児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

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 こういう行為はプライバシーを侵害する行為で、世間で言う「名誉」を損なうことは間違いないと思うのですが、刑法の名誉毀損罪の成立には社会的評価を低下させるような事実を摘示することが要件なので、問題があります。
 名誉毀損罪を本来の守備範囲から膨らませて、プライバシーまで保護しようとしています。

判例コンメンタール刑法3巻P66
外部的名誉は、プライパシーとは異なる。プライパシーの概念については、様々な見解が示されているが、今日では、プライパシー権を、私的事項に係る情報コントロール権と捉え、当該情報を社会的評価から遮断させておく点にプライハシーの窓義があると捉える見解が有力である。この見解によれば、プライパシー侵害(私的な秘密の暴露)が、名誉に対する罪を直ちに構成することはないが、プライバシー侵害により、人の社会的な評価が侵害される場合には、名誉に対する罪が成立する。この意味で、プライハシーも、限定的ではあるが、名誉に対する罪によって保護されているのである。もっとも、私的な秘密の暴露により名誉毀損罪が成立する範囲については、学説上、議論がある。例えば、持病や血統、家系等、公にされていない事実を暴露することで名誉致損罪が成立するかにつき、通説はこれを肯定する(西田各論99)。しかし、外部的名誉は、「その人の責任において変更することのできる事実」に慕づいて成立するところの入に対する社会的評価に限定されるべきだとの説も、有力である。この見解によれば、持病、血統等を暴露しでも、名誉段損罪は成立しないことになる(佐伯・前出現代的展開77)。

 裸体を公開すれば、被害者に対する否定的評価が生じることは明らかだから、裸を公開したと摘示すれば社会的評価を減ずる事実の摘示として十分であるという判例がある。

阪高裁H20.10.29
名誉毀損,わいせつ図画公然陳列被告事件
第1 奥村主任弁護人の控訴趣意のうち,理由不備の主張(控訴理由第5)について
 論旨は,やや判然としないが,要するに,原判決は,名誉毀損に関わる事実として,被告人が被害者の裸体を撮影した画像を公開した旨を摘示しているが,その事実は被害者の社会的評価を下げるものではないのであるから,名誉毀損罪の事実摘示としては不十分であって,「真実は(被害者が)アダルトサイトに出演した事実はないのに」などの,事実と異なる表現により被害者の社会的評価を低下させる事実を摘示しなければならないのにもかかわらず,原判決の(犯罪事実)にはそのような事実が摘示されていないのであるから,原判決には理由不備の違法がある,旨いうものと解される。
 しかし,原判示の画像はその内容からして,被害者が自己の裸体をだれかに撮影させたものであることが明らかなものであるところ,原判決は,「」旨判示しているのであって,そのような被告人の行為によって,被害者が裸体等をだれかに撮影させ,さらにはホームページ上に公開させるような人物であるなどという,被害者に対する否定的評価が生じることは明らかであるから,原判示の(犯罪事実)には,名誉毀損罪の事実摘示として欠けるところはなく,原判決に理由不備の違法がないことは明らかである。
 論旨は理由がない。
第3 奥村主任弁護人の控訴趣意のうち,訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第3)について
 論旨は,これもやや判然としないが,要するに,本件公訴事実の名誉毀損に関する部分には,上記第1において主張したのと同様に,被害者の社会的評価を低下させる事実の記載がなく,本件公訴事実には,他人の名誉を毀損する事実に関する訴因の特定を欠いているのにもかかわらず,原審は実体判決を言い渡しているのであるから,このような原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある,旨いうものと解される。
 しかし,本件公訴事実は,被告人が被害者の裸体等を撮影した本件動画を公開したというものであって,そのような被告人の行為によって,被害者が自己の裸体等をだれかに撮影させ,さらにはホームページ上で公開させるような人物であるなどという,被害者に対する否定的評価が生じることは明らかであるから,本件公訴事実には,名誉を毀損する事実に関する訴因の特定に欠けるところは存しない。

http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/wakayama/101105/wky1011050310001-n1.htm
男子大学生、ブログに女性のわいせつ画像掲示 和歌山
2010.11.5 03:10
 和歌山東署は4日、名誉棄損の疑いで、容疑者(22)を逮捕した。同署によると容疑を認めているという。
 逮捕容疑は昨年8月25日〜今年6月4日の間に、当時交際中だった和歌山市の女性(28)のわいせつな画像を、計7回にわたって自身のブログに載せ、名誉を傷つけたとしている。
 同署は7月に女性から被害届を受け、調べていた。

http://www.wakayamashimpo.co.jp/news/10/11/101104_8737.html
2010年11月04日
[01.事件・事故]
元カノのわいせつ画像ブログにアップ
インターネットのブログに、当時交際していた女性のわいせつ画像を投稿したとして、和歌山東署は4日、容疑者(22)を名誉棄損の容疑で逮捕した。
同署によると、容疑者は平成21年8月25日から22年6月4日までの間に、自身のブログに、当時交際していた和歌山市内の無職の女性(28)の裸などを掲載したという。ことし7月に、女性が 「元彼のブログにわいせつな写真を載せられている」と同署へ相談した。