児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

裁判所事件番号での刑事確定訴訟記録法による閲覧の可否

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050107/1105774631
でも書きましたが、支部や小規模庁では事件番号のみで被告人氏名なしでも閲覧可能であることがある。

 そんな場合でも、閲覧の現場では、検察事務官から
   被告人名を教えますから、申請書に被告人名を補充して下さい
と言われます。

 おいおい、罪数とか量刑調べるのに被告人名はいらないんだって。

閲覧(謄写)を求める範囲
 別紙記載の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について、起訴状(訴因変更請求)・冒頭陳述・論告・判決書(控訴されていれば控訴審判決書も)
 
 但し、閲覧(謄写)の目的からして、必ずしも、被告人氏名・住所、被害者氏名(年齢は量刑に影響があるから欠かせない)等、被告人・被害者の個人情報は必要ない。
 児童ポルノ罪の罪数については高裁判決(一罪説・併合罪説)が分かれており、訴因変更の可否(公訴事実の同一性)も重要な争点であるから、訴因変更があった事件については、変更前の起訴状も欠かせない。
 被害者数は量刑と罪数に関係するから、複数の被害者がいる場合には、ABCで区別して頂きたい。)、犯行場所の詳細は必要ないから、適宜仮名処理していただきたい。
 児童ポルノ・児童買春罪においては、欺罔・脅迫・偽造通貨行使・常習性などの附随的事情が量刑に影響するから、冒頭陳述・論告の附随的事情に言及した部分は欠かせない。

事件特定について
事件番号と判決日で特定充分であると考えている。実際にこれで開示してくださる保管検察官も多い。判例雑誌でも事件番号と判決日で特定されることが通例である。
「記録事務規程」(昭和62年12月14日法務省刑総訓第1018号大臣訓令)第2条(様式第1号)によれば保管記録保管簿には、
  保管番号
  裁判年月日
  罪名
  氏名
 刑期・罪名等
が記載されており、この何れかを用いて、保管記録を特定すれば足りる。
すでに罪名は限定しており、裁判年月日も最高裁等からの情報で明らかになっており、閲覧目的からして、仮に同じ裁判年月日に同一罪名の裁判がある場合には全ての事件の閲覧を求めるから、保管記録の特定は充分である。
 もとより刑事事件の確定記録は学術研究目的にも閲覧させることが予定されている。制定当時の国会答弁でもそのように説明されている。

108国会 - 衆 - 法務委員会 - 5号
昭和62年05月26日
○安藤委員 そうしますと、これは法務省が保管、保存をしておられるのですが、どういう事件、何と何の事件が保存されているのか明らかにできないとおっしゃると、あの事件が見たいなと思ってもあるのかないのかわからぬということになるでしょう。せっかく閲覧をさせる、今度は九条の二項でちゃんとこうなるわけですから、これとこれとこれはありますよということでないと、これを見たいのですというふうに言えないのじゃないかと思うのですが、その点どう考えてみえますか。
○岡村政府委員 これは、学術研究などのため閲覧が必要であるということで閲覧の申し出をされました方がありました場合には、その方にはどういう種類の記録であるかというようなお話を伺いまして、それなりの便宜は図るつもりでございます。
○安藤委員 そうしますと、閲覧希望者が具体的に件名を申し上げて、こういう事件の記録を見たいのですということでお邪魔したときに、実はそれはないのですということで門前払いですね。それでは四つか五つ持っていったら、そのうちの二つはあります、こういうことになって非常に手間がかかるわけなんですが、大体見当をつけて、これはあるだろうといって当たった、やはりあったということではどうも心もとないのですけれども、例えば私が法務省へ行って、今保存しておられるリストをちょっといただけぬか、あるいは見せてもらえぬかというふうにお願いした場合はどうなるのですか、応じてもらえそうですか。
○岡村政府委員 リスト全体をもらいたいという御要望には応じかねるものでございます。ただ、具体的にこういう関係の事件が残っておるのかというふうにある程度範囲を特定していただければ、学術研究のため必要があるような場合には、その方に対しましてはこちらも誠意を持って対応いたすつもりでございます。

 学術研究のためには、例えば、「××罪の判決書」「○○罪の実刑判決」という程度の限定で記録を閲覧して比較検討することも必要となるから、罪名でだけでも特定充分である。

 そもそも、事件番号・判決日は保管記録には必ず記載されている情報であって、保管検察官が知っている情報である。これで捜せないはずがない。