児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノをリツイートした疑いで書類送検 全国初

 児童が自画撮でアップしていることも、散見されますけど、それをリツイートした事件の弁護をしたことがあります。送検されませんでした。

http://digital.asahi.com/articles/ASGCN4K4MGCNULOB00G.html
ツイッター上に投稿された児童のわいせつな画像をリツイート(転載)し、不特定多数の人が見られる状態にしたとして、神奈川県警と熊本県警の合同捜査本部は21日、大阪府大東市の配送業の男(52)を児童買春・児童ポルノ法違反などの容疑で書類送検し、発表した。同じ画像をリツイートしたとして、男子中学生(14)についても同法違反の非行内容で児童相談所に通告した。
 神奈川県警によると、児童ポルノ画像をツイッター上に投稿した疑いでの立件は過去に例があるが、他人の投稿内容を転載した疑いがある者まで立件したのは、全国で初めてという。
 この画像を最初にツイッター上に投稿したとして、横浜市の無職の男(23)も同法違反の容疑で書類送検された。今年3月、自宅でツイッター上に児童ポルノ画像1点を投稿した疑いがある。
 大阪府の男らほかの2人は、この画像をリツイートし、不特定多数のネット利用者に見せた疑いがある。3人とも容疑を認め、「フォロワー(読者)の反応を見たかった」「わいせつな画像を収集するため」などと話しているという。3人のフォロワーは計約4200人いた。3人とも児童との直接の関係はないという。

 警察からは犯罪インフラ扱いされて証拠の保全を求められているだろう。

処罰の姿勢、拡散防止狙う 児童ポルノ転載容疑で書類送検 /神奈川県
2014.11.22 朝日新聞
 ツイッターは1日平均約5億件のつぶやきが投稿されている。ツイッター社は児童ポルノ画像のアップを禁止しており、発見した場合は連絡を呼びかけるほか、存在を確認すれば予告なしに削除するなどの対策を取っている。しかし、一度ツイートされると、次々とリツイートされて爆発的に拡散されることもある。
 同社の担当者は「残念ながら対策が完璧とは言えないが、違反を見つけた場合の報告方法をより簡単にするなど工夫している。警察とも相談し、より良い解決法を探っている」とコメントした。

1 元ツイッターの画像投稿行為とその法的評価
 ツイッターに画像を添付する場合は、メッセージ自体に画像情報を含ませるのではなく、画像は画像専用のサーバーにアップロードして、そのurlをメッセージの末尾に添付する方法で行われているようですが、閲覧する側の端末ではメッセージに並んで画像も表示されるようです。
 児童ポルノ公然陳列罪(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条6項)にいう「公然と陳列」 とは、不特定又は多数の者が閲覧することのできる状態に置くことをいうので、このように画像を表示させる方法も「陳列」に該当します。
 法的な構成としては、判例は、画像を記録蔵置したサーバーを公然陳列したという構成を取っていて(最決h13.7.16)、「児童ポルノ公然陳列罪は,いったん陳列罪として既遂に達しても,その後も陳列がなされている限り法益侵害が続いており,また,陳列行為も続いているものと解することができるから,所論のように状態犯ではなく,継続犯と解するのが相当である。」と理解されています(東京高裁H16.6.23)

2 リツイート行為の法的評価
リツイート行為は

https://support.twitter.com/articles/229621
リツイートとは?
リツイートとは他の誰かのツイートを再投稿することです。Twitterリツイート機能を利用すれば、あなたのフォロワー全員でツイートをすばやく共有できます。

と解説されていますが、画像付きのメッセージをリツイートした場合、画像のurlを含む元メッセージが再送信されて、閲覧者の端末上では元メッセージに並んで元メッセージに添付された画像が表示されるようになっていますの、リツイート者のフォロワーが画像を閲覧することができます。
 このように他人がサーバーに記録蔵置した児童ポルノ画像のurlを配布する行為については、当職らが弁護人であった最決H24.7.9が公然陳列罪(正犯)に当たるとしています。
 もっとも、リツイート行為は他人がアップした画像につき場所を教えて閲覧者を増やしていることになるので、アップした者の公然陳列行為への幇助と評価することも可能で、同最決では公然陳列罪の幇助に留まるという反対意見(2名)も付されていますので正犯か幇助かは微妙なところです。

最高裁判所第3小法廷決定平成24年7月9日
【掲載誌】  最高裁判所裁判集刑事308号53頁
       判例タイムズ1383号154頁
       判例時報2166号140頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察学論集66巻12号152頁
       警察公論68巻8号88頁
       判例時報2202号186頁
       東京経済大学現代法学25号175頁
       法学新報120巻5〜6号303頁
       法律時報85巻11号113頁
       刑事法ジャーナル37号101頁
 弁護人柴崎祥仁ほかの上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官大橋正春,同寺田逸郎の各反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 裁判官大橋正春の反対意見は,次のとおりである。
 私は,原判決の法令の解釈について刑訴法411条による職権判断を示さない多数意見には賛成することができず,原判決には,判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,破棄しなければ著しく正義に反するものとして,同条1号により破棄すべきものと考える。
 原判決の認定によると,被告人は,共犯者と共謀の上,共犯者がインターネット上に開設したウェブページに,第三者が他のウェブページに掲載して公然陳列した児童ポルノのURLを,その「bbs」部分を改変した上で掲載したものであるというのである。
 原判決は,被告人の行為は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条4項の「公然と陳列した」に該当するとして,児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めた。
 刑法175条にいうわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい,その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないとするのが当審の判例最高裁平成11年(あ)第1221号同13年7月16日第三小法廷決定・刑集55巻5号317頁)であり,その趣旨は,児童ポルノ法7条4項の「公然と陳列した」にも該当するものである。
 しかし,「公然と陳列した」とされるためには,既に第三者によって公然陳列されている児童ポルノの所在場所の情報を単に情報として示すだけでは不十分であり,当該児童ポルノ自体を不特定又は多数の者が認識できるようにする行為が必要で,この理は,所在場所についての情報が雑誌等又は塀に掲示されたポスター等で示される場合に限らず,インターネット上のウェブページにおいてなされる場合にも等しく妥当する。ウェブページ上で児童ポルノが掲載されたウェブサイトのURL情報が示された場合には,利用者が当該ウェブページの閲覧のために立ち上げたブラウザソフトのアドレスバーにURL情報を入力して当該児童ポルノを閲覧することが可能となり,そのために特段複雑困難な操作を経る必要がないといえるが,このことは,パソコンで立ち上げたブラウザソフトに雑誌等で示されたURL情報を入力して閲覧する場合においても同様であり,両者の間に特段の違いがあるものではない。
 平成13年決定の判旨の後段部分は,当該事件の内容から明らかなように,被告人自身が開設・運営していたパソコンネット上において,そのホストコンピュータに記憶,蔵置させた画像データの閲覧について,再生閲覧のために通常必要とされる簡単な操作に関し述べるものであり,本件のように,被告人によって示されたURL情報を使って閲覧者が改めて画像データが掲載された第三者のウェブサイトにアクセスする作業を必要とする場合まで対象とするものではないと解される。
 そうすると,本件について被告人の行為は児童ポルノ法7条4項の「公然と陳列した」には当たらず,公然陳列罪が成立するとした原判決には法令の違反があり,これが判決に影響を及ぼすことが明らかであり,原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから,刑訴法411条1号により原判決を破棄し,本件については幇助罪が成立する余地もあることから,同法413条本文により,幇助罪の成否について更に審理を尽くさせるため,本件を原審である大阪高等裁判所に差し戻すべきものと考える。
 なお,被告人の行為は社会的には厳しく非難されるべきものであり,また,新たな法益侵害の危険性を生じさせるものであるという原判決の指摘も理解できないではない。しかし,そのことを強調し,URL情報を単に情報として示した行為も,「公然と陳列した」に含まれると解することは,刑罰法規の解釈として罪刑法定主義の原則をあまりにも踏み外すもので,許されるものではなく看過できない。被告人の行為については児童ポルノ公然陳列罪を助長するものとして幇助犯の成立が考えられるのであり,その余地につき検討すべきであって,あえて無理な法律解釈をして正犯として処罰することはないと考えられる。
 裁判官寺田逸郎は,裁判官大橋正春の反対意見に同調する。

 なお、森山先生の本を読んでも、正犯か幇助か、提供罪か公然陳列罪かがよくわかりません。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P202
事案にもよりますが、児童ポルノ公然陳列罪(第7条第4項)の共同正犯、幇助犯や、児童ポルノを不特定多数の者に提供する罪(第7条第4項)の共同正犯、幇助犯が成立する可能性があります。
たとえば、事案によっては、その児童ポルノサイトにアクセスすることが困難であったのが容易になったとみることができますから、ハイパーリンクを張る行為について、やはり従前とは別に提供の対象が広がり、取得可能性が新たに設定されるという意味で、新たな対象として不特定多数の者に対する提供があったと評価することも可能です。そして、新たな取得可能性が広がったという程度、児童ポルノサイト開設者との意思の連絡の有撫等にもよりますが、不特定又は多数の者に提排する罪の正犯、共同正犯又は幇助犯が成立しうると考えられます。
また、公然陳列罪について、ハイパーリンクを張ることによって、当該サイトヘのアクセスが困難であったのが容易になったのであり、従前とは別に閲覧対象が広がり、認識可能性が新たに設定されるという意味で、新たに公然と陳列したと評価することも可能です。たとえば、会員制の方式をとり、パスワードを入力しなければアクセスできないような児童ポルノの画像について、このパスワード入力の段階を踏まなくても直接画像に到達できるようなリンクを張った場合、新たな公然陳列があったとみることができ、もとの画像の公開者との意思の連絡がない場合は公然陳列罪の単独正犯、意思の連絡がある揚合は公然陳列罪の共同正犯が成立すると考えられます。
また、このように会員以外は画像に到達するのが不可能な場合でなくても、全く手がかりのない状態からアドレスを入力して画像に到達するのは、通常著しく困難であり、これを可能にする点で、不特定多数の者が閲覧するのを容易にしているといえ、もとの画像の公開者との意思の連絡がある場合は公然陳列罪の共同正犯、意思の連絡がない場合は公然陳列罪の幇助犯が成立すると考えられます。
以上のように、児童ポルノ公然陳列罪(第7条第4項)の共同正犯、幇助犯や、児童ポルノを不特定多数の者に提供する罪(第7条節4項)の共同正犯、幇助犯が成立する可能性があります。