児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

カナダにおける強制わいせつ事件(176条後段)の法令適用に、刑法3条5号をあげない事例、カナダにおける児童ポルノ製造事件の法令適用に、児童ポルノ法10条をあげない事例(千葉地裁r03.03.22)

 日本国外の行為について刑法・児童ポルノ法が当然適用されるわけではないので、国外犯規定を挙げないとだめでしょ。

刑法
第一条(国内犯)
 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
第三条(国民の国外犯)
 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
五 第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦かん、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第一〇条(国民の国外犯)
 第四条から第六条まで、第七条第一項から第七項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

       強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
千葉地方裁判所判決令和3年3月22日

       主   文

 被告人を懲役3年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の全部の執行を猶予する。
 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 ■■■(■■■当時8歳。以下「甲」という。)が13歳未満であることを知りながら,平成29年6月27日午後5時8分頃から同日午後5時30分頃までの間(現地時間),留学中の寄宿先であったカナダ国ブリティッシュコロンビア州■■■の甲方(以下「甲方」という。)において,甲に対し,その陰部にバイブレーション機能により振動させた携帯電話機を押し当て,さらに,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の男子に対してわいせつな行為をした。(令和3年1月8日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第1)
第2 甲(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同年10月14日午後3時31分頃から同日午後4時22分頃までの間(現地時間),甲方において,甲に対し,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をした。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第1)
第3 第2記載の日時・場所において,甲(当時9歳)に対し,被告人がその陰茎を手淫するなどの姿態をとらせ,その姿態を動画撮影機能付き携帯電話機で撮影した上,その頃から同年12月26日頃までの間(現地時間)に,甲方において,その動画データ2点をパーソナルコンピュータに内蔵されたハードディスクに記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第4 甲(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同年10月19日午後3時27分頃から同日午後4時9分頃までの間(現地時間),甲方において,甲に対し,その下着を引き下げて陰部や臀部を露出させ,その臀部を触り,さらに,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をした。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第3)
第5 ■■■(当時17歳。以下「乙」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成30年3月6日午後5時28分頃から同日午後6時14分頃までの間,京都市■■■の自宅(以下「自宅」という。)において,長野県内の乙方にいた乙とアプリケーションソフトウェア「LINE」のビデオ通信機能等を用いて通信中,乙に指示して,乙が使用するカメラ機能付き携帯電話機に内蔵されたカメラの前で,その陰茎や臀部を露出させた姿態をとらせ,その頃,自宅において,その映像を被告人が使用するパーソナルコンピュータの画面に表示させた上,これを動画キャプチャーソフトウェア「Bandicam」を用いて録画し,同姿態に係る動画データ2点を作成して同パーソナルコンピュータ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第6 同日午後6時18分頃,自宅において,乙に対し,児童(撮影当時10歳)を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録である動画データ1点を,前記「LINE」を用いて,被告人が使用する同パーソナルコンピュータから乙が使用する同携帯電話機に送信し,その頃,乙にこれを受信させ,もって電気通信回線を通じて児童ポルノを提供した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第3)
第7 ■■■(当時15歳。以下「丙」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同年6月15日午後11時13分頃から同月16日午前零時12分頃までの間,自宅において,北海道内の丙方にいた丙と前記「LINE」のトーク機能等を用いて通信中,丙に指示して,その陰茎や臀部を露出させた姿態をとらせ,これを丙が使用する動画撮影機能付き携帯電話機により撮影させた上,その動画データ4点を,同携帯電話機から前記「LINE」を用いて被告人使用のパーソナルコンピュータに送信させ,同日午前1時7分頃,自宅において,同動画データ4点を外付けハードディスクに記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第4)
第8 丙が18歳に満たない児童であることを知りながら,同月18日午後11時11分頃から同日午後11時26分頃までの間,自宅において,北海道内の丙方にいた丙と前記「LINE」のビデオ通話機能等を用いて通信中,丙に指示して,丙が使用するカメラ機能付き携帯電話機に内蔵されたカメラの前で,その陰茎を露出させた姿態をとらせ,その映像を被告人が使用するパーソナルコンピュータの画面に表示させた上,これを前記「Bandicam」を用いて録画し,同姿態に係る動画データ1点を作成した上,同月24日午後6時15分頃,自宅において,同動画データ1点を外付けハードディスクに記録して保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第5)
第9 同月18日午後11時50分頃,自宅において,丙に対し,児童(撮影当時14歳)を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録である動画データ1点を,前記「LINE」を用いて,被告人が使用する同パーソナルコンピュータから丙が使用する同携帯電話機に送信し,その頃,丙にこれを受信させ,もって電気通信回線を通じて児童ポルノを提供した。(令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第6)

(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段に,判示第2及び第4の各所為はいずれも刑法176条後段に,判示第3の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号に,判示第5,第7及び第8の各所為はいずれも同法7条4項,2項,2条3項3号に,判示第6及び第9の各所為はいずれも同法7条2項後段,前段,2条3項1号にそれぞれ該当するところ,判示第3及び第5ないし第9の各罪について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の全部の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付することとする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,①外国人男児1名に対し,陰茎を手淫するなどした強制わいせつの事実3件(判示第1,第2,第4)及びうち1件に係る性交類似行為を記録・保存した児童ポルノ製造の事実1件(同第3),②日本人男児2名に陰部を露出させた姿態を記録・保存した児童ポルノ製造の事実3件(同第5,第7,第8)並びに③児童ポルノ提供の事実2件(同第6,第9)からなる事案である。
(求刑・懲役4年)
  令和3年3月22日
    千葉地方裁判所刑事第4部
           裁判官  谷口吉伸