児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

IDF会員大橋充直「著作権侵害や児童ポルノは半自動的に証拠隠滅?」 捜査研究 第765号P60

 痴漢の証拠は外国のクラウドにある。

(1) 設例事案
児童ポルノの盗撮犯人を現行犯逮捕して,逮捕現場で差し押さえたスマホに保存された画像データを検索しでも盗撮画像も動画もないので,犯人を調べたら「データクラウドに飛ばした(撮影と同時にデータクラウドに保存した)」と供述したので,令状でデータクラウドの保存データを差し押さえたら,自供と異なり,現行犯の盗撮動画(児童ポルノ)が煙のように消えて影も形もない。
筆者の知る限り,囲内刑事事件では論壇事例であるが(注13), 北欧や米国では実際にあったデジタル証拠の消滅?事案である(詳細割愛)。機器やシステムや無線通信経路に故障や障害や事故が全くないにもかかわらずである。これは何故か?
(2)「違法コンテンツの半自動削除
実は, 児童ポルノ(チャイルドポルノ/ブルーポルノ) や著作権に厳しい国では,法令や判例に従ったクラウド規約(約款・契約)で,ユーザの同意なくして,クラウド事業会社が,児童ポルノ・データや著作権侵害データを一方的に削除できるとしている国が少なくない。つまり,当該国の法令・判例・規約に基づいて,ユーザ不知の聞に,盗撮と否とを問わず,児童ポルノ著作権侵害データは,クラウド事業会社が半自動的に削除してしまうからである。
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(4) 補論
なお,読者の皆様のご賢察のとおり,クラウド事業会社が違法コンテンツを含むファイルを「削除」するといっても,原則として(注16),物理的に不可逆的に削除する「完全デリート」とするわけではなく,「非公開ディレクトリ(管理保存専用フォルダ)」に電子データ,つまり当該ファイルを移動するだけで,電子ファイルというデジタル証拠が物理的に消滅されるのではないから安心されたい。ただし,内外の新興の小規模事業会社の中には,保存管理の手間隙と管理用ディスク容量の増加を嫌い,法的意味合いの理解も不十分なため,違法コンテンツを含むファイルを完全デリー卜するところもあるので,留意しておこう。

(注13) 「子供の水浴び写真をクラウドに保存したら.いつの間にか消えていた。復元できるかどうか調べてください。」との依頼で.筆者の知人が調べて,オンライン・ストレージ・サービス事業会社の某社に連絡したところ.慇懃な英文で,「本社所在地国の法令に基づき,公開ブルーポルノの基準に合致したので,メールで削除すると通知済みだが.何か問題があったか?」との返事がきたことがある。2歳女児が自宅庭内のビニールプールの中でパンツ一丁で水浴び遊びをしている微笑ましい写メだったそうだが,共有機能付き(会員や友人に限定公rmlで保存したため,公開された児童ポルノと評価されてしまい,「削除(実質は閲覧制限)」に至った模様であった