児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ストーカー罪の量刑

 ストーカー規制法には全く詳しくありませんので、問い合わせとか相談とか取材は固くお断りしているのですが、ストーカー罪は構成要件に「反復性」があるので、脅迫めいたことを反復しても一罪で、懲役6ヶ月になるというので、脅迫罪に比べるとかなり軽いと思っていました。しかも、数回の脅迫罪をかすがいすることもあって、脅迫罪の処断刑期を下げてしまう可能性もあります。
 なんか立法しておけという議員立法にありがちなもんだと思います。

刑法
第222条(脅迫) 
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
第223条(強要)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
・・・・
◎ストーカー行為等の規制等に関する法律
第2条(定義)
この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。
第13条(罰則)
トーカー行為をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第14条
禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第15条
前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140418/waf14041807000002-n1.htm
連絡を怠れば、怒鳴り声を上げて勤務先に電話してくる。メールの頻度は15分ごとに増えた。連絡を絶つと実家や祖母の入院先にまで押しかけてきた。

 限界を感じた21年10月、わらにもすがる思いで県の相談機関に連絡。一時保護施設(シェルター)にかくまわれた。女性の携帯電話に1週間で40回以上連絡してきた男は翌11月、ストーカー規制法違反容疑で逮捕された。

 安心したのもつかの間、3カ月後に下った判決は懲役6月、執行猶予5年。すぐに男は野に放たれた。

 予想を裏切る軽い罰則。迫り来る男の“影”への恐怖に身震いした。

軽犯罪法以上、刑法未満

 ストーカー規制法は、21歳の女子大生が元交際相手の男らが雇った男に殺害された埼玉県桶川市のストーカー殺人事件(11年)を受け、12年5月に議員立法で成立、11月に施行された。

 通常の罰則は懲役6月以下か50万円以下の罰金で、公安委員会の禁止命令に背いた場合は懲役1年以下か100万円以下の罰金。懲役刑でもほとんど執行猶予が付くのが実情だ。

 なぜ、罰則が軽いのか。

 被害者を街角で待ち伏せて見つめ続ける。ふられてもあきらめず、交際を迫る。こうした個々の行為は一般的に犯罪としてとらえにくく恋愛との線引きも難しい。だが、反復・継続すれば被害者の平穏な生活を害する犯罪となる。

 この場合、「拘留または科料」と罰則の軽い軽犯罪法で取り締まるだけでは不十分だ。一方、刑法で対処する脅迫などの事件や殺人などの凶悪事件に発展してからでは遅すぎる。
法案作成の中核を担った元警察庁キャリアの松村龍二参院議員は、専門家の間でストーカー事件は「軽犯罪法以上、刑法未満」といわれていたとし、「罰則案は法務省軽犯罪法を基準に出した」と明かす。罰則は軽犯罪法の延長線上に位置づけられていたのだ。

 松村氏によると、当時は警察が警告などで関与すれば大半のストーカー行為は収まると考え、規制を求める世論を受けて急ピッチで成立させたという。罰則の軽重は特に着目されず、国会審議でも警察権限の拡大などを懸念する声がわずかに上がるだけだった。

 悪質なストーカー殺人事件が相次ぎ、昨年6月に約13年ぶりに初めて実現した法改正でも、罰則が議論された形跡はない。

世界では拘禁10年以下も
 諸外国はどうなのか。
 米国では21歳の女優がストーカーに殺害されたことを機に1990(平成2)年、カリフォルニア州で初めての反ストーキング法が成立。94年までにほぼすべての州で成立した。
 世界のストーカー制度に詳しい常磐大大学院の諸沢英道教授(被害者学)によると、米国の罰則は州ごとに異なる。再犯を重ねると重くなるケースが多いが、最初から重犯罪として3〜5年以下の拘禁刑を科す州もある。オランダは拘禁7年以下、オーストラリアも州によっては拘禁10年以下だ。
 諸沢教授は「日本の罰則は軽すぎる。これでは実刑になりにくく、罪を犯すことへの恐怖も少ない。罰則に抑止力がなければ、犠牲になるのは被害者だ」と語り、こう提言する。「被害者を守る立場から法のあり方を考え直すべきだ」