こんな論点てんこ盛りの事件は、ちゃんと控訴審で法令解釈を確認して欲しいところです。
島田さんは共同正犯を認めることは可能であるとされています。
注36ではこのブログ(名古屋地裁H18.1.16)が引用されています。
ちなみに名古屋地裁事件は、正犯説に立てば、掲示板設置行為=正犯未遂=不可罰だとして、控訴・上告しています。
正犯説も通らない。
名古屋高裁h19.7.6
論旨は、要するに、原判示2につき、電子掲示板開設行為は、児童ポルノ公然陳列罪の正犯の未遂であり、これを公然陳列罪の幇助と認定した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、ひいては法令適用の誤りがある、というのである。
そこで、本件のようにインターネットの電子掲示板を利用しての児童ポルノ公然陳列罪における電子掲示板開設行為の性質を検討すると、後記2で説示するとおり、電子掲示板に児童ポルノ画像を送信して記憶、蔵置させ、不特定多数のインターネット利用者に対し、その画像データの閲覧が可能な状況を設定する行為が、児童ポルノ公然陳列罪の実行行為に当たると解されるところ、
①電子掲示板開設者が児童ポルノ画像をその電子掲示板に送信する場合(原判示1の場合)、電子掲示板開設行為は、自らが行う児童ポルノ公然陳列のための準備(予備)行為となるにとどまり、また、
②投稿者らが児童ポルノ画像を電子掲示板に送信する場合(原判示2の場合)、電子掲示板開設行為は、実行正犯である投稿者らが行う上記実行行為を、それ以外の方法で容易にする行為であって、自らのためにするものではないから、幇助行為に他ならない。
したがって、原判示2について、電子掲示板開設行為を幇助と認定した原判決に事実の誤認はないし、それに基づく法令適用の誤りもない。
なお、所論は、原判決の法令適用の前提となる事実認定が、同種事案における他の裁判例と異なるから、法の下の平等(憲法14条1項)に違反し、また、罪刑法定主義(憲法31条)にも違反する、という。しかし同種事案における他の裁判例の判断と異なることとなった場合、直ちに法の下の平等(憲法14粂1項)違皮や、罪刑法定主義(憲法31条)違反の問題が生ずるわけではないから、所論は、独自の見解であって、採用できない(もとより、同種事案における判断が裁判体ごとに異なる事態は望ましいことではないが、このような場合、上級審による見解の統一が図られ、又は多数裁判例の集積により自ずから一定の結論に収束していくこととなる。)。
論旨は理由がない。
なお、この事件の第1次第2審判決は、次号の刑事法ジャーナルで評釈される。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604163234.pdf
共同正犯の訴因から幇助への認定落ちの場合の訴因変更の要否。
被告人には不意打ちかもしれんが、
弁護人は奥村で幇助説なんだから幇助への訴因変更はいらんのじゃないか?
という争点。
裁判所の凡ミスで名古屋高裁・地裁の庁舎内を上下させられた記憶がある。その間に訴因も削られて、共謀共同正犯が幇助になってしまった。