児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「セクスティング」した10代少女、児童ポルノ法違反と検察が主張

 日本の児童ポルノ法の解釈として、奥村は児童が製造・提供の正犯で。送らせた方は共犯だと思うんですが、日本の裁判所は罪にならないんというんですよ(神戸地裁・大阪高裁・豊中簡裁)。
 この判例を教えてあげなくっちゃ。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/18/news061.html
「セクスティング」した10代少女、児童ポルノ法違反と検察が主張
性的な写メを送る「セクスティング」をした女子中学生を、米地方検察局が児童ポルノ法違反で起訴しようとしている。(ロイター)
2010年01月18日 12時53分 更新
 携帯電話で自分のトップレス写真をクラスメートに送信した女子中学生を、児童ポルノ法違反で起訴すべきだとペンシルベニア州検察局が1月15日、米連邦控訴裁で申し立てた。
 これに対して米国自由人権協会(ACLU)は、この件は「通常、未成年との露骨な性的行為を描き、営利目的で利用される」という児童ポルノの定義には当たらないと反論している。この訴訟は、携帯電話で性的な写真を送る「セクスティング」の法的な位置づけを問う米国初の裁判となっている。

この主張は気付きませんでした。次の事件で言いましょ。

連邦地裁は2009年3月に、これら10代の少女が携帯電話やインターネットで自身の性的な写真を友人に送った行為を、「米国憲法で保証された言論の自由」とする判決を下している。今回の裁判では、この地裁判決を米控訴裁の3人の判事が審理する。

阪高裁H21.12.3
 論旨は,本件については,①県青少年健全育成条例23条2項の「わいせつな行為を教える」,又は同条1項の「わいせつな行為をし」に該当する条例違反の罪が成立するにすぎないのに,法7条3項の児童ポルノ製造罪の成立を認め,②(ア)被告人に,被害児童が正犯である法7条1項(提供罪)及び同条2項(提供目的製造罪)の教唆犯が成立し,同条3項の児童ポルノ製造罪に該当しないのに,同罪の正犯とし,(イ)仮に(ア)が認められないとしても,被害児童と被告人とは同条3項の児童ポルノ製造罪の共同正犯であるのに,被告人の単独犯とし,さらに,(ウ)被害児童の正犯性が否定されるとしても,被告人は教唆犯であるから共犯の従属性により不処罰であるのに,被告人を処罰した原判決には判決に影響することが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,①については,関係証拠によれば,原判示の犯罪事実を優に認めることができるから,本件について法7条3項の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである。
②については,同条各項の規定は,平成16年法律第106号による改正前の法に規定がなかったものであるが,旧法施行後の状況等にかんがみ,児童の権利の擁護を一層促進するため新たに犯罪化され,処罰の範囲が拡大されたものであるところ,対象となる行為は,いずれも法2条3項各号に掲げる児童の姿態を描写した児童ポルノを前提とするもので,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取・性的虐待行為にほかならず,しかも,不特定多数の者に対する提供(法7条4項)及びその目的での製造等(同条5項)の罪ではもとよりその流通が予定され,特定少数の者に対する提供(同条1項)及びその目的での製造等(同条2項)の罪では流通の危険性が大きく,他人に提供する目的を伴わない製造罪(同条3項)にあっては描写された児童の人権を直接侵害する行為であり,流通性は小さいものの,その危険性を創出するものであるから,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するごとになるため,児童を性的搾取・性的虐待の被害から擁護することを意図して上記各行為を処罰するものとしたのであって,当該児童は,原則的に,その被害者と位置付けられているというべきである。
そうすると,被告人が,携帯電話のサイトで知り合った被害児童に対し,携帯電話のメールで,被害児童のポルノ画像を買い取る旨執ように働き掛けた上,指示して姿態をとらせた被害児童のポルノ画像を撮影・送信させて,自己の記録媒体に保存させたという本件について,(ア)の点は,被害児童が児童ポルノの提供(同条1項)及びその目的での製造(同条2項)の罪の正犯で,被告人はその教唆犯にすぎないとする点で,(イ)の点は,被害児童と被告人が他人に提供する目的を伴わない児童ポルノ製造罪(同条3項)の共同正犯であるとする点で、(ウ)の点は,被告人が教唆犯にすぎないという点で,いずれも誤っており,所論はいずれも採用することができない独自の見解というほかない。
 その他,所論が主張するところを検討しても,原判決には所論が指摘するような法令適用の誤りがあるとはいえない。
 論旨は理由がない。

神戸地裁H20.11.5
(弁護人の主張に対する判断)
l 弁護人は,判示第2,第3の1,2の各犯行について,検察官が主張する事実関係を前提としても,被害児童が児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「法」という。) 7条1項の提供罪及び同条2項の製造罪の正犯であり,被告人はその教唆犯であるから,同条3項の製造罪は成立しない旨主張する。
2 そこで検討すると,関係証拠によれば,前記各犯行の事実関係は次のようなものである。
 すなわち,被告人は,インターネットのチャットを通じて知り合った被害児童らに対し,チャットを通じて指示し,あるいは命じて,その性器等を露出させるなどの姿態をとらせ,これを被害児童らのウェブカメラ等により撮影させた上,その動画をインターネットを通じて被告人方のパーソナルコンピューターに送信させて,同コンピューターのハードディスク装置に記録したり,その静止画を被告人あて電子メールの添付ファイルとして送信させて,被告人が使用するフロバイダー会社のサーバーコンピューターに受信,記録した。
3 確かに,形式的に見れば,前記事実関係のうち,被害児童ら自身が自らの姿態をウェブカメラ等で撮影し,その画像をインターネットを通じて被告人にあてて送信した点は,法7条1項の児童ポルノ提供罪ないし同条2項の児童ポルノ製造罪に,被告人が被害児童らに指示・命令してかかる行為を実行する決意を生じさせた点は,それらの教唆犯に当たるものといえなくもない。
しかし,当該犯行における児童ポルノの製造行為は,インターネットを通じて上記画像が送信された後,被告人が使用する自宅のパーソナルコンピューターのハードディスク装置に記録された時点,あるいは,被告人が使用するプロバイダー会社のサーバーコンピューターに受信,記録された時点で完成すると考えられるところ,かかる記録がなされるのは,被告人が被害児童らに対して上記画像を送信するように指示し,被害児童らがそれに従って送信した結果であるから,製造行為の最終局面である記録は,被告人の行為により完成したと評価できるというべきである。
そして,製造行為の最終局面であり,被害児童の人格の侵害及び画像等が流通する危険という児童ポルノ製造罪の当罰性が実現する局面である記録が被告人の行為によって完成したと評価でき,かつ,その前提となる性器等を露出してウェブカメラ等で撮影し,その画像をインターネットを通じて送信する行為を被害児童らが行ったのも被告人が被害児童らに働きかけた結果である以上,これらは全体として被告人が行った児童ポルノの製造行為に当たるものと解するのが相当である。
 したがって,被告人は,判示第2,第3の1,2の各犯行について,法7条3項の児童ポルノ製造罪の成立を免れない。