児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

香川県青少年保護育成条例の「猥せつ」につき、法文にない「単に自己の性的欲望を満たす目的で,」を要件としているかのような裁判例(高松地裁r02.8.6)

「第3の1 令和元年11月22日午後4時19分頃から同日午後6時33分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首を舐めるなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし」という認定ですが、条例は

( 淫 行 又 は 猥 せ つ 行 為 等 の 禁 止 )
第 16条
1何 人 も 、 青 少 年 に 対 し 、 淫 行 又 は 猥 せ つ の 行 為 を し て は な ら な い 。

という法文なので、「単に自己の性的欲望を満たす目的」は明文にはありません。
 別件の高松高裁R03.3.2(上告中)では必ずしも不要とされています。
 最大判S60.10.23(福岡県青少年条例)に従えば必要説、最大判h29.11.29(強制わいせつ罪)に従えば不要説となるので難しいところです。

判例番号】 L07550667
       香川県青少年保護育成条例違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 高松地方裁判所判決/令和2年(わ)第108号、令和2年(わ)第135号
【判決日付】 令和2年8月6日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
       理   由

(罪となるべき事実)
第1(令和2年4月3日付け起訴状記載の公訴事実第1及び第2)
   被告人は,■■■(当時14歳。以下「A」という。)が18歳に満たない青少年ないし児童であることを知りながら
 1 令和元年7月13日午後2時10分頃から同日午後3時32分頃までの間,高松市(以下略)被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Aに対し,その陰部を触り,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,淫行及び猥せつの行為をし
 2 同日午後3時10分頃から同日午後3時32分頃までの間,同所において,Aに被告人の陰茎を口淫させる姿態,被告人がAの陰部を手指で触る姿態並びにAの乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ,これをスマートフォンで撮影し,その動画データ4点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録・保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第2(令和2年4月3日付け起訴状記載の公訴事実第3)
   被告人は,■■■(当時13歳。以下「B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で,別表記載のとおり,令和元年12月27日午前10時頃から令和2年1月19日午後6時頃までの間に,3回にわたり,前記被告人方において,Bに対し,その乳首及び陰部を舐め,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,淫行及び猥せつの行為をした。
第3(令和2年4月24日付け起訴状記載の公訴事実第1ないし第3)
   被告人は,■■■(当時15歳。以下「C」という。)が18歳に満たない青少年ないし児童であることを知りながら
 1 令和元年11月22日午後4時19分頃から同日午後6時33分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首を舐めるなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし
 2 令和2年2月8日午後3時4分頃から同日午後6時10分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首や陰部を舐め,同人の膣内に性的玩具を挿入するなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし
 3 同日午後5時2分頃から同日午後5時15分頃までの間に,同所において,Cにその乳房及び陰部を露出させる姿態並びに被告人がCの膣内に性的玩具を挿入する姿態をとらせ,これをスマートフォンで撮影し,その動画データ3点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録・保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1の1,第2の別表番号1ないし3,第3の1及び2の各所為
        いずれも香川県青少年保護育成条例22条,16条1項
 判示第1の2,第3の3の各所為
        いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(判示第1の2につき,同法2条3項1号ないし3号,判示第3の3につき,同法2条3項1号及び3号)
刑種の選択   いずれも懲役刑選択
併合罪の処理  刑法45条前段,47条本文,10条(罪及び犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予  刑法25条1項
保護観察    刑法25条の2第1項前段
(量刑の理由)
(求刑 懲役1年8月)
  令和2年8月6日
    高松地方裁判所刑事部
           裁判官  高橋貞幹