児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「製造の手口では、自らを撮影する「自撮り」の写真をメールで送らせる方法が最も多く、被害者は全体の約4割に当たる156人」なんだが、送った児童は、製造犯になったりならなかったり

 出会い系サイトの誘引行為は減っているようです。
https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/jidougyakutai_fukushihan_kenkyoH27_1.pdf
https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/jidougyakutai_fukushihan_kenkyoH27_1.xlsx

 この点についての判例は右往左往ですが、児童共犯説を大阪高裁H21が「弁護人独自の見解」と一蹴していたのが、神戸地裁H24や広島高裁H26が採用しています。

1 児童正犯説

神戸地裁h24
第1の1の罪に関する主位的訴因について
第1の1の罪の主位的訴因にかかる公訴事実においては被告人が単独で児童ポルノを製造したとされており この点 検察官は被告人が自らの携帯電話機に画像データが添付されたメールを受信してそのデータを保存した行為が児童ポルノ製造の実行行為であると主張する
しかし 当裁判所は、証拠上 被告人が製造行為を行ったとは認められず、 従って単独正犯としての被告人の罪責を問うことはできないと判断し、予備的訴因(被害児童との共同正犯)に基づき有罪と認定した
その理由は次の通りである
 本件のメールの受信については、関係証拠によっても、被告人がその受信の際、自己の携帯電話機を用いて何らかの具体的操作を行ったことを示唆する証拠はない。昨今の携帯電話機のメール機能では、サーバーから自動的に個々の携帯電話機にメールデータが保存される設定となっているのが通常であり(これは公知の事実である。)、被告人の携帯電話機も同様であったとうかがわれること(甲5)からすれば、 被害児童が当該画像データを添付したメールを被告人の携帯電話機宛てに送信したことにより その後 被告人において特段の操作を行うことなく サーバーを介して自動的に同携帯電話機かそのデータを受信し、メールに添付された画像データごと同携帯電話機に保存されたものと推認される
このように メールの受信が自動的に行われ 被告人の側で受信するメールを選別したり 受信するかどうかを決定することができない状態であったこを踏まえれば このような方法で行われるメールの受信(厳密にはメールデータの携帯電話への保存)をもって 被告人による製造行為ととらえることは困難というほかない
 以上の通り 被告人が児童ポルノの製造の実行行為を行ったとは認められず 主位的訴因については犯罪の成立を認めることができないと判断した(なお 付言すると 当時16歳という被害児童の年齢や 被告人は要求の際に欺罔・脅迫等の手段を用いて織らず、被害児童が被告人の要求に応じた主たる理由は被告人への好意にあったことなどすれば 本件については証拠上 間接正犯の成立も認めることができない)。

広島高裁H26.5.1
(1)原判決の認定
 原判決は,原判示第3事実として,要旨,「被告人は,B子(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成年月日,同女に乳房を露出した姿態をとらせ,これを同女のカメラ機能付き携帯電話機で撮影させた上,その画像データを被告人の携帯電話機に電子メール添付ファイルとして送信させ,同日,被告人方において,同画像データを同携帯電話機で受信し,記憶させて蔵置し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した」という事実を認定,摘示している。
・・・・・
なお,被告人の当審公判供述の趣旨等にも鑑み,職権で判断を加えると,原判決が認定,摘示した原判示第3の事実の内容は,前記(1)で摘示したとおりである。要するに,原判決は,B子の原判示の姿態を撮影して,その画像データを被告人の携帯電話機に送信し,その携帯電話機の記録媒体に蔵置させるに至らせるという,児童ポルノ製造の犯罪の主要な実行行為に当たるものを行ったのはB子自身であるという事実を摘示しているが,B子が共同正犯に当たるとは明示しておらず,被告人に関する法令の適用を示すに当たっても,刑法60条を特に摘示していない。他方,原判決は,本件について間接正犯の関係が成立するという事実を示しているものでもなく,本件の関係証拠に照らしても,間接正犯の成立をうかがわせる事実関係があるとは認め難い。しかし,原判決は,罪となるべき事実として,B子が上記の実行行為を自ら行ったという事実は摘示し,これらの行為は,被告人が,自らの意思を実現するため,B子との意思の連絡の下,B子に行わせたものであるという趣旨と解される事実関係を摘示しているものと理解することが可能であるし,かつ,そうした事実関係を前提に犯情評価等を行っていると見ることができることなどに照らすと,原判決が,被告人とB子との共謀の存在を明示せず,法令の適用に刑法60条を挙示していないことが,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認ないし法令適用の誤りに当たるとは,いまだいい難いと考えられる。)。

2 児童不可罰説

神戸地裁H27
事実認定の補足説明)
1(1)被告人は,判示第1の事実について,被害児童に対して平穏に頼んでいるから,「姿態をとらせ」「撮影させ」又は「送信させ」たとはいえない旨主張し,弁護人も同様の主張をした上,被害児童が正犯となり被告人にはその教唆犯が成立するか,被害児童と被告人との共同正犯が成立する(被害児童が児童ポルノ提供目的製造罪(平成26年法律第79号附則2条により同法律による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条2項)及び提供罪(同条1項)の正犯となり被告人にはそれらの教唆犯が成立するか,被害児童と被告人に製造罪(同条3項)の共同正犯が成立する)旨主張するので検討する。
(2)まず,本件時に被害児童と被告人との間で行われたゲームサイトのトーク履歴や被害児童の供述等の関係証拠により認められる両者間のやりとりなどをみれば,被告人の言動等により被害児童が本件姿態をとるなどしたことは明らかであり,判示第1のとおり,被害児童に「姿態をとらせ」「撮影させ」又は「送信させ」た事実が優に認められる。
また,本条は,児童ポルノを製造等する行為が児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為であり,流通の危険性を創出する(ないしは流通させる)点でも非難に値するものであることに鑑み,児童を保護するために規定されていることなどからすると,児童は基本的には被害者と考えるべきであるし,本件において,被害児童が本条の(共同)正犯に当たるとすべきほどの事情は認められない。
被告人のみ本条3項の正犯を成立させるのが相当である。

阪高裁H21.12.3
第3 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
 論旨は,本件については,①青少年健全育成条例23条2項の「わいせつな行為を教える」,又は同条1項の「わいせつな行為をし」に該当する条例違反の罪が成立するにすぎないのに,法7条3項の児童ポルノ製造罪の成立を認め,②(ア)被告人に,被害児童が正犯である法7条1項(提供罪)及び同条2項(提供目的製造罪)の教唆犯が成立し,同条3項の児童ポルノ製造罪に該当しないのに,同罪の正犯とし,(イ)仮に(ア)が認められないとしても,被害児童と被告人とは同条3項の児童ポルノ製造罪の共同正犯であるのに,被告人の単独犯とし,さらに,(ウ)被害児童の正犯性が否定されるとしても,被告人は教唆犯であるから共犯の従属性により不処罰であるのに,被告人を処罰した原判決には判決に影響することが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,①については,関係証拠によれば,原判示の犯罪事実を優に認めることができるから,本件について法7条3項の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである。
②については,同条各項の規定は,平成16年法律第106号による改正前の法に規定がなかったものであるが,旧法施行後の状況等にかんがみ,児童の権利の擁護を一層促進するため新たに犯罪化され,処罰の範囲が拡大されたものであるところ,対象となる行為は,いずれも法2条3項各号に掲げる児童の姿態を描写した児童ポルノを前提とするもので,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取・性的虐待行為にほかならず,しかも,不特定多数の者に対する提供(法7条4項)及びその目的での製造等(同条5項)の罪ではもとよりその流通が予定され,特定少数の者に対する提供(同条1項)及びその目的での製造等(同条2項)の罪では流通の危険性が大きく,他人に提供する目的を伴わない製造罪(同条3項)にあっては描写された児童の人権を直接侵害する行為であり,流通性は小さいものの,その危険性を創出するものであるから,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するごとになるため,児童を性的搾取・性的虐待の被害から擁護することを意図して上記各行為を処罰するものとしたのであって,当該児童は,原則的に,その被害者と位置付けられているというべきである。
そうすると,被告人が,携帯電話の下着売買募集のサイトで知り合った被害児童に対し,携帯電話のメールで,被害児童のポルノ画像を買い取る旨執ように働き掛けた上,指示して姿態をとらせた被害児童のポルノ画像を撮影・送信させて,自己の記録媒体に保存させたという本件について,(ア)の点は,被害児童が児童ポルノの提供(同条1項)及びその目的での製造(同条2項)の罪の正犯で,被告人はその教唆犯にすぎないとする点で,(イ)の点は,被害児童と被告人が他人に提供する目的を伴わない児童ポルノ製造罪(同条3項)の共同正犯であるとする点で、(ウ)の点は,被告人が教唆犯にすぎないという点で,いずれも誤っており,所論はいずれも採用することができない独自の見解というほかない。
 その他,所論が主張するところを検討しても,原判決には所論が指摘するような法令適用の誤りがあるとはいえない。

http://www.47news.jp/CN/201509/CN2015091001000920.html
児童ポルノ被害が最多 383人、4割「自撮り」
2015/09/10 10:27 【共同通信
 児童ポルノの製造、流通に絡み、全国の警察が今年1〜6月に831件(昨年同期比43件増)、659人(76人増)を摘発したことが10日、警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。被害者は383人(58人増)で、半期ベースでいずれも統計を取り始めた2000年以降、最多となった。
 製造の手口では、自らを撮影する「自撮り」の写真をメールで送らせる方法が最も多く、被害者は全体の約4割に当たる156人で、ほとんどが中高校生だった。このうち約9割は無料通信アプリLINE(ライン)など、コミュニティーサイトを利用していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150910-00000036-mai-soci
児童ポルノを製造する手段として最も多かったのは、子どもに自身の体を撮影させてメールで送信させる「自画撮り」と呼ばれる手口。この手口の被害者は156人(同28%増)に上り、8人が小学生、87人が中学生だった。「LINE(ライン)」などのサイトを通じて加害者と知り合った子どもは133人に上った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150910-00000036-jij-soci
捜査を通じて上半期に被害者と特定された子どもは58人増の383人で、統計を始めた2000年以降の最多を更新した。小学生以下が60人おり、最年少は生後8カ月の男児だった。
 被害者が自分で裸を撮影し、無料通信アプリLINE(ライン)やメールで送る「自画撮り」が156人に上り、34人増えた。買春や盗撮など他の手段と比べて突出し、全体の41%を占めた。中学生87人、高校生59人の順に多く、小学生も8人いた。133人がLINEを含む交流サイトを利用していた。
 ある女子中学生は「プリペイドカードをあげる」という約束を信じ、胸の画像を送信。「君のことが好きだ」と言われ、要求に応じた小学生女児もいた。送った画像をばらまくと脅され、さらに過激な画像を強要される被害も目立つという。
 警察庁の担当者は「一度応じると要求がエスカレートし、画像はマニアの間で拡散されてしまう」と指摘。「保護者は子どもの携帯電話の利用状況に関心を持ち、フィルタリング(閲覧制限)サービスを使ってほしい」と呼び掛けている