児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

愛知県条例では「 公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、人に対し、卑わいな言動をすること。」が処罰されるので、「匂いを嗅ぐ」でも「卑わいな言動」とされてしまいそうです。

愛知県条例では「 公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、人に対し、卑わいな言動をすること。」が処罰されるので、「匂いを嗅ぐ」でも「卑わいな言動」とされてしまいそうです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/00edc54e78f49f0484a36fa390794e5065e61003?source=fb&fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR2CpeDHb70KjkolQtwItYS24Wx_Kw4FRk9H2beuCRdeQOlBwmTOO6anKE8_aem_AS5kql8h7j_BY3xqbQGkkPWleb7xAbDvMIwKbDR6weZhImXWvTd_sXWiIcTWcLS3AMASQbEeCU0MRnNnHD0XimUP
“匂いを嗅ぐ”は法律等で規制しきれず…急増する新たな手口『触らない痴漢』苦心する鉄道警察隊の捜査
そして追及する捜査員に、男が動機を口にしました。
男:
「においとか」
男性捜査員:
「においが好きなの?」
男:
「うん」
「女性の匂いを嗅ぎたかった」。法律では規制しきれない、“触らない痴漢”といわれる行為です。

“触らない痴漢”とは「わざと至近距離に近づいてにおいをかぐ」「首筋や耳などに息を吹きかける」「見知らぬ相手に、スマホのデータ共有機能でわいせつ画像を送り付ける」といった行為で、近年急増している、新たな痴漢の手口です。
痴漢行為を規制する、愛知県の迷惑行為防止条例では、「卑猥な行為」として「体への接触」は明記されているものの、匂いを嗅ぐなどの「触らない痴漢」には明確な記述がありません。

男性捜査員:
「それがエスカレートしていって、手を触っただとかそういう話になってくると、もちろん捜査員が見ていたら、現行犯逮捕します」

愛知県迷惑行為防止条例
(卑わいな行為の禁止)
第二条の二 何人も、公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること。
二 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
三 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
四 前三号に掲げるもののほか、人に対し、卑わいな言動をすること。
・・・
愛知県警の解説
11 「ような」とは、実際に相手方が不安を覚えたかどうかは問わず、具体的な言動の内容等を客観的に判断して、通常不安を覚えるであろうと考えられる言動を含み、不安を覚えさせたよりも広い概念である。
12 「言動」とは、言語・動作をいう。
13 「人」とは、男性、女性、成年又は未成年を問わないが、ここでいう人は卑わいな行為の相手方であるから、その行為を卑わいなものとして感じうる能力を有する者であることを要する, しかし、他人に対するものであれば足り、その直接たると間接たるとを問わないから、行為者が他人の認識しうるものであることを知ってなす場合には、本項に触れるものと解すべきである。
14 「人に対し」とは、他人を相手方としてという意味である。
15 「故なく」とは、正当な理由がなくの意である「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」による行為にかかる。これは、医療行為等の正当な理由によって、人の身体に接触するようなことがあり得るので、そのような行為は、違反態様から除外するために「故なく」と規定するものである。
16 「しゅう恥」とは、性的しゅう恥心を意味する。このしゅう恥心、すなわち、性的恥じらいは、幅の広い概念であるので「著しく」(社会的に認容し得ない程度に甚だしいものをいう。) という限定を付したものである。

20 「卑わいな言動」とは、「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」によるもので、第1号及び第2号に規定する行為以外のものを指し、通常人がしゅう恥又は不安を覚えるであろうと考えられる程度の野卑で、みだらな言語又は動作をいう。
刑法第174条(公然わいせつ罪) より広い概念であり、わいせつに至らないもので性的道義観念に反し、人に性的しゅう恥や嫌悪の念又は不安を覚えさせるものをいう。わいせつな言語は、刑法第174条にいう、わいせつ行為に含まれないとするのが通説であるので、卑わいな言語のみによるときは、本条第2項第3号のみが成立すると解すべきであろう。

強制わいせつ罪における「性的意図」薄井真由子判事
植村立郎「刑事事実認定重要判決50選 上 《第3版》」2020立花書房
 これに対し、客観的にみて性的意味が認められない行為については,行為者が性的意図をもって行っていたとしても,行為者の主観的事情だけで性的意味を肯定することはできないというべきである。この点に関し,行為者の主観的事情との関係で取り上げられることの多い治療行為と行為者の特殊な性的嗜好フェティシズム)に基づく行為について検討しておく。
(ア)治療行為
(イ)行為者の特殊な性的嗜好フェティシズム)に基づく行為
 行為者の特殊な性的嗜好フェティシズム)に基づく行為についても,性的意味の有無の判断と行為者の主観的事情の関係が問題となる。こうした行為は,一見性的意味を持つようには思われない行為であっても,行為者は性的意図を有して行っているからである。この点、あまりに特殊な性的嗜好であり,社会通念上は性的性質が認められない行為については,やはり,行為者の性的意図だけを理由に性的意味を肯定することはできないというべきである。例えば,女性が汗を流す姿を見ることに性的興奮を覚える者が,その姿を見たいがために無理やり運動場を走らせたとしても,社会通念上当該行為に性的意味は認められないから,行為者の主観的事情だけで性的意味があることにはならない。もっとも,社会通念上もフェティシズムに基づく行為として認知されているような行為であれば,そのことから性的意味を肯定できることもあるだろう。