児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

名誉毀損に関わる事実として,被告人が被害者の陰部等を撮影した動画を公開した旨を摘示しているが,その事実は被害者の社会的評価を下げるものではないのであるから,名誉毀損罪の事実摘示としては不十分であって,「真実は(被害者が)アダルトビデオに出演した事実はないのに」などの,事実と異なる表現により被害者の社会的評価を低下させる事実を摘示しなければならないのにもかかわらず,原判決の(犯罪事実)にはそのような事実が摘示されていないのであるから,原判決には理由不備の違法があるという主張(大阪高裁H20.10.29)

 これは1項破棄で減軽されていますが、公開されていません。
 訴因特定とか罪となるべき事実の記載方法の問題です。

第1 主任弁護人の控訴趣意のうち,理由不備の主張(控訴理由第5)について
 論旨は,やや判然としないが,要するに,原判決は,名誉毀損に関わる事実として,被告人が被害者の陰部等を撮影した動画を公開した旨を摘示しているが,その事実は被害者の社会的評価を下げるものではないのであるから,名誉毀損罪の事実摘示としては不十分であって,「真実は(被害者が)アダルトビデオに出演した事実はないのに」などの,事実と異なる表現により被害者の社会的評価を低下させる事実を摘示しなければならないのにもかかわらず,原判決の(犯罪事実)にはそのような事実が摘示されていないのであるから,原判決には理由不備の違法がある,旨いうものと解される。
 しかし,原判示の「2」と題する動画データ(以下「本件動画」という)は,その内容からして,被害者が自己の裸体や陰部,性交類似行為等をだれかに撮影させたものであることが明らかなものであるところ,原判決は,「被告人は,かねてより,芸能人を目指していた「A」こと被害女性に対し芸能プロダクションの社長であるなどと虚言を述べ,これを信用した同女に対し,個人で楽しむものだから大丈夫などと述べて同女の陰部等を撮影録画する一方」と判示した上,被告人が,本件動画をインターネットを介してサーバーコンビューターの記憶装置である磁気ディスク内に記憶,蔵置させた上,インターネット上の動画配信サービスを利用して「公式ホームページ」と題するホームページ上で(正確には同ホームページからリンクされた別のホームページ上で)再生閲覧できるように設定して,同ホームページにアクセスした不特定多数のインターネット利用者がこれを再生閲覧することが可能な状況を設定した(以下「本件動画を公開すること」ないし「本件動画の公開」という)旨判示しているのであって,そのような被告人の行為によって,被害者が自己の裸体や陰部,性交類似行為等をだれかに撮影させ,さらにはホームページ上に公開させるような人物であるなどという,被害者に対する否定的評価が生じることは明らかであるから,原判示の(犯罪事実)には,名誉毀損罪の事実摘示として欠けるところはなく,原判決に理由不備の違法がないことは明らかである。
・・・
主任弁護人の控訴趣意のうち,法令適用の誤りの主張(控訴理由第6)について
 論旨は,要するに,被告人がした名誉毀損行為とされるものはプライバシー侵害にすぎないのであるから,これに対して名誉毀損罪の成立を認め,刑罰権を発動してまで表現行為を規制しようとするのは憲法21条に違反する,というのである。
 しかし,既に述べたとおり,被告人がした名誉毀損行為とされるものがプライバシー侵害にすぎないなどということができないことは明らかであるから,所論は前提を欠いており,採用の限りでない。
 論旨は理由がない。