協議会で、「芸術性・学術性(医学等)の児童裸体画像は、客体の要素として児童ポルノ該当性が否定されるのか、違法性阻却か」という質問
奥村としては、純粋医学写真が扇情的なポルノサイトに掲載された場合を考えると、児童ポルノ該当性を認めた上で、正当性(刑法35条)で違法性阻却されると考えています。
仙台高裁は反対。
仙台高裁(公刊物未掲載)H21.3.3
児童ポルノの定義規定である児童ポルノ法条項において,同項3号が「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激させるもの」と規定し「性欲を興奮させ又は刺激一部をするも,の」という要件を付加しているのは,衣服の全部又は着けない姿態を撮影したものの中には,家庭等における児童の日常生活の一場面を撮影したものや学術研究目的で撮影されたものも含まれるところ,これらについては社会的に是認されるものであることにかんがみ,これらを除外するためである。このような立法目的に徴すれば,同項号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは,その撮影目的や撮影された内容等に照らし,一般人を基準として,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるものと解すべきである。
そうすると,本件起訴にかかる画像は,いずれも被告人が自己の性的し好を満足させる目的で,被害児童の陰部を撮影したものであり,しかもそれは性器を接写するなどして,殊更これを強調する内容となっているから,一般人を基準として判断して,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるのであって「性欲を興奮させ又は刺激するもの」,に当たるものということができる。所論は「性欲を興奮させ又は刺激,するもの」という要件は,客体の要件であって,撮影目的を考慮するのは不当であるなどと主張するが,客体を定める要件であっても,考慮する要素を内容等の客観的要素に限定しなければならないわけではなく,撮影目的といつた主観的要素を考慮することもできるというべきである。
したがって,原判決に法令適用の誤りはない。
撮影目的を正当性ではなく児童ポルノ該当性に考慮すると、医学写真が児童ポルノサイトに貼られてもその写真だけ児童ポルノに該当しないことになったり、同じ構図の写真でも目的によって児童ポルノであったりなかったりするのを末端で判断させられることになるという問題があります。
ご苦労様ですが、これが判例です。