児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで再逮捕された教諭について、名古屋地検岡崎支部は不起訴とした。3日付で、理由は明らかにしていない。」と報じたが「同法違反と県迷惑行為防止条例違反の罪で起訴していました」という中日新聞の報道


 中日新聞の報道では逮捕容疑は4件あって、2件起訴されたんだが、3件不起訴になっていて、計算が合わない。まだ間違っていないか
 「8/23逮捕のr02.9.23迷惑条例違反」は報道されてない

 侵入罪と盗撮(迷惑条例違反・製造罪)は牽連犯になるかなと思っていたが、侵入罪が起訴されていないという。

8/3 r03.7.12侵入と迷惑条例違反で逮捕
8/23 r02.9.23侵入と児童ポルノ5項製造罪で逮捕
9/3 r03.7.12迷惑条例違反+r02.9.23の児童ポルノ5項製造罪で起訴
  r03.7.12侵入とr02.9.23の侵入と「8/23逮捕のr02.9.23迷惑条例違反」は不起訴

中学女子トイレ カメラ設置疑い 豊田の教員逮捕
2021.08.03 中日新聞
 愛知県警生活安全特別捜査隊と豊田署は三日、勤務先の中学校の女性用トイレにカメラを設置したとして、建造物侵入と県迷惑行為防止条例違反の疑いで、中学校教員容疑者を逮捕した。
 逮捕容疑では、七月十二日午前五時三十五分から午後零時十五分ごろまでの間に、現場の女性用トイレに入り、録画撮影状態にした小型カメラを設置したとされる。
 同署によると、容疑を認めている。同日、トイレの床にカメラが落ちているのを生徒が見つけた。県警が画像の解析を進め、同容疑者が浮上したという。

盗撮の疑いで再逮捕
2021.08.24 中日新聞
 【愛知県】豊田署は23日、豊田市内の中学校のトイレにカメラを設置し、女子生徒を盗撮した児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで教諭容疑者を再逮捕した。
 再逮捕容疑では昨年9月23日ごろ、用便中の他人の姿を撮影するため、同市内の中学校の女性用トイレに侵入。小型カメラを設置してトイレを利用した少女を盗撮し、その動画を自分のパソコンに保存していたとされる。
 署によると「間違いありません」と認めている。容疑者は今月3日、勤務先の中学校のトイレに小型カメラを設置したとして建造物侵入と県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕された。

児童ポルノ禁止法違反容疑の教諭を不起訴 ※訂正 09月05日掲載
2021.09.04 中日新聞
 【愛知県】勤務先の中学校のトイレに設置したカメラで女子生徒を盗撮するなどしたとして、児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで再逮捕された豊田市の20代の男性教諭について、名古屋地検岡崎支部は不起訴とした。3日付で、理由は明らかにしていない。
 ※訂正 09月05日掲載
 4日付朝刊<17>面「児童ポルノ禁止法違反容疑の教諭を不起訴」の見出しと記事で事実関係に誤りがありました。名古屋地検岡崎支部は、逮捕された豊田市の20代の男性教諭について、同法違反と県迷惑行為防止条例違反の罪で起訴していました。建造物侵入と8月23日再逮捕分の同条例違反については不起訴としました。

「裁判官足りずやり直し 金沢地裁公判 3人必要と気付かず」の関連条項

 麻薬であるリゼルギン酸ジエチルアミド(通称LSD)の営利目的所持は麻薬及び向精神薬取締法66条2項で「一年以上十年以下の懲役に処し、又は情状により一年以上十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金」だから法定合議事件(裁判所法26条2項2号)になる。
 大村判事は51期で部総括なので、出世早い方だが、特別法に弱い。 
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2021/06/06/120157okumuraosaka.hatenadiary.jp
児童ポルノ罪で理由不備の判決書いた人。

裁判所法第二六条(一人制・合議制)
 地方裁判所は、第二項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
②次に掲げる事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱う。ただし、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定めがあるときは、その定めに従う。
二 死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪(刑法第二百三十六条、第二百三十八条又は第二百三十九条の罪及びその未遂罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第一項若しくは第二項又は第一条ノ三第一項の罪並びに盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第二条又は第三条の罪を除く。)に係る事件
四 その他他の法律において合議体で審理及び裁判をすべきものと定められた事件
③前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。

大麻取締法
第六章 罰則
第二四条の二
 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3前二項の未遂罪は、罰する。

麻薬及び向精神薬取締法
第七章 罰則
第六六条
 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に該当する者を除く。)は、七年以下の懲役に処する。
2営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上十年以下の懲役に処し、又は情状により一年以上十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3前二項の未遂罪は、罰する。

裁判官足りずやり直し 金沢地裁公判 3人必要と気付かず
9/4(土) 5:01配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/435b658e34f31ad14f311a6839e14088d506dde3北國新聞社
 金沢地裁で3日開かれた刑事裁判で、裁判官3人による「合議」で審理しなければならないのに、裁判官1人だけで審理するミスがあった。1時間の公判終盤、大村陽一裁判官が被告人質問の途中で気付き、「申し訳ないですが、きょうの手続きも含めてやり直します」と述べた。10日に審理をやり直す。

 ミスがあったのは大麻取締法違反(営利目的所持)の罪に問われた岐阜県大垣市、無職金村直哉被告(36)の第2回公判で結審予定だった。

 検察側は被告が合成麻薬LSDも所持していたとして、訴因変更を請求し罪名に麻薬取締法違反を加えたため、合議で行わなければならなかった。初公判は裁判官1人で行われた。

 弁護人の中西●一弁護士(●は示に右)は「私も含め誰も気付いていなかった」と話した。地裁は「コメントは差し控える」としている。

 裁判所法は法定刑の下限が懲役1年の事件は合議対象と定めており、この裁判では訴因変更で法定刑が「懲役1年以上10年以下」になったため、合議に切り替える必要があった。

カナダにおける強制わいせつ事件(176条後段)の法令適用に、刑法3条5号をあげない事例、カナダにおける児童ポルノ製造事件の法令適用に、児童ポルノ法10条をあげない事例(千葉地裁r03.03.22)

 日本国外の行為について刑法・児童ポルノ法が当然適用されるわけではないので、国外犯規定を挙げないとだめでしょ。

刑法
第一条(国内犯)
 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
第三条(国民の国外犯)
 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
五 第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦かん、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第一〇条(国民の国外犯)
 第四条から第六条まで、第七条第一項から第七項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

       強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
千葉地方裁判所判決令和3年3月22日

       主   文

 被告人を懲役3年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の全部の執行を猶予する。
 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 ■■■(■■■当時8歳。以下「甲」という。)が13歳未満であることを知りながら,平成29年6月27日午後5時8分頃から同日午後5時30分頃までの間(現地時間),留学中の寄宿先であったカナダ国ブリティッシュコロンビア州■■■の甲方(以下「甲方」という。)において,甲に対し,その陰部にバイブレーション機能により振動させた携帯電話機を押し当て,さらに,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の男子に対してわいせつな行為をした。(令和3年1月8日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第1)
第2 甲(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同年10月14日午後3時31分頃から同日午後4時22分頃までの間(現地時間),甲方において,甲に対し,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をした。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第1)
第3 第2記載の日時・場所において,甲(当時9歳)に対し,被告人がその陰茎を手淫するなどの姿態をとらせ,その姿態を動画撮影機能付き携帯電話機で撮影した上,その頃から同年12月26日頃までの間(現地時間)に,甲方において,その動画データ2点をパーソナルコンピュータに内蔵されたハードディスクに記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第4 甲(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同年10月19日午後3時27分頃から同日午後4時9分頃までの間(現地時間),甲方において,甲に対し,その下着を引き下げて陰部や臀部を露出させ,その臀部を触り,さらに,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をした。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第3)
第5 ■■■(当時17歳。以下「乙」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成30年3月6日午後5時28分頃から同日午後6時14分頃までの間,京都市■■■の自宅(以下「自宅」という。)において,長野県内の乙方にいた乙とアプリケーションソフトウェア「LINE」のビデオ通信機能等を用いて通信中,乙に指示して,乙が使用するカメラ機能付き携帯電話機に内蔵されたカメラの前で,その陰茎や臀部を露出させた姿態をとらせ,その頃,自宅において,その映像を被告人が使用するパーソナルコンピュータの画面に表示させた上,これを動画キャプチャーソフトウェア「Bandicam」を用いて録画し,同姿態に係る動画データ2点を作成して同パーソナルコンピュータ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第6 同日午後6時18分頃,自宅において,乙に対し,児童(撮影当時10歳)を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録である動画データ1点を,前記「LINE」を用いて,被告人が使用する同パーソナルコンピュータから乙が使用する同携帯電話機に送信し,その頃,乙にこれを受信させ,もって電気通信回線を通じて児童ポルノを提供した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第3)
第7 ■■■(当時15歳。以下「丙」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同年6月15日午後11時13分頃から同月16日午前零時12分頃までの間,自宅において,北海道内の丙方にいた丙と前記「LINE」のトーク機能等を用いて通信中,丙に指示して,その陰茎や臀部を露出させた姿態をとらせ,これを丙が使用する動画撮影機能付き携帯電話機により撮影させた上,その動画データ4点を,同携帯電話機から前記「LINE」を用いて被告人使用のパーソナルコンピュータに送信させ,同日午前1時7分頃,自宅において,同動画データ4点を外付けハードディスクに記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第4)
第8 丙が18歳に満たない児童であることを知りながら,同月18日午後11時11分頃から同日午後11時26分頃までの間,自宅において,北海道内の丙方にいた丙と前記「LINE」のビデオ通話機能等を用いて通信中,丙に指示して,丙が使用するカメラ機能付き携帯電話機に内蔵されたカメラの前で,その陰茎を露出させた姿態をとらせ,その映像を被告人が使用するパーソナルコンピュータの画面に表示させた上,これを前記「Bandicam」を用いて録画し,同姿態に係る動画データ1点を作成した上,同月24日午後6時15分頃,自宅において,同動画データ1点を外付けハードディスクに記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第5)
第9 同月18日午後11時50分頃,自宅において,丙に対し,児童(撮影当時14歳)を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録である動画データ1点を,前記「LINE」を用いて,被告人が使用する同パーソナルコンピュータから丙が使用する同携帯電話機に送信し,その頃,丙にこれを受信させ,もって電気通信回線を通じて児童ポルノを提供した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第6)

(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段に,判示第2及び第4の各所為はいずれも刑法176条後段に,判示第3の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号に,判示第5,第7及び第8の各所為はいずれも同法7条4項,2項,2条3項3号に,判示第6及び第9の各所為はいずれも同法7条2項後段,前段,2条3項1号にそれぞれ該当するところ,判示第3及び第5ないし第9の各罪について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の全部の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付することとする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,①外国人男児1名に対し,陰茎を手淫するなどした強制わいせつの事実3件(判示第1,第2,第4)及びうち1件に係る性交類似行為を記録・保存した児童ポルノ製造の事実1件(同第3),②日本人男児2名に陰部を露出させた姿態を記録・保存した児童ポルノ製造の事実3件(同第5,第7,第8)並びに③児童ポルノ提供の事実2件(同第6,第9)からなる事案である。
(求刑・懲役4年)
  令和3年3月22日
    千葉地方裁判所刑事第4部
           裁判官  谷口吉伸

「ニルヴァーナのジャケ写「全裸赤ちゃん」提訴が話題、日本の法律で「児童ポルノ」にあたる?」の補足

 取材が記事になってますが
https://news.yahoo.co.jp/articles/81aec737ff976a6ab344715beab10878ba555b7f
 裁判例を問い合わせて来た県警があったので、そんな安易な捜査もあるのかと思いますが、取材用の下書きがありますので、補足しておきます。横浜地裁の事件なら、横浜地検・神奈川県警、東京地裁の事件なら東京地検・警視庁、大阪地裁の事件なら大阪地検大阪府警に聞きましょう。

世界的に有名なアルバムジャケットだが、今回の訴訟をどう見るのか。奥村徹弁護士に聞いた。

(1)乳幼児の裸体について 日本の法律に照らして、児童ポルノにあたるのでしょうか?
 「微笑ましい」「あどけない」と言って許容されるといいたいところですが、児童ポルノ法にはそのような除外事由はなく、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」(児童ポルノ法2条3項3号)に当たるかどうかで判断されます。
 立法関係者の解説書によれば「性欲を興奮させ又は刺激する」とは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激することをいうものと解しています。」「一部の少数者の性欲を興奮させ又は刺激するものは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものでない|恨り、児童ポルノには当たりません。」(よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法 P186)とされており、乳幼児のあどけない裸体画像は除外されるかのように説明がされていて、裁の裁判例では「沐浴している場面」は児童ポルノに該当しないとするものもあります。

横浜地裁平成28年7月20日
各画像中,一部の画像については,被害児童が衣服の全部又は一部を着けない状態にはあるものの,通常の沐浴をしている情景としか見られないなど,性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないと判断したため,これらの画像については児童ポルノ製造罪は成立しない。

 もっとも、高裁判例レベルでは、「トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童が突っ立っている画像」や、「男湯脱衣場にいる女児画像」について、児童ポルノに該当するとされていて、厳しい態度を取っています。

東京高裁平成30年 1月30日(原審横浜地裁h28.7.20)
 (2) 論旨は,また,原判決が児童ポルノと認めた画像の中には,一般人の性欲を興奮又は刺激させないものが含まれているとして,具体的には,トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,~~を挙げ,これらの画像を撮影した行為について児童ポルノ製造罪を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,原判決は,公訴事実に含まれる各画像を個別に検討し,一部の画像を性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないとするなど,児童ポルノの該当性を慎重に判断しており,所論指摘の画像の撮影行為をいずれも児童ポルノに該当するとした原判決の判断は不合理ではない。トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童が突っ立っている画像であって,児童に殊更扇情的な姿態をとらせたものではなくても,性器を殊更露出させたものであれば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。

阪高裁平成24年7月12日(公刊物未掲載 原審大阪地裁H24.1.19)
 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。
 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。

 これによれば、問題のジャケット画像の乳児の画像も、性器が写っているので、児童ポルノ(2条3項3号)とされる恐れがあります。

(2)過去のものだったり、ある種の芸術性があってもダメなのでしょうか?
 日本法の児童の定義は、実在する18歳未満の者ですが(法2条1項)、年齢要件は撮影されてた時点で判断されますから、児童を撮影した場合は撮影後何年経っても、児童ポルノ性は失われません。
 芸術性については、いわゆるCG児童ポルノ事件の東京高裁判決H29.1.24が「学術研究、文化芸術活動、報道等」への配慮条項(法3条)を受けて「当該画像等の具体的な内容に加え,それが作成された経緯や作成の意図等のほか,その画像等の学術性,芸術性,思想性等も総合して検討し,性的刺激等の要素が相当程度緩和されていると認められる場合には,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらず,「児童ポルノ」には該当しないと解すべきである。」と判示していて一定の理解を示しています。

東京高裁H29.1.24(いわゆるCG児童ポルノ事件 原審東京地裁H28.3.15)
オ 芸術活動(表現の自由)等との関係
(ア)所論は,芸術分野においては,実在する児童のモデルにポーズをとらせてその姿を描写することは広く一般的に採られてきた方法であり,描かれたモデルがどこの誰であるかまで判明している作品も少なくないところ,原判決を前提とすると,このように長年優れた芸術とされてきた過去の名作の展示,販売,模写等が児童ポルノ法で禁止されることになる上,原判決の基準は,一般人からみて同一といえるか否かという曖昧なものであり,このような曖昧な基準によると,芸術活動に萎縮的効果を与えることになり,相当でない,このことは,現行児童ポルノ法3条の趣旨にも反するものである,などと主張する。
(イ)児童ポルノ法上の「児童ポルノ」に該当するかどうか,すなわち,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」(同法2条3項3号)に当たるか否かを判断するに当たって,表現の自由や芸術活動を不当に侵害しないようにする必要があることは,同法3条が「この法律の適用に当たっては,国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」と規定していることからも明らかである。そして,上記の判断に当たっては,当該画像等の具体的な内容に加え,それが作成された経緯や作成の意図等のほか,その画像等の学術性,芸術性,思想性等も総合して検討し,性的刺激等の要素が相当程度緩和されていると認められる場合には,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらず,「児童ポルノ」には該当しないと解すべきである。
 所論が指摘するような歴史的絵画の展示や模写等については,そもそも,被写体の児童性や同一性が立証できない場合が少なくないと考えられるが,仮にこれらの立証が可能な場合であっても,このような学術性,芸術性,思想性等を総合して判断することにより,児童ポルノに該当しないと判断される場合が十分あり得るというべきである。

 これによれば、CDジャケットなどの画像も、こういう芸術性を備えれば、児童ポルノ性が否定される余地はありそうです。

乳児の全裸写真と、3号児童ポルノ


 全裸なので所定の部位が露出されているとすると、「性欲を興奮させ又は刺激する」の要件が問題になる。
 沐浴写真については無罪判決があって、男湯の女児については、有罪という高裁判決がある。東京高裁は「トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童が突っ立っている画像であって,児童に殊更扇情的な姿態をとらせたものではなくても,性器を殊更露出させたものであれば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。」とする。

保護責任者遺棄致傷,強制わいせつ,児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐,強制わいせつ),殺人,強制わいせつ致傷被告事件
横浜地方裁判所判決平成28年7月20日
第8 児童ポルノ製造事件について
   甲228号証及び甲230号証の各画像中,一部の画像(甲228号証添付資料12の写真1ないし17,甲230号証添付資料2の写真1ないし5,同資料7の写真6ないし10,同資料10の写真1,2,同資料11の写真3,同資料15の写真1,2,8ないし13及び15)については,被害児童が衣服の全部又は一部を着けない状態にはあるものの,通常の沐浴をしている情景としか見られないなど,性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないと判断したため,これらの画像については児童ポルノ製造罪は成立しない。

東京高裁平成30年 1月30日
保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
 (2) 論旨は,また,原判決が児童ポルノと認めた画像の中には,一般人の性欲を興奮又は刺激させないものが含まれているとして,具体的には,トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童を拘束している画像,上半身裸の男児の目や口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像で性器が映っていないもの,児童が突っ立っている画像を挙げ,これらの画像を撮影した行為について児童ポルノ製造罪を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,原判決は,公訴事実に含まれる各画像を個別に検討し,一部の画像を性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないとするなど,児童ポルノの該当性を慎重に判断しており,所論指摘の画像の撮影行為をいずれも児童ポルノに該当するとした原判決の判断は不合理ではない。トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童が突っ立っている画像であって,児童に殊更扇情的な姿態をとらせたものではなくても,性器を殊更露出させたものであれば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。また,全裸で両手を縛った画像や性器をひもで緊縛するなどして児童を拘束している画像や,上半身裸の男児の目,口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像も,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。所論は,少年アイドルの上半身裸の写真や小学生の水泳の写真と同視でき,児童ポルノに該当しないとも主張するが,それらは,画像から読み取れる姿態,場面,周囲の状況,構図等を総合的に考慮して判断するならば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとはいえないと評価されるにすぎない。なお,保護者が陰茎をつまんで撮影した写真は,児童ポルノに該当するが,その製造,所持の目的が,子供の成長の記録のためであるなどして,性的好奇心を満たす目的等に欠ける場合には,犯罪を構成しないと評価されるだけである。

阪高裁平成24年7月12日
2 控訴趣意中,その余の法令適用の誤りの主張について
 論旨は,(1)本件各画像は,児童の裸が撮影されているが,一般人を基準とすると「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから,児童ポルノ法7条2項の製造罪(以下「2項製造罪」という。)は成立しないのに,原判決は原判示罪となるべき事実に同法7条2項,1項,2条3項3号を適用しており,~~,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。
 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)2条3号
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

https://amass.jp/150220/
ルヴァーナ(Nirvana)のメンバーと、カート・コバーンKurt Cobain)の遺産を管理するエステートは、アルバム『Nevermind』のジャケット・カヴァーに赤ん坊として登場したスペンサー・エルデンから訴えられたと報じられています。エルデンは、バンドが連邦児童ポルノ法に違反し、児童の性的搾取を行ったと主張しています。TMZの報道後、PitchforkやVarietyが訴訟内容を確認しています。

アルバム・カヴァーは、赤ちゃんが泳いでいる先にドル紙幣があることから、一般的には資本主義に対する皮肉として理解されています。性的描写のない乳幼児のヌード写真は、一般的に法律上、児童ポルノとはみなされません。

しかし、エルデンの弁護士であるロバート・Y・ルイスは、この写真が児童ポルノの一線を越えていると主張。写真に通貨が含まれていることで赤ん坊が「セックスワーカーのよう」に見えると書いています。

カリフォルニア州中央地区の連邦地方裁判所に提出され、Varietyが入手した訴訟内容にはこう書かれています。

「被告は意図的にスペンサーを撮影した商業用児童ポルノを制作し、彼の衝撃的なイメージを利用して、彼を犠牲にして自分たちと自分たちの音楽を宣伝した」「被告は、音楽業界で一般的に行われている、注目を集めるためのレコードプロモーションのスキームの重要な要素として、スペンサーを描いた児童ポルノを使用しました。アルバムカヴァーでは、悪評を得て売り上げを伸ばし、メディアの注目や批評を集めるために、子どもたちを性的に挑発するようなポーズをとっています」

写真家のカーク・ウェドルやアルバムの発売元レーベルなども含めて訴えているエルデンは、「生涯にわたる損害」を被ったと主張し、それぞれに対して少なくとも15万ドルを要求しています。

訴訟の文書には「スペンサーと法的保護者は、スペンサーの肖像や肖像の使用を許可する文書に署名したことはなく、スペンサーを描いた商業的な児童ポルノにも署名したことはなかった」とも書かれており、また、エルデンが「18歳未満の時に商業的な性行為に従事させられた」という「性的人身売買の事業」についても訴えています。

最近avMARKET事件でスマホ等を押収された場合の押収物還付について、データ没収の可能性があるという弁護士ドットコムの回答

 千葉簡裁の略式命令は公刊物に出てないので、奥村のブログで見かけただけだと思われます。データの没収というのは法文がなく、違法です。HDDでもスマホでも媒体が没収されるとデータごと所有権が国に移ります。所有権放棄も没取もされなければ被告人にデータごと戻ります。

刑法第一九条(没収)
1 次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
刑訴法第四九八条の二[不正作成等の電磁的記録消去等の処分]
 不正に作られた電磁的記録又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還し、又は交付する場合には、当該電磁的記録を消去し、又は当該電磁的記録が不正に利用されないようにする処分をしなければならない。
②不正に作られた電磁的記録に係る記録媒体が公務所に属する場合において、当該電磁的記録に係る記録媒体が押収されていないときは、不正に作られた部分を公務所に通知して相当な処分をさせなければならない。
〔平二三法七四本条追加〕

https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/20041105/1107047506
電子データがファイル単位で没収されています。これは一大事だ。それはできないという東京高裁判決がいくつかある。
関税法違反千葉簡裁H15.10.21
主文
被告人を罰金50万円に処する。
この罰金を完納できないときは金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
ただし,端数を生じたときはこれを1日とする。
この罰金に相当する金額を仮に納付することを命ずる。
千葉区検察庁で保管中のハードディスクドライブ1点に記録された,わいせつファイル6,572ファイル(平成15年千葉検領4024号符号1)を没収する。

奥村徹弁護士の回答 2021.8.23 1543
単純所持罪(7条1項)だけであれば逮捕されません。身柄拘束はありません。
児童ポルノ画像が現認されれば、普通は、罰金刑になります。
児童ポルノが出た媒体については、消去とか破壊を迫られることになります。
2021.8.23 1543

s弁護士の回答 2021.8.23 15:52
【質問1】押収品は返却されますか?
【回答1】ipadは返還をされますが、実務上は、証拠物として押収されたものの没収されなかったipad児童ポルノ等の違法データが記録されている場合には、押収物還付の際に検察官から被告人に対して、任意に違法データの消去に応じることを求めることが多いです。東京高等裁判所平成14年12月17日によれば、データを没収するためにはPC全体を没収するしかないという考え方を示したものもあるし、また、千葉簡易裁判所平成15年10月21日(関税法違反)によれば、ハードディスクドライブ1点に記録されたわいせつファイル6572ファイルを没収するとしたこともある。
いずれにしても、面倒なので、違法データについては、任意に消去に応じた方が良いかと思われます。

奥村徹弁護士の回答 2021.8.23 16:19
> 千葉簡易裁判所平成15年10月21日(関税法違反)によれば、ハードディスクドライブ1点に記録されたわいせつファイル6572ファイルを没収
という略式命令については、今の刑法では、児童ポルノの媒体は、媒体を没収するか、没収しないかしかできず、データを没収するという没収方法は採れません。違法です。
 そこで、押収した媒体については、捜査段階で、所有権を放棄させるとか、還付の段階で、消去させる破壊させるという選択を迫られることになります。
 そういうところは、住所録や家族写真を救済できる場合もあるので、弁護士に相談して対応してください。

単純所持罪について2条3項1~3号の法文を並べただけの児童ポルノ認定方法(大阪地裁R03.2.17)

 判示第1の2の製造罪では「同児童に,その陰茎等を露出させる姿態,被告人及びCが同児童の陰茎を手指で直接触る姿態及びCが同児童の陰茎を口淫する姿態をとらせ,」とい具体的事実を記載しているのに、判示第3の所持罪では具体的記載がありません。理由不備です。
 控訴すれば控訴審未決が全部算入されるので、弁護人は、判決書をチェックして下さい。1審で指摘すると訴因変更で修正されてしまうので、黙っておくという選択もあります。
 

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

判例番号】 L07650279
       未成年者誘拐,強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 大阪地方裁判所判決/令和2年(わ)第1136号、令和2年(わ)第1504号、令和2年(わ)第2305号
【判決日付】 令和3年2月17日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
(罪となるべき事実)
第1 別紙記載のB(当時12歳)が13歳未満の児童であることを知りながら,分離前の相被告人Cと共謀の上,
 1 令和元年9月16日午後1時1分頃から同日午後1時6分頃までの間,大阪府東大阪市(以下略)において,同児童に対し,被告人及びCが同児童の陰茎を手指で弄ぶなどした上,Cが同児童の陰茎を自己の口腔内に入れて口淫し,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をし,
 2 前記日時場所において,同児童に,その陰茎等を露出させる姿態,被告人及びCが同児童の陰茎を手指で直接触る姿態及びCが同児童の陰茎を口淫する姿態をとらせ,それらの姿態を被告人がビデオカメラで動画撮影し,その動画データ1点を同ビデオカメラに装着したSDカードに記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,
第2 別紙記載のA(当時11歳)が未成年者であることを知りながら,同人を誘拐しようと考え,Cと共謀の上,Cが,令和2年1月19日午後2時15分頃,大阪市鶴見区(以下略)D株式会社E3階F西側通路において,Aに対し,「メダル増やせるところあるから行く。」などと甘言を用いて誘惑し,同人の親権者に無断でAを同所から被告人が賃借している同市城東区(以下略)□□106号室に連れ去り,同日午後2時49分頃から同日午後3時48分頃までの間,Aを前記□□106号室に留め置いて被告人及びCの支配下に置き,もって未成年者を誘拐し,
第3 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年2月9日,大阪府寝屋川市(以下略)Gにおいて,児童による性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持した。

(法令の適用)
 被告人の判示第1の1(柱書を含む)の所為は刑法60条,177条後段に,判示第1の2(柱書を含む)の所為は刑法60条,児童ポルノ法7条4項,2項,2条3項1号,2号,3号に,判示第2の所為は刑法60条,224条に,判示第3の所為は包括して児童ポルノ法7条1項前段,2条3項1号,2号,3号にそれぞれ該当するところ,

令和和3年2月18日
    大阪地方裁判所第7刑事部
        裁判長裁判官  佐藤弘規
           裁判官  延廣丈嗣
           裁判官  中村暢明

 「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像」とちゃんと具体的事実を摘示している裁判例もあります。

判例番号】 L07551235

       強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 大阪地方裁判所判決/令和元年(わ)第3842号、令和2年(わ)第885号
【判決日付】 令和2年12月16日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

第3 Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,自己の性的好奇心を満たす目的で,同年9月17日,大阪市城東区(以下略)所在の被告人方において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像及び映像データ9点を記録した電磁的記録媒体を内蔵するパーソナルコンピュータ1台(大阪地方検察庁令和元年領第10850号符号5)を所持し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
  大阪地方裁判所第12刑事部
        裁判長裁判官  増田啓祐
           裁判官  中山 知
           裁判官  尾嶋翔一

香川県青少年保護育成条例の「猥せつ」につき、法文にない「単に自己の性的欲望を満たす目的で,」を要件としているかのような裁判例(高松地裁r02.8.6)

「第3の1 令和元年11月22日午後4時19分頃から同日午後6時33分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首を舐めるなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし」という認定ですが、条例は

( 淫 行 又 は 猥 せ つ 行 為 等 の 禁 止 )
第 16条
1何 人 も 、 青 少 年 に 対 し 、 淫 行 又 は 猥 せ つ の 行 為 を し て は な ら な い 。

という法文なので、「単に自己の性的欲望を満たす目的」は明文にはありません。
 別件の高松高裁R03.3.2(上告中)では必ずしも不要とされています。
 最大判S60.10.23(福岡県青少年条例)に従えば必要説、最大判h29.11.29(強制わいせつ罪)に従えば不要説となるので難しいところです。

判例番号】 L07550667
       香川県青少年保護育成条例違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 高松地方裁判所判決/令和2年(わ)第108号、令和2年(わ)第135号
【判決日付】 令和2年8月6日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
       理   由

(罪となるべき事実)
第1(令和2年4月3日付け起訴状記載の公訴事実第1及び第2)
   被告人は,■■■(当時14歳。以下「A」という。)が18歳に満たない青少年ないし児童であることを知りながら
 1 令和元年7月13日午後2時10分頃から同日午後3時32分頃までの間,高松市(以下略)被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Aに対し,その陰部を触り,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,淫行及び猥せつの行為をし
 2 同日午後3時10分頃から同日午後3時32分頃までの間,同所において,Aに被告人の陰茎を口淫させる姿態,被告人がAの陰部を手指で触る姿態並びにAの乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ,これをスマートフォンで撮影し,その動画データ4点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録・保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第2(令和2年4月3日付け起訴状記載の公訴事実第3)
   被告人は,■■■(当時13歳。以下「B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で,別表記載のとおり,令和元年12月27日午前10時頃から令和2年1月19日午後6時頃までの間に,3回にわたり,前記被告人方において,Bに対し,その乳首及び陰部を舐め,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,淫行及び猥せつの行為をした。
第3(令和2年4月24日付け起訴状記載の公訴事実第1ないし第3)
   被告人は,■■■(当時15歳。以下「C」という。)が18歳に満たない青少年ないし児童であることを知りながら
 1 令和元年11月22日午後4時19分頃から同日午後6時33分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首を舐めるなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし
 2 令和2年2月8日午後3時4分頃から同日午後6時10分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首や陰部を舐め,同人の膣内に性的玩具を挿入するなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし
 3 同日午後5時2分頃から同日午後5時15分頃までの間に,同所において,Cにその乳房及び陰部を露出させる姿態並びに被告人がCの膣内に性的玩具を挿入する姿態をとらせ,これをスマートフォンで撮影し,その動画データ3点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録・保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1の1,第2の別表番号1ないし3,第3の1及び2の各所為
        いずれも香川県青少年保護育成条例22条,16条1項
 判示第1の2,第3の3の各所為
        いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(判示第1の2につき,同法2条3項1号ないし3号,判示第3の3につき,同法2条3項1号及び3号)
刑種の選択   いずれも懲役刑選択
併合罪の処理  刑法45条前段,47条本文,10条(罪及び犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予  刑法25条1項
保護観察    刑法25条の2第1項前段
(量刑の理由)
(求刑 懲役1年8月)
  令和2年8月6日
    高松地方裁判所刑事部
           裁判官  高橋貞幹

児童ポルノ単純所持罪の逮捕事例

 児童ポルノ単純所持罪については、それだけでは逮捕されません。
 相変わらず、「単純所持・逮捕」で煽る弁護士サイトがあって、ホントですかという相談も多いので、報道ベースでの単純所持罪の逮捕事例を載せておきます。

 逮捕されているのは、他の事件がある場合だけです。
 他の罪に小児性愛傾向とかの立証に使われているようです。
 単純所持罪って児童ポルノを押収してから立件するので、別件の逮捕勾留があるのなら、単純所持罪(7条1項)で逮捕勾留する必要は乏しいとも言えそうです。

 

2017/2/18 愛媛新聞 児童ポルノ所持 会社員を追起訴 地検支部
2017.02.18 愛媛新聞
 地検支部は16年12月、市の書店で2回にわたり、女性のスカートの下に盗撮目的でビデオカメラを差し入れたとしてA被告を地裁支部に起訴。署は1月、県内で初めて児童ポルノの単純所持容疑でA被告を逮捕していた。
2018/2/1 読売新聞 児童ポルノ所持容疑 元臨時職員再逮捕 署=和歌山
 2018.02.01読売新聞
 市で昨年12月、下校中の女子児童が顔にスプレーを吹きつけられてけがをした事件で、傷害容疑で逮捕された元同市臨時職員の容疑者について、署は1月31日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑で再逮捕した。容疑を認めている。
2018/2/9 読売新聞 児童ポルノ所持 容疑で保育士逮捕=千葉
2018.02.09 読売新聞
 署が市内の民間保育所に勤務する保育士を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕していたことが8日、捜査関係者への取材でわかった。逮捕は5日付。
 同署によると、容疑者は児童のわいせつ画像を所持していた疑い。

児童ポルノ製造で保育士に有罪判決 地裁松戸支部
2018.05.25 千葉日報
2018/3/3 読売新聞 海保職員を停職処分=宮城
2018.03.03 読売新聞
 第2管区海上保安本部は2日、18歳未満の子供の性的な動画を所持していたとして昨年11月に児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑で逮捕され、罰金刑を受けた宮城海上保安部の2等海上保安正の男性を停職2か月の懲戒処分にした。
 同本部の発表によると、2等海上保安正は他にも、銃刀法で禁じられた模造拳銃を1丁所し、2016年9月~17年11月にはインターネット上でエアガンを営利目的で売買し、兼業していた。
2021/1/9 産経新聞 児童ポルノ所持で再逮捕 容疑のホスト、PCに写真数千枚
2021.01.09 産経新聞
 女性客から現金を詐取しようとしたとして、詐欺未遂容疑で逮捕された新宿区歌舞伎町のホストの男が、児童のわいせつな動画を入手して保管していた疑いが強まったとして、警視庁が児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで再逮捕していたことが8日、捜査関係者への取材で分かった。男のパソコンには同様の写真が数千枚、保管されており警視庁は裏付けを進める。
2021/1/21 読売新聞 強制わいせつなど容疑=秋田
2021.01.21 読売新聞
 能代署は20日、被告を強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反(所持)の疑いで再逮捕した。被告は昨年11月26日、小学生の女子児童の体を触ったとして強制わいせつ容疑で逮捕、起訴されている。
 発表によると、容疑者は2015年8月中旬、県北部の住宅で別の女子児童の体を触ってわいせつな行為をしたほか、その様子を撮影したDVDを昨年11月下旬に自宅で所持していた疑い。
2021/3/9 産経新聞 児童ポルノ動画所持容疑、中学校講師を逮捕
2021.03.09 産経新聞
 逮捕容疑は、1月20日、18歳未満が映った児童ポルノ動画5本を保存したスマートフォンを、自宅で所持していたとしている。
 同容疑者は、市内の路上で道を尋ねるふりをして女児(9)の体を触ったとして今年2月に強制わいせつ容疑で逮捕されたが、「わいせつな行為はしていない」と否認。3月1日に府迷惑防止条例違反罪(痴漢行為)で起訴された。
2021/6/11 茨城新聞 児童ポルノ所持容疑で男再逮捕
2021.06.11 茨城新聞
 署は10日、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の疑いで、容疑者=窃盗罪などで起訴=を再逮捕した。

撮影送信させる型強制わいせつ罪と、わいせつ行為とされた範囲

こんな東京高裁があるので、撮影させるまでが強制わいせつ罪とされます。

東京高裁h28.2.19
すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。

 

 

東京 地裁   H18.3.24 撮影送信させ受信して
大分 地裁   H23.5.11 撮影送信させ
東京 地裁   H27.12.15 撮影送信させ
高松 地裁   H28.6.2 撮影送信させ
横浜 地裁   H28.11.10 撮影送信させ
松山 地裁 西条 H29.1.16 撮影送信させ
高松 地裁 丸亀 H29.5.2 撮影させ
岡山 地裁   H29.7.25 撮影させ送信させ
札幌 地裁   H29.8.15 撮影させ
札幌 地裁   H30.3.8 撮影させ
東京 地裁   H31.1.31 撮影させ
長崎 地裁   R1.9.17 送信させ
高松 地裁 丸亀 R2.9.18 撮影させ
京都 地裁   R3.1.21 撮影させ
熊本 地裁   R3.1.13 撮影させ
京都 地裁   R3.2.3 撮影させ
大阪 高裁   R3.7.14 撮影させ
京都 地裁   R3.7.28 撮影させ

女子高生TikToker(tiktok TikTok チックトック チックトッカー)の動画をダウンロードとか販売した人の対応 AiiPeep(アイイピープ)とか動画シェアとか、パンコレとか、アルバムコレクション等も

五月雨式に相談がくるので、まとめておきます

1 ダウンロード者

児童ポルノ単純所持罪が検討される。

7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

 完全削除(できれば物理的破壊)で、刑事責任は回避できる。この罪だけでは逮捕はない。

 捜索を受けた時に備えて、
  ①間違ってダウンロードした場合は、「自己の性的好奇心を満たす目的」に欠けるという弁解
  ②ダウンロード元の情報として、児童(「15歳」とか「17歳」とか)と表示されていない場合には、「児童と知らなかった」という弁解
を用意しておく。弁護士に相談して、最寄り警察に相談しておけば捜索の危険はかなり下がる。

 被害者対応は、警察相談と併行して。
 あちらからの流出経緯・こちらの入手状況・児童性の認識の程度によっては、不法行為責任は小さくなる可能性。
 撮影した者は製造罪になる。出演児童も共犯になりうるという裁判例もある。

リベンジポルノ罪については、普通、画像上はわからないので、そう弁解する。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 捜索はあるかないかわからないし、破棄してあれば捜索は空振りに終わるので、捜索を甘受するという選択肢もあるという説明をします。
 どうしても、捜索を回避したい(士業・医師・歯科医・教授・教員・就職活動中の学生等)の場合には、弁護士が対応します。
 弁護士費用としては
  相談料は22000円(確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
  対応する場合の費用は、220000円程度(士業・教員・公務員は330000円 他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合、報酬金はなし。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。
 県警によっては、「捜索差押しない・刑事処分ない」という回答をもらえることがある。


2 販売者・アップロード者
 わいせつ電磁的記録頒布罪・公然陳列罪
 児童ポルノ提供罪・公然陳列罪・提供目的製造罪
 リベンジポルノ公表罪
などが検討されるので、弁護士に相談して、逮捕を回避したい。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 弁護士費用は、逮捕危険があるので、応相談としています。分割払は可能。
 中心的な弁護士費用としては
  相談料は22000円
  対応する場合の費用は、
   着手金330000円程度(他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
   報酬金220000円程度(逮捕されなかった場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。


追記2021/08/27
 ダウンロード・購入者の捜索回避の警察相談は各地に数件かかりました。
 いずれはどこかの警察(被害者の住所など)に集中するんじゃないでしょうか。

追記2021/09/17
 児童ポルノ製造罪・提供罪・単純所持罪について捜査している警察(A都道府県警察のB警察署)は判明し、連絡が取れました。
 購入者は地元警察・B警察署へ相談。
 販売者は、B警察署へ。(B警察署名は教えられません。例えば大阪市西天満に済む花子さん(17歳)が、「はなちゃん」という芸名で活動していて、その裸体画像が流出した場合に、「はなちゃんさんが天満警察署に相談した」と公表してしまうと、はなちゃんの児童ポルノであること・天満警察管内に住所があることがバレてしまい、被害者が特定されてしまうからです。)


 所持罪の捜索があったという知恵袋の書き込みがありましたが削除されました。 
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12249473407
推知報道禁止と思われます。

 第一三条(記事等の掲載等の禁止)
 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌ぼう等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

追記 2022/01/01
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたので、
埼玉県警からの情報提供を受けて各地の警察が捜査しているものと思います(全国協働方式)

追記 2022/03/31
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたが、
破棄して警察相談した人は捜索は受けず
捜索を受けて現認された人は、ほぼ罰金という処理になっています。

医師の診療の際の強制わいせつ事件について、1審で示談して100万円弁償したのに加えて、さらに1000万円支払い宥恕を得て、2項破棄で執行猶予にした事例(高松高等裁判所r03.2.18)

 医師免許についての記載がありません。
 医道審議会にかかるかな。

       判   決
 上記の者に対する強制わいせつ被告事件について,令和2年10月6日高知地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官岡本安弘及び弁護人谷脇和仁(私選)出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
原判決を破棄する。
被告人を懲役年月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

 本件控訴の趣意は,量刑不当の主張であり,刑の執行を猶予すべきであるというのである。
 本件は,精神科の医師である被告人が,患者である被害者(当時28歳)を診察していた際,同人に強いてわいせつな行為をしようと考え,病院の診察室において,同人の両肩付近を両手で押さえ,その両頬や唇にキスをしたという事案である。
 原判決は,本件犯行は,不眠を訴えて精神科の治療を受けている被害者に悪影響を与えかねない悪質なものである上,精神科医として豊富な経験を有する被告人にはこれが容易に想起できるにもかかわらず,後先を考えずに本件犯行に及んだものであって,医師としての良識を甚だ欠いた点でも悪質であること,被害者は,本件犯行により大きな精神的打撃を受け,本件を一つの要因としてPTSDを発症し,精神的苦痛に苛まれていて,被告人の厳重処罰を求めていることを指摘し,被告人が賠償金として100万円を被害者に支払い,被害者の生活圏に接近しないことなどを約束して示談が成立してはいるものの,被害者の精神的打撃に照らすと慰謝の措置が十分とはいえないことも指摘した上で,被告人に前科前歴がないことや,被告人なりに反省の態度を示していることなどを考慮しても,実刑は免れないとし,被告人を懲役1年に処した。
 原判決の量刑事情の認定及び評価は概ね相当ではあるものの,本件のわいせつ行為の程度や被害者と示談が成立したことなどからすれば,原判決の量刑は,同種事案の量刑傾向の中では重い部類に属するとはいえる。しかし,医師である被告人が診察中に患者である被害者にわいせつ行為をしたという本件事案の特殊性に照らすと,被告人の行為責任は重いとみた原判決の量刑が重過ぎて不当であるとまではいえない。
 所論は,本件犯行態様は,被害者の両頬や唇にキスをしたというものであり,わいせつ行為の程度は相対的に軽微であると主張する。しかし,被告人が,精神科医でありながら,精神的な不調を訴えて受診している被害者に与えた悪影響の大きさなどに照らせば,所論の指摘を踏まえても,被告人に対する非難の程度は高いとした原判決の量刑判断が重過ぎて不当であるとまではいえない。
 所論は,被告人と被害者との間で示談が成立し,賠償金が支払われていることを重視すべきであると主張する。しかし,被害者の精神的被害が大きく,処罰感情も厳しいことに照らせば,示談が成立したことなどを過大に評価するのは相当でないとした原判決の量刑判断が誤っているとまではいえない。
 もっとも,原判決後,被告人が被害者に対して,賠償金として支払済みの100万円に加え,更に1000万円を支払い,被害者が被告人を許すことなどを内容とする示談が新たに成立したこと,被告人が反省を深め,贖罪のために生活困窮者の居住支援等を行う法人に土地建物を寄付したことなどが認められる。これらの事情に加えて,同種事案の量刑傾向や前記の被告人のために酌むべき事情を併せ考慮すると、被告人に対しては,直ちに実刑に処するのではなく,社会内で更生する機会を与えることが相当になったといえる。
 そこで,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して,被告事件について更に次のとおり判決する。 
 原判決の認定した罪となるべき事実に原判決挙示の法令を適用し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとして主文のとおり判決する。
令和3年2月18日
高松高等裁判所第1部
裁判長裁判官 杉山愼治 裁判官 安達拓 裁判官 井草健太

第2記載の画像データ等を所持していることを利用して、Bに新たに陰部等が撮影された画像データを自己の携帯電話機に送信させようと考え脅迫して 新たな画像データの送付を要求したという強要未遂事件(山形地裁R030512)


 強制わいせつ未遂もあり得るところですが、未遂なので、性的意味合いとかその程度がわかりませんね。強要未遂罪との境界線事例では、強要未遂に落ちちゃいますね。

令和3年5月12日/山形地方裁判所刑事部/判決

判例ID 28292002
事件名 わいせつ誘拐(変更後の罪名わいせつ略取誘拐)、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件
D1-Law.com判例体系

 上記の者に対するわいせつ誘拐(変更後の罪名わいせつ略取誘拐)、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件について、当裁判所は、検察官沖佑里乃及び主任弁護人菅原睦月(私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、

第2 ●●●(当時13歳。以下「B」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同年8月5日午後零時2分頃から同日午後零時33分頃までの間、●●●のB方において、Bにその陰部、肛門及び乳房を露出させた姿態をとらせ、これをBが使用する携帯電話機で静止画像として撮影させた上、その頃、同画像データ4点を同携帯電話機からアプリケーションソフト「D」を使用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、宮城県内において、同画像データ4点を同携帯電話機で受信して同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。

第3 第2記載の画像データ等を所持していることを利用して、Bに新たに陰部等が撮影された画像データを自己の携帯電話機に送信させようと考え、同日午後零時34分頃から同月14日午後3時3分頃までの間、宮城県内又はその周辺において、Bに対し、自己の携帯電話機から前記「D」を使用して、Bが利用する携帯電話機に「まんこもっと見たいです」、「のせてい?」、「いんたーねっつ」、「えーじゃもうのせちゃうね?」、「顔つきならいいよ」、「反応ないなら載せるね」、「番号付きで載せるね」、「広めるね」などのメッセージを送信して新たな画像データの送付を要求し、その頃、Bにこれらを閲覧させ、その要求に応じなければ被告人が所持する前記第2記載の画像データ等をインターネット上に拡散するなどしてBの名誉に対し害を加えかねない旨告知してBを脅迫し、Bに義務のないことを行わせようとしたが、Bがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかった。
(求刑 懲役5年)
刑事部
 (裁判長裁判官 今井理 裁判官 土倉健太 裁判官 佐藤元

監護者わいせつ罪と4項製造罪を観念的競合にした事例(千葉地裁R03.5.28)

 sexting事例では「撮影させ」までがわいせつ行為だとする東京高裁判例がありますので、「その陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ15点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もってAを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、同人に対し、わいせつな行為をするとともに」のうちの「その画像データ15点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、」はわいせつ行為ではないことになるのでは。

千葉地方裁判所令和03年05月28日
 上記の者に対する監護者性交等、監護者わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官竹生田哲郎及び国選弁護人宇藤和彦各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、平成18年12月22日に養子縁組した●●●A●●●と、遅くともその頃から令和元年5月10日頃までの間、同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監護していた者であるが、
第1の1 Aが18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交等をしようと考え、平成29年8月27日午後9時36分頃から同日午後9時53分頃までの間、●●●当時の被告人方●●●において、A(当時15歳)と口腔性交及び性交をし、もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交等をし、
 2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記日時場所において、同人に、被告人と性交する姿態及びその陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ104点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを、いずれも視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第2の1 Aが18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交をしようと考え、令和元年5月5日午後零時58分頃から同日午後1時9分頃までの間、被告人方において、A(当時16歳)と性交をし、もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をし、
 2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、同日午後零時36分頃から同日午後1時13分頃までの間、被告人方において、Aに、被告人と性交する姿態及びその陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ113点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを、いずれも視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月9日午後6時23分頃から同日午後6時26分頃までの間、●●●橋において、A(当時16歳)に、その陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ15点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もってAを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、同人に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第4 Aが18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交等をしようと考え、同日午後6時36分頃から同日午後8時26分頃までの間に、●●●に駐車中の自動車内において、同人(当時16歳)と口腔性交及び性交をし、もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交等をした。
(証拠の標目)
(事実認定の補足説明)
 1 本件の争点
 被告人は、判示第1の1記載の行為の日時に関する点を除き、判示各事実に係る性交等、わいせつ行為及び児童ポルノに当たる写真の撮影行為自体を行ったことは認めている。しかし、被告人は、〈1〉判示第2の1記載の性交及び判示第4記載の性交等は、いずれもAの方から誘われて行ったものであり、判示第3記載のわいせつ行為の内容をなす撮影行為は、Aが自らスカートをまくるなどしたために行ったもので、これらをはじめとして本件各監護者性交等(判示第1の1、第2の1及び第4)並びに監護者わいせつ(判示第3)の各事実については、いずれも「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」行ってはいない旨述べる。また、〈2〉本件各児童ポルノ製造罪(判示第1の2、第2の2及び第3)についても、写真を撮る際にAに対してポーズをとるように指示したことはなく、Aに「姿態をとらせ」てはいないと供述する。
 そして、弁護人においても、上記被告人の供述に依拠し、〈1〉については、Aは、被告人と性交等やわいせつな行為をすることについて自ら望んでおり、少なくともAの性的自己決定権に反しないものであるから、「監護者の影響力があることに乗じて」行われたとは認められないとし、〈2〉については、被告人がAに指示して当該姿態をとるように強制したものではないから、「姿態をとらせ」には当たらないとして、被告人はいずれの犯行についても無罪であると主張する。
 2 争点〈1〉について
 (1) 刑法179条の法意及び解釈
 しかし、刑法179条が定める監護者性交等罪及び監護者わいせつ罪は、18歳未満の者は、精神的に未熟である上、生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に精神的・経済的に依存しているところ、監護者が、そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて、18歳未満の者に対し、わいせつな行為や性交等をすることは、強制性交等罪等と同じく、これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであることから、このような行為類型については、暴行・脅迫が用いられず、また、抗拒不能等に当たらないとしても、強制わいせつ罪、強制性交等罪等と同等の悪質性・当罰性が認められるとして設けられた犯罪類型である。したがって、ここにいう「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは、監護者の影響力が一般的に存在し、かつ、当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で性交等又はわいせつな行為をしたと認められれば足りるのであって、具体的な性交等又はわいせつな行為が、監護者の影響力と無関係に行われたと認められるような特別な事情がある場合のみが除かれる、というべきである。そして、性交等やわいせつな行為に及ぶ特定の場面において、監護者の影響力を利用するための具体的な行為を行う必要がないのはもちろん、18歳未満の者が監護者との性交等やわいせつな行為に応じるなど、その承諾があったとしても、さらには監護者との性交等やわいせつな行為を自ら求めたような場合であっても、その意思決定は、精神的に未熟で判断能力に乏しい18歳未満の者に対して、前記のような監護者の影響力が作用してなされたものとみるべきであって、被監護者の自由な意思決定ということはできないから、およそ監護者性交等罪や監護者わいせつ罪の成否を左右するものではないと解される。
 (2) 認定事実と評価
 ア 関係証拠によれば、被告人は、平成18年11月にAの実母と婚姻し、同年12月に当時4歳であったAとも養子縁組を行ってAの養父となったこと、そして、被告人は、遅くともその頃からAが警察に被害申告をした令和元年5月10日頃までの間、自宅でAと同居し、稼働した収入でAを含む家族の生計を支え、Aを学校に通わせ、その生活態度を注意するなどしてAを養育、監督、保護していたこと、このような関係下で、被告人は、Aと判示第1の1、第2の1及び第4各記載の性交等に及び、また、判示第3記載のわいせつな行為をしたものであることが明らかである。
 被告人は、上記性交等やわいせつ行為の時点において、法律上も事実上もAを「現に監護する者」であったことに加えて、当時まだ15歳から16歳であったAが幼少期から文字どおり生活全般を全面的に依存してきた存在であったのであり、このような被告人が、Aの意思決定に対し、物心両面から一般的かつ継続的に作用を及ぼし得る力を有していたことは明らかであり、Aが精神面で年齢相応の成長を遂げていたとしても、このような影響力の程度はなお圧倒的なものといってよいものであったと認められる。
 イ してみると、被告人が述べ、弁護人が主張するような事情が仮に認められるとしても、そこでAがとったとされる言動や態度自体が、上述のような監護者としての被告人の影響力が作用して導かれたものにほかならないというべきである。よって、前示のような監護者性交等罪や監護者わいせつ罪の法意との関係でその成立を妨げるような事情と評価することはできず、また、そこに法益主体の自律的な意思決定を観念すべきでない以上、犯情としても有意なものと評価すべきではなく、主張自体が失当に帰する。他に上記性交等やわいせつ行為について監護者としての影響力が遮断されていたと評すべき特段の事情も見当たらない。したがって、被告人がAに対してした上記性交等やわいせつの各行為は、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」敢行されたものとして、各判示のとおりの監護者性交等罪又は監護者わいせつ罪を構成することに疑いはない。
 ウ なお、被告人は、判示第1の1記載の犯行について行為の日時を争うが、当該行為を撮影した画像データの撮影日時に関する情報等に照らせば、判示第1の1記載の日時に行われたものと認定でき、これに疑いを入れるべき事情は見当たらない。
 3 争点〈2〉について
 (1) 次に、いわゆる児童ポルノ製造の罪における「(児童に)姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により当該児童が当該姿態をとるに至ったことで足り、それ以上に強制や具体的又は明示的な指示等の働きかけを要するものではない。
 (2) これを本件についてみると、判示第1の2及び第2の2記載の各児童ポルノ画像は、同第1の1及び第2の1の各監護者性交等に係る被告人がAと性交等を行っている様子やその前後にAが陰部等を露出している様子などをAの面前で撮影したものであり、また、判示第3記載の児童ポルノ画像も、Aが歩道橋の階段部分に座って陰部等を露出している姿態に被告人が携帯電話機のカメラを向けて撮影したことそのものが、同様に監護者わいせつ行為を構成するものである。すなわち、本件各児童ポルノ画像におけるAの姿態は、いずれも被告人がAに対して敢行した監護者性交等や監護者わいせつの各行為及びその機会に、Aがとった姿態にほかならない。そうである以上、そのこと自体において、被告人が児童であるAに前記(1)の意味で「姿態をとらせ」たものであることは自明である(なお、この評価は、監護者としての影響力に乗じたという側面からも導き得るが、それ以前に、被告人がAに対してした各性交等やわいせつな行為を撮影したということ自体に包含される当然の帰結というべきものである。)。
 したがって、各判示の児童ポルノ製造の事実に疑いを入れる余地はなく、強制や明示的な指示の存在を否定することによって、姿態をとらせたことを争う被告人及び弁護人の主張は、ここでも失当である。
 4 補足
 判示各事実の認定に必要な証拠説明は、以上に尽きるが、後述の量刑判断における犯情事実の認定・評価の前提となるため、A及び被告人の各公判供述の信用性について触れておく。
(法令の適用)
 罰条
  判示第1の1、第2の1及び第4の各所為
  いずれも刑法179条2項、177条前段
  判示第1の2及び第2の2の各所為
  いずれもそれぞれ包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)7条4項、2項、2条3項1号、3号
  判示第3の所為
  監護者わいせつの点につき刑法179条1項、176条前段、児童ポルノ製造の点につき包括して児童買春法7条4項、2項、2条3項3号
 科刑上一罪の処理
  判示第3について 刑法54条1項前段、10条(重い監護者わいせつ罪の刑で処断)
 刑種の選択
  判示第1の2及び第2の2の各罪について いずれも所定刑中懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
刑事第5部
 (裁判長裁判官 前田巌 裁判官 安重育巧美 裁判官 井上寛基)

かすがい現象により女児2名に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交を科刑上一罪とした事例(岐阜地裁r030416)

 かすがい現象

裁判年月日 令和 3年 4月16日 裁判所名 岐阜地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(わ)527号
事件名 わいせつ略取,逮捕,強制性交等被告事件
文献番号 2021WLJPCA04166002

 上記の者に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官髙橋葵,弁護人(私選,主任)庄司友哉各出席の上審理し,次のとおり判決する。 
主文
 被告人を懲役11年に処する。
 未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
 
 
理由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,通行中のA(当時10歳●●●)及びB(当時10歳●●●)がいずれも13歳未満であることを知りながら,同人らと強制的に性交等をしようと考え,令和2年4月27日午後2時35分頃,岐阜県内において,同人らに対し,手に持った折りたたみナイフの刃を出して示し,「殺されたくなければこっちに来い。」「言うことを聞いてくれたらけがも何もない。」などと言って脅迫し,同人らを同所から約121メートル先の山林内の空き地に連行し,同所において,同人らの片手にそれぞれ手錠の片輪を掛けて互いを結束させるなどの暴行を加え,不法に逮捕するとともに,同人らを自己の支配下に置き,もってわいせつ目的で前記A及び前記Bを略取し,その頃から同日午後5時頃までの間,同所において,同人らの反抗を抑圧した上,着衣等を脱がせて全裸にさせ,順次,同人らの胸及び陰部を手で触り,なめるなどし,自己の陰茎を前記A及び前記Bの陰部に押しつけて挿入しようとするも,同人らの性器が未発達ゆえに性交するには至らず,同人らの口の中にそれぞれ自己の陰茎を挿入し,同人らと口腔性交した。
 【法令の適用】
 罰条 AとBに対する各逮捕の点はいずれも刑法220条,各わいせつ略取の点はいずれも同法225条,各強制性交等の点はいずれも同法177条
 科刑上1罪の処理 刑法54条1項前段,後段,10条(Aに対する逮捕とわいせつ略取,Bに対する逮捕とわいせつ略取,AとBに対する各逮捕,AとBに対する各わいせつ略取は1個の行為が2個の罪名に触れる。AとBに対する各逮捕・わいせつ略取と強制性交等の間には手段結果の関係がある。結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いA又はBに対する強制性交等罪[AとBに対する各同罪の犯情に軽重はない]の刑で処断)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 【量刑の理由】
 女児2名(いずれも当時10歳)に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交等である。公園で遊んでいた女児2名に対し,折りたたみナイフの刃を出して示すなどして脅し,人気のない空き地に連行して手錠をかけるなどし,略取,逮捕して行動の自由を奪った。そして,同人らを全裸にし,胸や陰部を触ったりなめたりした上,陰茎を陰部に押し付けて性交しようとしたが性交に至らず,口腔性交して陰部付近に精液をかけるなどした。2時間余にわたり,執ように種々性的暴行を加えた。さらに,被害状況を動画撮影し,犯行後他言したらネットに上げるなどと言って口止めした。誠に凶悪,卑劣な犯行である。性的自由侵害の程度は極めて強い。幼い女児に被らせた身体的・精神的苦痛は計り知れず,将来にわたる悪影響も懸念される。被害弁償や慰謝の措置は講じられていない。自己の性欲を満たすためにした誠に身勝手な犯行というほかない。あらかじめ折りたたみナイフ,手錠等を用意し,現場を下見し,標的とする女児を物色するなどして計画的に敢行した。厳しい非難が向けられるべきである。
。。。
本件の犯情は極めて悪く,強制性交等の事例の中で最も重い部類に位置付けられる。
 (求刑 懲役14年)
 岐阜地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 出口博章 裁判官 堀田喜公衣 裁判官 金子隼人)