児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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強制わいせつ罪と3項製造罪の罪数処理についての最高裁の態度

 広島高裁H22.1.26は併合罪説、広島高裁H23.5.26は観念的競合説で、H23のが上告されて棄却されています。判例違反として広島高裁H23とか東京高裁h19.11.6が主張されていると思われますが、「判例違反をいう点は,所論引用の各判例はいずれも事案を異にして本件に適切でなく」と判示されていますので、訴因上ダビングがあれば併合罪、撮影のみでとどまっていれば観念的競合というのが着地点ではないかと思います。

広島高裁H22.1.26
そこで,検討すると,(1)については,本件においては,被告人は,被害児童にその陰部を露出させる姿態をとらせるなどしてその姿態をデジタルビデオカメラで撮影しながら,被害児童の陰部を手指で弄び,舐め回すなどし,画像データをデジタルビデオカメラ内に設置されたDVD−RWに記憶させた上,その後,その画像データをパーソナルコンピュータ内蔵のハードディスクに記憶・蔵置させ,児童ポルノであるハードディスク1台を製造しているのであり,原判示第1のわいせつ行為と原判示第2の3項製造行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。なお,弁護人は,事実取調べの結果に基づく弁論において,被害児童に陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影する行為は,わいせつ行為であるとともに,3項製造罪の実行行為でもあり,とりわけ,撮影行為がなければ,その点の強制わいせつ罪も成立せず,3項製造罪も成立しないという表裏一体・不可分一体の関係にあり,1個の行為といわざるを得ず,また,社会的見解上1個か否かの判断において,3項製造罪の「姿態をとらせ」という行為も考慮に入れるのであれば,原判示第2の「上記のとおり,その陰部を露出させる姿態をとらせ」という3項製造罪に該当する事実も,原判示第1の「同女の陰部を手指で弄び,舐め回すなどし」という強制わいせつ罪の事実と重なり合うと評価されるべきことになり,この部分についても社会的見解上1個の行為と評価すべきであると主張する。しかし,被害児童に陰部を露出させる姿態をとらせてこれをデジタルビデオカメラで撮影する行為は,刑法176条後段に触れる行為であるとともに,児童ポルノ法7条3項に触れる行為でもあるが,社会的見解上,わいせつ行為に伴い,これを撮影するのが通常であるとはいえないことに加え,本件において,被告人は,原判示第1のとおり,被害児童の陰部を手指で弄び,舐め回すなどのわいせつ行為にも及んでいるところ,これらの行為は原判示第2の3項製造罪の実行行為ではなく,他方,原判示第2の児童ポルノであるハードディスク1台を製造した行為が,原判示第1のわいせつ行為と社会的,自然的事象として同一のものでないことも明らかであることからすると,両者が観念的競合の関係に立つということはできず,両者を併合罪として処理した原判決に法令適用の誤りはなく,もとより理由不備の違法もない。

TKC
広島高等裁判所平成23年5月26日
2 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
 論旨は,原判示第1の1ないし3の各強制わいせつ各児童ポルノ製造は,併合罪の関係にあるとするのが相当であるのに,それぞれ観念的競合として処断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,前記1(4)に説示したとおり,本件において,強制わいせつ罪に該当する行為は,被告人の盗撮行為であり,この盗撮行為によって児童ポルノが製造されており,各強制わいせつ行為と各児童ボルノ製造行為は,社会的見解上1個のものと見る以外になく,これをそれぞれ観念的競合の関係にあるとして処断した原判決に法令適用の誤りはない。

追記
でもね、当初、ダビングなしの製造罪と、触る・撮影の強制わいせつ罪(176条後段)を観念的競合で起訴して、次に、ダビングの製造罪(撮影の製造罪とは包括一罪)を訴因変更で加えた裁判例(大洲支部)があるんですが、なりゆきでそういうこともあるんでしょうが、それは訴因変更の時点では、併合罪になるんですかね。

広島高裁H22「被害児童に陰部を露出させる姿態をとらせてこれをデジタルビデオカメラで撮影する行為は,刑法176条後段に触れる行為であるとともに,児童ポルノ法7条3項に触れる行為でもあるが,社会的見解上,わいせつ行為に伴い,これを撮影するのが通常であるとはいえない」というのはとりつくろいの嘘でして、児童ポルノ製造罪以前から、裸にして触って撮るというのは1個のわいせつ行為とされていました。奥村が関係していない広島高裁H23でこっそり訂正しているわけです。こそこそしても、バレてるんだよ。