児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 女児を触って撮った行為のうち、触る行為を強制わいせつ罪で起訴して、撮影行為を児童ポルノ製造罪で起訴した場合には、両罪は併合罪になるという高裁判例
 結局、女児の撮影行為はわいせつ行為とは別個の行為だというのだから、わいせつ行為ではないことになります。
 でも、脱がして撮るだけの強制わいせつ罪だと、製造罪とは観念的競合になりやすいです。その場合は、撮影行為はわいせつ行為と一個の行為になります。
 難しい問題ですが、指摘しないと裁判例が集積しません。

高裁レベルで観念的競合になることもままあります。
仙台 高裁 H21.3.3
名古屋高裁H22.3.4
高松 高裁H22.9.7
広島 高裁H23.5.26
広島 高裁H23.12.21
大阪 高裁 H25.6.21
東京 高裁H30.1.30
高松高裁h26.6.3
高松 高裁 H30.6.7

裁判年月日 令和元年 8月20日 裁判所名 仙台高裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強姦未遂、強制性交等、強制わいせつ、強制性交等未遂被告事件
 2 法令適用の誤りの論旨について
 論旨は,要するに,原判決は,第3の強制わいせつ行為(平成29年4月8日,被害者Bに対するもの)と第4の児童ポルノ製造行為(同一日時場所,Bの姿態を撮影,保存したもの)との関係について,観念的競合による一罪ではなく,数罪であるとした。第5・第6,第7・第8,第9・第10,第11・第12,第13・第14,第15・第16,第17・第18,第21・第22,第23・第24,第25・第26の各関係についても同様である。強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,それぞれ行為の全部が完全に重なっており,いずれも観念的競合の関係にあると解すべきであるから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで検討すると,被害児の陰部等を手指で弄び,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどのわいせつ行為とそれらの行為等に係る被害児の姿態をスマホ等で撮影して保存する行為について,両者が同一の機会に行われ,時間と場所が重なり合うことがあったとしても,両者は通常伴う関係にあるとはいえないし,それぞれの行為の意味合いは相当異なり,社会通念上別個のものというべきであるから,両者は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 本件において,上記各罪の関係について,いずれも併合罪であるとした原判決の法令の適用は正当であり,論旨は理由がない。

裁判年月日 平成30年 7月25日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(う)179号
事件名 強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA07256006
第1 法令適用の誤りの主張について
 その骨子は,原判示第1の各強制わいせつと原判示第2の各児童ポルノ製造は,重なり合うものであり,社会的見解上1個の行為と評価すべきであるから,刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立つのに,刑法45条前段の併合罪の関係にあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというものである。
 しかし,本件のように幼児の陰部を触るなどのわいせつな行為をするとともに,その行為等を撮影して児童ポルノを製造した場合,わいせつな行為と児童ポルノを製造した行為とは,かなりの部分で重なり合っていることもあるが,通常伴う関係にあるとはいえない上,強制わいせつ罪では幼児の陰部を触るなどのわいせつな行為を行ったという側面から犯罪とされているのに対し,児童ポルノ製造罪ではそのような幼児の姿態を撮影して記録・保存する行為を行ったという側面から犯罪とされているのであって,それぞれの行為は社会的評価としても別個のものといえる。同趣旨の判断をして,原判示第1の各強制わいせつ罪とそれらの各犯行に対応する原判示第2の各児童ポルノ製造罪について,いずれも併合罪とした原判決の法令適用に誤りはない。

裁判年月日 平成30年 2月 8日 裁判所名 仙台高裁 裁判区分 判決
事件番号 平29(う)167号
事件名 強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA02086004
3 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,要するに,①同一の被害児童に対する2ないし3回の強制わいせつ罪を併合罪とする原判決は誤っており,包括一罪と解すべきである,②同一の被害児童に対する2ないし3回の児童ポルノ製造罪を併合罪とする原判決は誤っており,包括一罪と解すべきである,③同一機会に行われた強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を併合罪とする原判決は誤っており,観念的競合と解すべきである,したがって,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,①及び②については,被害児童が同じとはいえ,犯行日は短くても20日以上,長いと10か月以上も時期が離れていて機会を完全に異にしており,異なる機会ごとに新たな犯意が形成されたとみるべきものであるから,一罪として1回の処罰によるべき事案とはいえないのであって,包括一罪として評価するのは相当ではない。なお,②について,所論が指摘する裁判例は事案を異にし本件には適切ではない。③については,同一の被害児童に対する強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや両行為の性質等に鑑みると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,併合罪の関係に立つと解するのが相当である(最高裁平成21年10月21日決定参照)。

裁判年月日 平成28年10月27日 裁判所名 大阪高裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件
第4 法令適用の誤りをいう論旨(控訴趣意書の控訴理由第4)について
 1 論旨は,原判示第1の1の強制わいせつ罪と原判示第1の2の提供目的児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあると認められ,あるいは包括一罪として処理されるべきであるのに,両罪を併合罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
 2 そこで検討するに,原判示第1の1の強制わいせつ罪及び原判示第1の2の提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為の内容は,既に説示したとおりであるから,両行為には同時性が認められる。また,本件提供目的児童ポルノ製造罪における撮影行為は,本件強制わいせつ罪の訴因に含まれていないとはいえ,強制わいせつ罪のわいせつな行為と評価され得るものであるから,その意味では両行為には一部重なり合いもみられる。
 しかしながら,強制わいせつ罪における行為者の動態(第三者の目に見えるような身体の動静)は,被害者に対して本件において行われたようなわいせつな行為を行うことであるのに対し,児童ポルノ製造罪における行為者の動態は,児童ポルノ法2条3項各号に該当する児童の姿態を撮影,記録して児童ポルノを製造することであるから,両行為は,その性質が相当異なっており,社会的事実として強い一体性があるとはいえない。また,児童ポルノの複製行為も児童ポルノ製造罪を構成し得ることからすると,児童ポルノ製造罪が時間的な広がりをもって行われて,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠ける場合も想定される。さらに,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪とでは,それぞれを構成する行為が必然的あるいは通常伴う関係にあるとはいえず,それぞれ別個の意思の発現によって犯される罪であるとみることができる。以上によれば,行為の同時性や一部重なり合いの存在を考慮しても,強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪における行為者の動態は社会的見解上,別個のものと評価すべきであって,これを一個のものとみることはできない。
 本件強制わいせつ罪と本件提供目的児童ポルノ製造罪についても,上記のように考えるのが相当であるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,もとより罪質上,包括して一罪と評価すべきものともいえず,結局,両罪は併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 所論は,強制わいせつ罪のわいせつな行為には撮影行為が含まれることから,本件では行為の重なり合いがある上,被告人に性的意図はなく,金を得るという動機で一連の行為に及んだものであるから,別個の意思の発現とはいえず,行為の一体性が明らかであり,一個の犯意に包摂された一個の行為である,などと主張する。
 しかしながら,本件において,わいせつな行為の中核をなすものは,被告人が被害女児に被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害女児の陰部を触るなどした行為であるのに対し,児童ポルノを製造した行為の中核をなすものは,前記のような被害女児の姿態を撮影,記録した行為である。そうすると,本件強制わいせつ罪と本件提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為は,別個の行為とみるのが相当である。また,被告人が性的意図ではなく金を得るという動機で一連の行為に及んだことは,所論指摘のとおりである。しかしながら,そもそも強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪との罪数関係について,強制わいせつ罪における性的意図の有無により別異に解することは相当でない上,被告人には性的意図が認められないとはいえ,被告人は,被害女児の性的自由を客観的に侵害する行為を行う意思と,被害女児を描写した児童ポルノを製造する行為を行う意思を併存的に持ち,各意思を実現させるため,別個の意思の発現として性質が相当異なる各行為に及んだものと評価することができる。所論は採用の限りではない。