児童が1項提供罪の正犯なら、送らせた方は共犯で起訴されてるんでしょうか?
送った方が1項提供罪で、送らせた方が3項製造罪だと矛盾します。
これ難しい問題なので、児童の付添人(弁護人)も考えて欲しいものです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090924-00000510-san-soci
カメラ付き携帯電話で自分の下半身を露出した画像を撮影し、出会い系サイトで知り合った男にメールで送信したとして、神奈川県警少年捜査課と大船署は、児童買春・ポルノ禁止法違反(単純提供)容疑で、千葉県の高校3年の17〜18歳の女子生徒3人を24日に書類送検することが、県警への取材で分かった。
県警によると、女子高生らは通常、脅されたりして裸の画像の送信をさせられる被害者の場合が多いことから、同容疑での摘発は珍しいという。今回は現金目的だったことなど悪質性が高いほか少女らが絡む買春事件などが、出会い系サイトへの少女側からの書き込みなどが発端になることが目立っているため、県警は少女らに警鐘を鳴らすためにも摘発の方針を固めた。
人から画像を受信したとして愛知県被告(22)=同様の別事件で起訴=についても調べを進めているが、別の女子中学生に送らせた裸の画像を香川県の男性に送信、提供したとして同容疑で24日、追送検する。
県警の調べによると、女子高生3人は7月11、12日、女子高生1人の自宅で、下半身を露出するなどした画像2枚を被告の携帯電話に送信した疑いが持たれている。女子高生らは幼なじみで、「夏休み前でお金がほしかった。楽しててっとり早く稼げると思った」と供述しているという。
神奈川新聞によると、児童から被告人に送信した行為を1項提供罪としているようですが、その点は、被告人の3項製造罪の実行行為として評価しているので、二重評価になります。
児童の1項提供罪正犯が立つのなら児童の2項製造罪正犯も立つはずで、被告人は3項製造罪ではなく、両罪の教唆犯になるはず。児童の1項提供罪・2項製造罪が立たなければ被告人は3項製造罪になりうる。という関係なので、矛盾するわけです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090924-00000029-kana-l14
送検容疑は共謀して7月11日ごろ、生徒の自宅で、カメラ付き携帯電話で撮影した17歳の生徒の児童ポルノ画像を、サイトで知り合った愛知県刈谷市のアルバイト男(22)=同法違反罪で起訴=のパソコンに送信した、としている。
県警によると、掲示板サイトの「写メ売ってもらえますか。1人10万円出せます」という男の書き込みを生徒1人が見て、ほかの2人を誘ったという。3人は同じ中学の同級生で、3人とも容疑を認め、「夏休み前で遊ぶ金が欲しかった。軽い気持ちでやった」などと話している。
捜査関係者によると、3人には補導歴や問題行動などはなく、取り調べには淡々とした様子で応じているという。ある捜査幹部は「書類送検で、初めて事の重大さに気付いたようだ。顔の見えないネット上のやりとりのせいか、罪の意識は希薄な印象だ」と話している。
被害児童を処罰するというのは「画期的」。「保護」も兼ねてると言うんでしょうが。被害者を被疑者扱いしちゃうと、これから取調に来ないですよ。
被告人の方は、3項製造罪の単独犯構成になってると思うんですが、児童を正犯にするなら、共犯の構成にしないと、二重評価になって、変な同時犯になります。
確かに、立法者は1項提供罪について児童も正犯になりうると説明しているのですが、最高裁はこの法律については立法者意思に遠慮してませんので、あまり頼りにできません。
この点(児童を処罰する点)については、選挙前に森山・野田先生にお尋ね申し上げているのですが、お返事がありません。
島戸さんは裁判官なので、聞きにくいですね。郡山支部の事件で聞いて欲しいところです。
島戸純(局付検事)「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
(3)第1項の罪
ア 前 段
前記のとおり、改正法では、児童ポルノを他人に提供する行為について、その相手が特定の者であるか不特定の者であるかや、多数の者であるか少数の者であるかを問わず処罰することとし、不特定又は多数の者に対する提供行為については、行為が悪質であり、結果が重大であることから、その法定刑を加重するものである。
本項は、その基本的な処罰の類型として設けるものであり、旧法では処罰の対象とならない特定かつ少数の者に対する譲渡行為、反復継続の意思によらない貸与行為について、本項により処罰されることになる。児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがない(15。森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P190
Q42 18歳未満の児童が、交際相手に対し、自分の裸体の写真や、その交際相手との性交等の写真を渡した場合にも第7条第1項の罪は成立するのですか。
他人に児童ポルノを提供する行為については、第7条第1項の罪が成立し、これは児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがありません。
もっとも、第7条第1項の罪が保護しようとする対象は、主として描写される児童の尊厳にあると考えられますから、当該児童ポルノにおいて描写される児童がその交際相手に対して提供したり、交際相手が当該被描写児童に対して提供する場合のように、提供者、被提供者と描写される児童との関係や被描写児童の承諾の経緯、理由等を考察し、当該提供行為について真摯に承諾し、かつその承諾が社会的に見て相当と認められる場合には、違法性が認められない場合もありうると考えられます。
去年の神戸地裁も迷って、児童正犯説ではなく、3項製造罪のみ説を採りました。
神戸地裁H20
(弁護人の主張に対する判断)
l 弁護人は,各犯行について,検察官が主張する事実関係を前提としても,被害児童が児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「法」という。) 7条1項の提供罪及び同条2項の製造罪の正犯であり,被告人はその教唆犯であるから,同条3項の製造罪は成立しない旨主張する。
2 そこで検討すると,関係証拠によれば,前記各犯行の事実関係は次のようなものである。
すなわち,被告人は,インターネットのメールやチャットを通じて知り合った被害児童らに対し,指示し,あるいは命じて,その性器等を露出させるなどの姿態をとらせ,これを被害児童らのデジタルカメラ等により撮影させた上,その動画をインターネットを通じて被告人方のパーソナルコンピューターに送信させて,同コンピューターのハードディスク装置に記録したり,その静止画を被告人あて電子メールの添付ファイルとして送信させて,被告人が使用するフロバイダー会社のサーバーコンピューターに受信,記録した。
3 確かに,形式的に見れば,前記事実関係のうち,被害児童ら自身が自らの姿態をデジタルカメラ等で撮影し,その画像をインターネットを通じて被告人にあてて送信した点は,法7条1項の児童ポルノ提供罪ないし同条2項の児童ポルノ製造罪に,被告人が被害児童らに指示・命令してかかる行為を実行する決意を生じさせた点は,それらの教唆犯に当たるものといえなくもない。
しかし,当該犯行における児童ポルノの製造行為は,インターネットを通じて上記画像が送信された後,被告人が使用する自宅のパーソナルコンピューターのハードディスク装置に記録された時点,あるいは,被告人が使用するプロバイダー会社のサーバーコンピューターに受信,記録された時点で完成すると考えられるところ,かかる記録がなされるのは,被告人が被害児童らに対して上記画像を送信するように指示し,被害児童らがそれに従って送信した結果であるから,製造行為の最終局面である記録は,被告人の行為により完成したと評価できるというべきである。
そして,製造行為の最終局面であり,被害児童の人格の侵害及び画像等が流通する危険という児童ポルノ製造罪の当罰性が実現する局面である記録が被告人の行為によって完成したと評価でき,かつ,その前提となる性器等を露出してデジタルカメラ等で撮影し,その画像をインターネットを通じて送信する行為を被害児童らが行ったのも被告人が被害児童らに働きかけた結果である以上,これらは全体として被告人が行った児童ポルノの製造行為に当たるものと解するのが相当である。
したがって,被告人は,各犯行について,法7条3項の児童ポルノ製造罪の成立を免れない。
年内くらいに、大阪高裁が「児童は無罪」という理屈を判示すると思うので、それを待ちましょう。
おまけ
この読売の記事に引用されているサイトには1項提供罪も3項製造罪も存在しないので、児童も被告人も無罪になる。
下半身画像をメール送信、女子高生3人書類送検
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20090924-567-OYT1T00425.html?fr=rk
「法務省の陰謀だ!」と言ってみたことがあるが、法の不知は害するということで有罪でした。
追記
こういう事情だと、騙されて送らされたんだから、普通は立件しない。
http://www.sanspo.com/shakai/news/090925/sha0909250507010-n2.htm
女子高生送検“顔出しハダカ画像売ります” (1/2ページ)
2009.9.25 05:06
神奈川県警の調べによると、女子高生3人は7月11日と12日、女子高生1人の自宅で、下半身を露出するなどした画像2枚をカメラ付き携帯電話で撮影し送信した疑いが持たれている。
女子高生らは幼なじみで、「夏休み前でお金がほしい。楽して、手っ取り早く稼げる」と考え、携帯電話の出会い系サイトの掲示板に「下着を売ります」などと書き込んだ。
それに食いついてきたのが被告(22)=同様の別事件で起訴。「写真売ってもらえませんか? 1人10万円払います」などと連絡してきた。女子高生らは下半身を露出した画像など約100枚を被告に送信。顔も写っていたそうだが、そのうちの2枚が児童ポルノにあたるという。
ところが、待てど暮らせどお金は送られてこない。そこで女子高生らは仰天の行動に出た。「興信所や交番に相談に行った」(捜査関係者)というのだ。だが、興信所では「わいせつ画像を送るのは犯罪行為。犯罪行為には手を貸せない」とすげなく断られ、交番でも「そんなコトしたらダメだ」と詳しく話を聞かれそうになった。
その場から、あわてて逃げるようにして帰ったため、事件は表面化しなかったものの、結局別の事件で被告を調べるうちにわいせつ画像が出てきたという。