児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

三重県青少年健全育成条例違反につき真剣交際の主張が退けられた事例(名古屋高裁H23.7.5)

 被害児童が14歳処女であること、素性を明かさなかったこと、知り合ってすぐ性行為したこと、がマイナス要因ということです。

名古屋高裁H23.7.5
事件名 強姦、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律違反、三重県青少年健全育成条例違反被告控訴事件
所論は,B(以下「B」という。)に対するいん行の事実(判示第1の1)に関し,被告人は,Bとは真摯な交際の中で性交に至ったものであるから,その性交は「単に自己の性欲を満足させるための対象として行う性交」ではなく「いん行」に該当しない,と主張する(控訴趣意書における控訴理由7の1)。
 しかしながら,(1)本件犯行当時,被告人が30歳であったのに対し,Bは14歳の中学2年生で,未だ初潮を迎えておらず,性交の経験もなかったこと,(2)被告人は,Bと知り合って交際を解消するまでに5回会っているが,その間,年齢を19歳,職業を美容師関係,鈴鹿市在住などと偽り,自己の名のみ教え,実際の年齢,職業,住所及び姓を明らかにしなかったこと,(3)被告人は,平成21年9月19日,携帯電話のサイトを通じて知り合った中学2年生の女子児童と会った際に,同女に同行していたBと知り合い,その日のうちに,駐車中の自動車内において,Bの乳房や性器を触るなどし,その後,電話やメールで交際を申し込み,いったんは拒まれたものの,最終的には交際や性交に及ぶことについても承諾を得たが,その際,Bに対し,処女であるか否かや初潮の有無について確認していたこと,同月21日,被告人は,Bと性交する目的で同女と会い,駐車中の自動車内で性交し,その際,同女の性器や性交の姿態等を写真撮影し,さらに,同女と別れた後,自分のノートに同日が「処女取れた日」である旨記載したこと,同月22日,被告人の友人らを交えて4人で会ったときには,被告人はBと性的行為に及ばなかったが,同月23日にBと性交する目的で同女と2人きりで会い,駐車中の自動車内でBと性交し,あらかじめ用意していた性的玩具を用いたり,Bの性器や性交中の姿態等を写真撮影したこと,さらに,本件各犯行後の同年10月4日,最後にBと会ったときにも被告人は性交に及んでいることなど,関係証拠(前記のとおり被告人の検察官調書(乙4,8)は除く。)により認められる各犯行に至る経緯や犯行状況等に照らせば,本件各犯行の際に被告人が射精に至っていないことなど所論がるる主張する点を踏まえても,被告人がBと真摯な交際をしたとは到底認められず,その性交は「単に自己の性欲を満足させるための対象として行う性交」すなわち「いん行」に該当するというほかない。所論は理由がない(なお,所論は,Bに対する児童ポルノ製造の事実(判示第1の2)に関し,被告人は,Bとの真摯な交際の中で性交をし,その記念として撮影をしたのであるから,違法性が阻却される,ともいうが(同控訴理由7の2),前記のとおり,被告人がBと真摯な交際をしたとは認められず,違法性が阻却されるような状況にはなかったというほかないから,所論は前提を欠く。)。
 所論は,A(以下「A」という。)に対する児童ポルノ製造の事実(判示第3の2)に関し,被告人は,Aと真摯な交際の中で同女との性交等の写真を撮影したものであるから,違法性が阻却される,と主張する(同控訴理由9の2)。
 しかしながら,本件犯行当時,被告人(当時30歳)は,Aが小学校を卒業したばかりの12歳で,性交も未経験であったにもかかわらず,携帯電話のサイトで知り合った面識のないAに対し交際を申し込み,自己の年齢や職業,名前を偽り,Aが処女であることを確認した上,性交を求めるとともに,Aが小学生時に使用していた下着を着けて陰毛を全て剃ってくるよう求めるなどし,Aと初めて会ったその日に性交し,その姿態等を撮影するに至った上,その2日後,Aが被告人と交際していることを知ったAの母親から,電話でAとの関係を問いただされた際,一切返答せずに電話を切り,その直後に携帯電話の契約を解除しており,Aと直接会ったのは結局本件犯行時の1度だけであったことなど,関係証拠により認められる犯行に至る経緯や犯行状況等に照らせば,Aが性交及びその姿態の写真撮影を承諾していたことなど所論がるる主張する点を踏まえても,被告人がAと真摯な交際をしたとは到底いえず,児童ポルノ製造につき違法性が阻却されるような状況になかったことは明らかであり,所論は理由がない。
 所論は,C(以下「C」という。)に対するいん行及び児童ポルノ製造の各事実(判示第2の1,2)に関し,Cは健全な育成の余地がない青少年あるいは児童であったから,法益侵害がなく可罰的違法性を欠き無罪である,というが(同控訴理由8の1,2),独自の見解に基づくものであって,到底当裁判所の採用するところではない。