との規定を設ける一方、大人が保護者に無断で子どもを深夜に連れ出すなどの行為には30万円以下の罰金を設けるべきだとした。

 条例モデルには、被害者支援の条項が盛り込まれる予定。検討委は「できるだけ幅広い被害者支援につなげるため」とし、性被害の定義を広くするべきだとした。

阪高裁H23.6.2
 ア 控訴趣意第1について
 しかし,わいせつな行為を処罰の対象とする本条例が憲法31条に違反しないものであることは,昭和60年最高裁判決の趣旨に徴して明らかである。すなわち,もともと,わいせつ行為とは,いたずらに性欲を興奮又は刺激させ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいうものであり,その内容が不明確であるとはいえない。また,本条例にいう「わいせつな行為」についても,あらゆる性的行為がこれに含まれるものと解すべきではない。本条例は,何人も,青少年に対し,みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない(本条例21条1項)と定めているが,ここにいう「わいせつな行為」についても,本条例が青少年の健全な育成を図り,これを阻害するおそれのある行為から青少年を保護することを目的とする(本条例1条)ことからみて,性的な行為のすべてを禁止する趣旨とは考えられない。この点は,昭和60年最高裁判決がいわゆる淫行条例(福岡県青少年保護育成条例)に定める淫行について加えたのと同様の限定を付して解釈されるべきである。そうすると,弁護人がいうような結婚を前提とする真摯な合意に基づくものであるような場合までこれに当たるとはいえない。
・・・
福岡高裁H26.2.26
5 控訴理由第4について(弁護人園田寿控訴趣意を含む)
 論旨は埋由不備ないし法令適用の誤りの主張として,原判示1の行為について,原判決が,広島県条例所定のわいせつ行為は,①いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり,②その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し,性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為である旨説示したことに対して,②の要件は不適切であり,また,同条例にいうわいせつ行為は,心身の未成熟に乗じた不当な手段により,あるいは青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような場合に限定されるのに,原判決はそのような限定を行わないまま,同条例を適用したなどというのである。
 しかし,原判決が②の部分を本件についての必要条件として判示したものでない上,原判決は,罪となるべき事実として,「被告人は,単に自己の性的欲望を満たす目的で,当時13歳の被害女性に対して,接吻し,手指で同人の陰部をもてあそぶなどした上,自己の陰茎を同人の陰部に押し当てた」旨認定判示し,同条例所定のわいせつ行為に該当するとしていることは明らかであって,原判決の罪となるべき事実の記載に欠けるところもなければ,法令適用の誤りも存しない