かねてからPDFにしてOCR掛けていた「判例コンメンタール刑訴法第6巻」を「併合罪」で検索していて見つけました。
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反被告事件
最高裁判所第3小法廷判決昭和53年7月7日
最高裁判所刑事判例集32巻5号1011頁
最高裁判所裁判集刑事211号625頁
裁判所時報746号1頁
判例タイムズ371号73頁
判例時報904号126頁
警察研究54巻6号37頁
別冊ジュリスト82号192頁
法曹時報32巻9号153頁
法律時報51巻1号178頁
ところで、 法五条一項は、金銭の貸付を行う者が所定の割合を超える利息の契約をし又はこれを超える利息を受領する行為を処罰する規定であるところ、その立法趣旨はいわゆる高金利を取り締まつて健全な金融秩序の保持に資することにあり、業として行うことが要件とされていないなど右罰則がその性質上同種行為の無制約的な反覆累行を予定しているとは考えられない。したがつて、法五条一項違反の罪が反覆累行された場合には、特段の事情のない限り、個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し、併合罪として処断すべきである。
原判決は本件各所為がいわゆる営業行為としてされたことを理由に包括して一罪と評価すべきものとしているのであるが、同項違反の罪におけるように営業行為として反覆累行されること自体が行為の悪質性を著しく増大させるものである場合には、営業行為としてされたことをもつて包括的な評価をすべき事由とするのは相当でないと解される。記録を調べても、本件各所為を一罪と評価すべき特段の事情は認められない。
このように、本件各所為については個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し、それらを併合罪として処断すべきであるとすると、右各所為は三年以下の懲役又は三〇万円以下の罰金にあたる罪であるから、その公訴時効は各犯罪行為の終わつた日から三年の期間を経過することにより完成するものである。そして、記録によると、検察官の前示控訴趣意で主張されているとおり、検察官指摘の各所為については公訴時効が完成していると認められる。 そうすると、原判決が本件各所為を包括して一罪と認めたのは違法であり、その結果、本件公訴事実につき公訴時効が完成しているか否かを審査することなく、公訴時効が完成している訴因についても実体上の審理を遂げ、その一部を有罪その余を無罪としたことも違法であつて、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
著名事件なので、趣意書も公刊されています。
最高裁判所刑事判例集32巻5号1011頁
最高裁判所判例解説でも、このような場合には不利益主張とはならないと解説されている。
最高裁判所判例解説
刑事篇 昭和53年度 289頁
最高裁判所第3小法廷判決
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反被告事件
昭和53年7月7日
佐藤文哉
第二に、原審が一罪と認定し、被告人のみの上告にかかる本件において、原判決が包括一罪としたのは誤りであると主張することに利益があるかの問題がある。しかし、上告趣意は時効完成を主張する前提問題として原判決が包括一罪としたのは誤りであると主張しており、かつ、もし併合罪の関係にある数罪ということになれば事実の一部について時効が完成していることになって被告人に利益な面もあるから、本件においては、この問題を肯定してよいと思われる。
破棄させて法定通算を稼ごうというちまちましたのではなく、一部が公訴時効になるとか、訴因変更が違法だとか、訴因不特定になるとか、管轄違になるとかいう重大な瑕疵で、大幅な減軽になるときは、肯定してよいと思われる。