児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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 こういう事案です。

(犯罪事実)
被告人は,A子(平成12年2月26日生,当時10年)が18歳に満たない児童であることを知りながら,別表記載のとおり,平成21年2月10日午後10時17分ころから同月11日午前11時17分ころまでの間,鹿児島県の同児童方において,同児童にその乳房,陰部等を露出させる同表画像内容欄記載の姿態をとらせ,これを同児童の携帯電話機付属のカメラにより静止画として撮影させた上,その静止画像10枚を同児童の携帯電話機から被告人の携帯電話機に電子メールの添付ファイルとして送信させ,そのころ大阪市内においてこれを受信して,同年2月11日,大阪市内において,同静止画像10枚を被告人の携帯電話機本体に装着された電磁的記録に係る記録媒体であるミニSDカードに保存し,もって衣服の全部を着けない同児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものである静止画像10枚を電磁的記録に係る記録媒体に視覚により認識することができる方法によって描写し,同児童に係る児童ポルノを製造したものである。

 いろいろ検討したのですが、今日はここまで考えた。児童に何ら犯罪が成立しないという結論はありえないという結論です。

1 共犯ないしは間接正犯による事件であること
 一審判決が認定するように、本件の製造行為は、被告人と児童との共同作業によって行われたことは間違いがない。
 児童と被告人の分担は次の通りである。

 児童と被告人の分担は次の通りである。

(1)実行行為説による分類
 ? 犯人が児童に対して所定の姿態をとらせること・・・担当者:被告人
 ? ?に基づき児童が所定の姿態をとること・・・担当者:児童
 ? 撮影・記録・・・2条3項本文の媒体に記録された状態となること 撮影・・担当者:児童
  児童の携帯電話機への記録  担当者:児童
  送信=受信サーバへの記録  担当者:児童
  被告人の携帯電話への記録  担当者:被告人

(2)非実行行為説による分類
(身分)
   ? 犯人が児童に対して所定の姿態をとらせること・・・ 被告人
   ? ?に基づき児童が所定の姿態をとること・・・児童

(実行行為)
   ? 撮影・記録・・・2条3項本文の媒体に記録された状態となること 撮影・・・担当者:児童
  児童の携帯電話機への記録  担当者:児童
  送信=受信サーバへの記録  担当者:児童
  被告人の携帯電話への記録  担当者:被告人

 3項製造罪にせよ、2項製造罪+1項提供罪にせよ、児童の行為がなければ犯罪を実現することができないことは確かである。

2 正犯は誰か?
 撮影行為を行っているのは児童であるから、まず、児童の正犯性が問題になる。
 罰条としては、「姿態をとらせ」はなく、かつ提供目的があるから、「2項製造罪+1項提供罪」である。

 ここで児童の正犯性が肯定されれば、被告人は共犯(教唆・共同正犯)になる。
 
 ここで、児童の正犯性が否定されれば、被告人の正犯性が問題になり、児童は共犯としての責任が問題になる。
 
3 被告人による間接正犯か?
 被害者の行為が介入しているパターンであるが、被害者に自由意思が残っていれば、道具性が否定されるから、間接正犯とならない。
児童を正犯とすることができれば、児童が正犯、被告人は共犯となるが、
児童を正犯として処罰できなければ、共犯従属性により、児童も被告人も不処罰となる。

 他方、児童以外の者に限定される真正身分犯だとすれば、非身分者の行為を利用する間接正犯となりうる(故意ある幇助的道具)。
 この場合の罪責については、

障ネ説 被告人(利用者)は間接正犯、被害児童(被利用者)は幇助
障ノ説 被告人(利用者)は教唆、被害児童(被利用者)は幇助
障ハ説 両者の共同正犯

の諸説があるが、いずれも児童が処罰されることになる。

ということで、
 児童が処罰されないとすると、利用者も処罰できません。
 利用者を処罰しようとすると、児童も処罰されます。

 児童ポルノだからといって刑法総論を曲げてはいけません。