かすがい現象
裁判年月日 令和 3年 4月16日 裁判所名 岐阜地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(わ)527号
事件名 わいせつ略取,逮捕,強制性交等被告事件
文献番号 2021WLJPCA04166002
上記の者に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官髙橋葵,弁護人(私選,主任)庄司友哉各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役11年に処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
理由【罪となるべき事実】
被告人は,通行中のA(当時10歳●●●)及びB(当時10歳●●●)がいずれも13歳未満であることを知りながら,同人らと強制的に性交等をしようと考え,令和2年4月27日午後2時35分頃,岐阜県内において,同人らに対し,手に持った折りたたみナイフの刃を出して示し,「殺されたくなければこっちに来い。」「言うことを聞いてくれたらけがも何もない。」などと言って脅迫し,同人らを同所から約121メートル先の山林内の空き地に連行し,同所において,同人らの片手にそれぞれ手錠の片輪を掛けて互いを結束させるなどの暴行を加え,不法に逮捕するとともに,同人らを自己の支配下に置き,もってわいせつ目的で前記A及び前記Bを略取し,その頃から同日午後5時頃までの間,同所において,同人らの反抗を抑圧した上,着衣等を脱がせて全裸にさせ,順次,同人らの胸及び陰部を手で触り,なめるなどし,自己の陰茎を前記A及び前記Bの陰部に押しつけて挿入しようとするも,同人らの性器が未発達ゆえに性交するには至らず,同人らの口の中にそれぞれ自己の陰茎を挿入し,同人らと口腔性交した。
【法令の適用】
罰条 AとBに対する各逮捕の点はいずれも刑法220条,各わいせつ略取の点はいずれも同法225条,各強制性交等の点はいずれも同法177条
科刑上1罪の処理 刑法54条1項前段,後段,10条(Aに対する逮捕とわいせつ略取,Bに対する逮捕とわいせつ略取,AとBに対する各逮捕,AとBに対する各わいせつ略取は1個の行為が2個の罪名に触れる。AとBに対する各逮捕・わいせつ略取と強制性交等の間には手段結果の関係がある。結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いA又はBに対する強制性交等罪[AとBに対する各同罪の犯情に軽重はない]の刑で処断)
未決勾留日数の算入 刑法21条
【量刑の理由】
女児2名(いずれも当時10歳)に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交等である。公園で遊んでいた女児2名に対し,折りたたみナイフの刃を出して示すなどして脅し,人気のない空き地に連行して手錠をかけるなどし,略取,逮捕して行動の自由を奪った。そして,同人らを全裸にし,胸や陰部を触ったりなめたりした上,陰茎を陰部に押し付けて性交しようとしたが性交に至らず,口腔性交して陰部付近に精液をかけるなどした。2時間余にわたり,執ように種々性的暴行を加えた。さらに,被害状況を動画撮影し,犯行後他言したらネットに上げるなどと言って口止めした。誠に凶悪,卑劣な犯行である。性的自由侵害の程度は極めて強い。幼い女児に被らせた身体的・精神的苦痛は計り知れず,将来にわたる悪影響も懸念される。被害弁償や慰謝の措置は講じられていない。自己の性欲を満たすためにした誠に身勝手な犯行というほかない。あらかじめ折りたたみナイフ,手錠等を用意し,現場を下見し,標的とする女児を物色するなどして計画的に敢行した。厳しい非難が向けられるべきである。
。。。
本件の犯情は極めて悪く,強制性交等の事例の中で最も重い部類に位置付けられる。
(求刑 懲役14年)
岐阜地方裁判所刑事部
(裁判長裁判官 出口博章 裁判官 堀田喜公衣 裁判官 金子隼人)