児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

不倫だとか、知り合って間もないとか、回数が多いと、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為(第2形態の性行為)と認定されやすい(名古屋高裁h23.4.14)

 刑事は無罪だったんですけどね。

損害賠償請求控訴事件
名古屋高等裁判所判決平成23年4月14日
(3) 違法性の有無
   ア 判断
    (ア) 犯罪の嫌疑の有無
      前記(2)によれば,被控訴人には妻があるから,被控訴人とA子との性行為は,単に成人と18歳未満の青少年との性行為というにとどまらず,被控訴人の妻に対する関係で民事上不法行為を構成する違法行為であり,このような関係を継続すれば,A子において被控訴人の妻から損害賠償を請求され得るのであり,双方独身(あるいは婚姻関係が破綻している場合)の恋人同士の関係とは質的に明らかに異なっているところ,31歳の社会人で妻子のある被控訴人は,被控訴人とA子とがこのような関係であることを理解していたばかりか,妻と離婚してA子との婚姻に発展することは望んでいなかったと認められる。そして,被控訴人は,A子がアルバイトとして働く店舗の副店長という立場でA子を管理監督する立場にあり,その職務上もA子との関係が一定範囲から逸脱しないようにすべき立場にあった。他方で,A子は高校生であり,前記(2)のとおり,被控訴人と婚姻に発展することは望まないが,被控訴人が真剣に付き合うというのであれば妻子があっても性的関係にも同意するというのであり,被控訴人との交際の社会的・法的意味の理解は十分でなく,被控訴人の真剣度に関心があったと認められる。したがって,被控訴人は,上記のとおりその身分的・雇用関係上の立場を顧みることなく,被控訴人との性行為が法的にいかなる意味を持つかを十分に理解していない18歳未満のA子との間で本件性行為に至ったということができる。殊に本件においては,被控訴人がA子と初めてのデートをしてからわずか1か月余り(本件警察官らの認識。実際には約2週間程度)で性行為に至っており,本件性行為までの2か月弱の間で少なくとも4ないし5回(本件警察官らの認識。実際には8回)の性行為を持っている。このような場合,本件規定にいう「いん行」のうち,昭和60年大法廷判決がいう第2形態の性行為に当たる蓋然性が高いということができる。
・・・
  (エ) 被控訴人は,本件被告事件において無罪判決を得ている旨主張する。しかし,本件無罪判決は,昭和60年大法廷判決から20年以上が経過し,結婚のあり方や成人男女の出会いと交際,結婚生活や同棲生活,離婚に対する考え方や意識等も大きく変化し,多様化している状況下の判決であり,時代の変化や価値観の多様化等を前提にすれば,真摯な交際でないというためには,現在の社会通念から見て「結婚を前提としない」ことだけで決めるのは難しいとした上で,被控訴人とA子との本件性行為について,第2類型の性行為というには,なお相当な疑問が残ると言わざるを得ないとしており(甲1),時代の変化を踏まえた上で事実のあてはめを示しているというべきである。しかし,本件性行為は,結婚を前提としないものである上,被控訴人には第2子を妊娠中の妻と子供がおり,被控訴人には妻と別れる意思は全くなく,両者の付合いや性交渉はいずれも被控訴人による誘いをきっかけとしているほか,前記説示のとおり,両者の年齢,性交渉に至る経緯,両者間の付合いの態様等を勘案すると,本件無罪判決の考え方とは異なり,本件性行為については,第2形態の性行為に当たるとのあてはめをする余地は十分にあったというべきであるから,本件警察官らのそのような判断に合理的根拠が欠如しているといえないことは明らかで,この点についての被控訴人の主張は採用できない。
    (オ) 被控訴人は,本件について,A子の母親らが被控訴人から金員を恐喝しようとしたができず,その腹いせとしてA子の親らがA子に暴力を振るって無理に告訴をさせた旨主張する。しかし,本件条例は青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為を防止し,もって青少年を保護し,その健全な育成に寄与することを目的として定められ,その中で本件規定が設けられており,その違反の罪は親告罪でもないから,被控訴人の上記主張が本件規定違反の罪の成否を左右することはなく,この点についての被控訴人の主張は採用できない。