児童買春周旋罪は、暴力的組織が絡むので、奥村弁護士の守備範囲外。しかし、条文がおかしいことはわかる。
5条1項が単純周旋、2項が業として周旋罪。
第5条(児童買春周旋)
1 児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
立法趣旨としては、2項は1項の加重類型だという。
森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P85
(3)児童買春周旋の罪の法定刑は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科となっています。
1999年の制定時は、3年以下の懲役又は300万l甘以下の罰金としていましたが、児童買春に係る事件の増加は、児童買春周旋による影響も強いこと、児童買春周旋の行為は、営利を目的としていることも多く、自由刑のみならず、財産刑を重ねて科す必要がある事案も少なくないことから、2004年に懲役刑及び罰金例の上限を引き上げるとともに、これらの併科を可能にしたものです。
(中略)
(4)第2項は、児童買春の周旋を業とした者に対して刑を加重する規定です。
「児童買春の周旋をすることを業とした」とは反復継続して行う意思をもって児童買春の周旋を行うことをいいます。営業の形態で児童買春の周旋を行う必要はないと考えています。
(5)業として行う児童買春周旋の罪の法定刑は、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金となっています。
児童買春の周旋を業として行うことは、児童買春を助長・拡大する行為を反復継続して行うことであり、非常に悪質な行為なので、懲役刑と罰金刑を併科することとしています。
ところで、裁判例をみていると、5条1項の周旋罪は1回の周旋ごとに1罪成立し、併合罪(〜7.5年)。
他方5条2項の周旋罪は周旋回数や被害児童数にかかわらず(包括して)一罪(〜7年)。
東京高等裁判所判決平成13年12月28日
第三 自判
そこで、刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書により、当裁判所において、更に次のとおり判決する。
原判決が認定した罪となるべき事実に法令を適用すると、原判示各児童に淫行をさせた点は、D子(原判示一)、C子(同二ないし四を包括して)及びB子(同四)の各児童ごとにいずれも児童福祉法六〇条一項、三四条一項六号(同一につき更に同法六〇条三項)に、原判示児童買春の周旋をすることを業とした点は、児童買春等処罰法五条二項(原判示一につき更に同法九条)にそれぞれ該当するところ、各児童に淫行をさせた点と児童買春の周旋をすることを業とした点は、それぞれ一個の行為が二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により結局以上を一罪として刑及び犯情の最も重いC子に対する児童福祉法違反罪の懲役刑及び児童買春等処罰法違反罪の罰金刑で処断することとし、
2回以上周旋した場合の処断刑期の上限をみると、罪数処理の結果、業として周旋罪の方が軽くなっている。
「業として・・・罪」の法定刑は「業としない・・・罪」が併合罪加重された場合よりも重くしないと意味がない。
探してみると、かなり差がある。
例
無限連鎖講の防止に関する法律
第6条
業として無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第7条
無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、二十万円以下の罰金に処する。
例
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律
第5条(業として行う不法輸入等)
次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第八条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は五年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。
一 麻薬及び向精神薬取締法第六十四条、第六十四条の二(所持に係る部分を除く。)、第六十五条、第六十六条(所持に係る部分を除く。)、第六十六条の三又は第六十六条の四(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。
二 大麻取締法第二十四条又は第二十四条の二(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。
三 あへん法第五十一条又は第五十二条(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。
四 覚せい剤取締法第四十一条又は第四十一条の二(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。
麻薬及び向精神薬取締法
第64条
ジアセチルモルヒネ等を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者は、一年以上の有期懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第64条の2
ジアセチルモルヒネ等を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、交付し、又は所持した者は、十年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。
実は、改正前は3年と5年でバランスとれていた。単純周旋罪は併合罪加重されても4.5年で業とする周旋罪に届かなかった。
改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
http://www.moj.go.jp/KEIJI/h01.html
(児童買春周旋)
第五条
1 児童買春の周旋をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。
ところが、最近の改正で
- 業としない周旋 3年→5年
- 業とする周旋 5年→7年
としたので、数回の周旋が行われた(併合罪加重された)場合に、業とする周旋の方が軽くなった。
これは罪数処理(併合罪加重)を知らない人が立法したことによる立法ミス。
これを解消するには、業とする周旋の法定刑を8年以上にするか、複数回の業とする周旋罪を併合罪とするしかない。