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奈良県子どもを犯罪の被害から守る条例逐条解説
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
四 子どもポルノ写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次のいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
ア子どもを相手方とする又は子どもによる性交又は性交類似行為に係る子どもの姿態
イ他人が子どもの性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触る行為又は子どもが他人の性器等を触る行為に係る子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
ウ衣服の全部又は一部を着けない子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
(平一八条例一二・平一九条例二五・一部改正)
解説
4第4号は、この条例が規制する「子どもポルノ」の定義について規定している。
(1)「電子的方式」とは、半導体、例えばメモリ等に記録する方式で、同方式により記録される具体的なものとしては、USBメモリ、コンパクトフラッシュ等がある。
(2)「磁気的方式」とは、磁性体に記録する方式で、同方式により記録される具体的なものとしては、ハードディス夕、フロッピーディスク等がある。
(3)「電磁的記録・・・に係る記録媒体」とは、CD-ROM、DVD-ROM、フロッピーディス夕、コンビュータのハードディスク、携帯電話及びデジタルカメラのメモリ等、デジタル方式で記録される記録媒体をいう。
(4)「その他の物」とは、例えば、アナログ方式によるビデオテープをいう。
(5)「子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」とは、子どもの姿態を視覚により直接認識することができるものをいい、文字や音声による描写である小説や録音テープは「子どもポルノ」には該当しない。
また、子どもの姿態は、実在する子どもに係るものに限られ、絵画、アニメ、コミック等に描写された想像上の子どもに係るものは、「子どもポルノ」に該当しない。
なお、「実在する子ども」の「実在」とは、子どもの姿態が描写されるに際し、その時、その場所に居た(存在した)ことを意味し、現在の生死及び年齢は問うものではない。
(6)本号アにいう「子どもの姿態」とは、
?子どもを相手方とする性交に係るもの
?子どもを相手方とする性交類似行為に係るもの
?子どもによる性交に係るもの
?子どもによる性交煩似行為に係るもの
の4つの姿態をいう。
例えば、性器等が描写されておらず、又はその部分にぼかしが施されているものであっても、「子どもポルノ」に該当する。
なお、「性交類似行為」とは、実質的にみて性交と同一視し得る態様における性的な行為をいう。例えば、異性問の性交とその態様を同じくする状況下における又は性交を模して行われる手淫・口淫行為、同性愛行為が該当する。
(7)本号イにいう「子どもの姿態」とは、
?他人が子どもの性器等を触る行為に係るもの
?子どもが他人の性器等を触る行為に係るもの
の2つの姿態をいう。
また、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは、いたずらに(過度に)性欲を興奮させ又は刺激するものであることまでは要しないが、単に性的な興味を引く程度のものでなく、それを超えるものでなければならない。
(8)本号ウにいう「子どもの姿態」とは、全裸又は半裸の子どもに扇情的なポーズを取らせたような姿態をいう。
全裸又は半裸の子どもの身体の上に、社会通念上人が着用する衣服とは認められないような透明又は半透明の材質により作られた衣装等を着用している場合も、「全裸又は半裸」に当たる。・・・・・・・・
(子どもポルノの所持等の禁止)
第十三条何人も、正当な理由なく、子どもポルノを所持し、又は第二条第四号アからウまでのいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。解説
【趣旨】
本条は、子どもに対する性的な犯罪を助長する行為の禁止を規定したものである。
【解説】
113歳未満の者を使用して作製された「子どもポルノ」は、子どもに対する性的好奇心を刺激し、ひいては子どもに対する性的犯罪を引き起こさせるおそれがある「有害」、「危険」なものである。
また、「子どもポルノ」は、刑法第176条後段、同法第177条後段に規定される、性的同意が成立しない13歳未満の者に対する「強姦」又は「強制わいせつ」という性的犯罪行為等が記録されたものであり、これらを見たり、見る目的で所持等することは、その性的犯罪行為を容認し、支える行為である。
このように「子どもポルノ」の所持等は、子どもに対する性的犯罪を助長する行為であり、子どもに対する将来の性的犯罪の動機を抑制する観点からも有用であることから、これを規制することとしたものである。
「子どもポルノ」の所持等を禁止することは、その流通経路の末端である「需要者」を減少させることにつながり、需要者の減少は、「供給者」である製造、販売等の行為者を減少させ、ひいては「子どもポルノ」の撲滅につながるものと考えられる。
2本条における用語の意義は、次のとおりである。
(1)「正当な理由」とは、正当な業務行為であるなど、社会通念上、相当と認められる事由があることをいい、具体的には、
?警察官、検察官、検察事務官及び裁判官が職務のために所持する場合
?医師、性噌好異常の研究を行う者及び性晴好異常者のケアを行う者が業務行為のため所持する場合
等がこれに当たる。
なお、上記以外の行為についても、社会通念に従い、各事案ごとに行う個別具体的な判断により、正当な理由があると認められる場合がある。
(2)所持」とは、「子どもポルノ」の保管について事実上の支配を及ぼしている状態をいい、自己のために所持するのか、第三者のために所持するかは問題ではない。例えば、自宅において自己の所有するパソコン、携帯電話及びフロッピーディスク等の記録媒体
に、「子どもポルノ」を保存する行為はもとより、県内において「子どもポルノ」を、携帯又は携行する行為が該当し、自宅において保管する行為も「所持」に該当する。
(3)「第2条第4号アからウまでのいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管」とは、「子どもポルノ」を記録した電磁的記録を、県内に存する他人の記録媒体に保存して、自己の実力支配下に置くことをいい、例えば、県内に存する会社等自宅以外の場所の自己の所有物でないコンビュータに、「子どもポルノ」を記録した電磁的記録を保存する行為がこれに当たる。
3既存法令との関係
(1)児童ポルノ法との関係
第13条は、子どもに対する犯罪を未然に防止する目的のために、子どもに対する性的好奇心を刺激し、ひいては子どもに対する性的犯罪を引き起こさせるおそれがある有害・危険なものである「子どもポルノ」を所持等することを規制するものであり、一方、児童ポルノ法第7条(児童ポルノ提供等)第2項及び第5項は、児童に対する性的搾取及び性的虐待から保護(児童の権利を擁護)するために、有償・無償を問わず、児童ポルノの第三者への提供又は提供目的での所持及び製造等の行為を規制するものである。
このように、両者は、立法の目的、趣旨において異なるものであるが、「提供目的」のみで所持等しているような場合には、児童ポルノ法違反の罪のみが成立し、別途本条例違反の罪は成立しない。
「子どもポルノ」を、自己の性的好奇心を満たす目的で所持等する行為と提供目的で所持等する行為が競合するような場合には、本条例違反及び児童ポルノ法違反の両方の罪が成立することがあり得る。
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第四章 罰則
第十五条 第十二条又は第十三条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
2 第十三条の規定に違反して前項の罪を犯した者が、自首したときは、同項の刑を減軽し、又は免除する。
【趣旨]
本条は、本条例の禁止行為に関する罰則について規定したものである。
【解説】
l第I項は、第12条又は第13条の禁止行為の実効を確保するため、違反者に対し刑罰を科すこととしたものである。
法定刑を「30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」としたのは、本県の他条例及び関連法令における類似の禁止行為に対する罰則や、刑法における他人の身体に直接害を及ぼす罪に適用される罰則の程度などを参考として定めたものである。
2第2項は、第13条に違反して「子どもポルノ」を所持し、又は子どもポルノに係る電磁的記録を保管している者からの当該「子どもポルノ」等の自主的かつ積極的な捜査機関への提出を促して、それらの回収等を図ることにより、「子どもポルノ」の撲滅を目指し、もって子どもに対する性的犯罪を抑止するため、自首した場合においては、必要的に刑を減免する旨を定めたものである。
なお、本項の規定により必要的な刑の減免が受けられるのは、第13条の規定の違反に係る第15条第1項の罪のみであり、例えば、「子どもポルノ」たる児童ポルノを所持していた場合における児童ポルノ法違反の罪については本項の適用はなく、刑法第42条第1項の規定によることとなる。