児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「子どもの写真、ネットに載せないで」=ポルノに転用、幼稚園に呼び掛け―警視庁

 「性欲を興奮させ又は刺激するもの」要件は、媒体とか額縁とかにも影響されますので、幼稚園の行事の写真や医療用の写真も、ポルノサイトに転載されると児童ポルノになったりします。仙台高裁の判例がある
 祭りの写真とかが愛好家に売買されています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120423-00000064-jij-soci
「子どもの写真、ネットに載せないで」=ポルノに転用、幼稚園に呼び掛け―警視庁
時事通信 4月23日(月)15時54分配信
 幼稚園の行事などで撮影した子どもの写真が、インターネットのブログなどを通じて児童ポルノ愛好家に狙われる恐れがあるとして、警視庁は23日、東京都内の行政担当者を集めた会議を開き、安易にネットに掲載しないよう注意を呼び掛けた。
 会議に出席したのは、幼稚園や保育園を監督する市や区の担当者で、警視庁の河合潔生活安全部長は冒頭で「善意の写真掲載が、被害に転じることもある。十分注意してほしい」と話した。 

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20120423-00000047-nnn-soci
警視庁によると、保育所や幼稚園がプールや身体測定などで裸の子供を撮影し、保護者向けにブログなどで公開した写真が児童ポルノ愛好者に悪用されたケースがあったという。

 ネットに流出した画像は消去が困難な他、最近は愛好者同士がパスワードをかけて画像をやりとりするケースも多く、摘発が難しくなっているとして、警視庁は警戒を強めている。

同庁によると、学校側が、ホームページで公開した学校行事の画像や、ブログに掲載した子供の画像が悪用され、
わいせつな児童ポルノ画像とともに流通する例が最近、目立つという。同庁幹部は担当者に対し、 子供の画像をネット上で公開する際には「身体測定」や「プール遊び」といったタイトルは使わないなど配慮をするよう要請した。

河合潔・同庁生活安全部長は「子供たちを守るためにも十分注意してほしい」と呼び掛けた。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120424-OYT1T00171.htm?from=main7


 3号ポルノの「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の判断基準は一般人でして、そういうものに敏感な人が多いというのが日本の一般人ですので、撮影者が意識して無くても、「児童ポルノ」になります。
 また、判例の考え方では、製造目的も考慮されるので、撮影段階では「性欲を興奮させ又は刺激するもの」が無くても、後日、編集等で「児童ポルノ」となることもあります。そういう意味では、親や幼稚園が無警戒に載せている写真は、児童ポルノの重要な供給源です。

仙台高裁H21.3.3
⑥被告人が撮影した各被害児童の陰部の画像は,児童に扇情的なポーズをとらせているわけではなく,児童ポルノ法2条3項3号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に該当しないから,児童ポルノ製造罪を適用した原判決には法令適用の誤りがある・・・などと主張する。
・・・

⑥については,児童ポルノの定義規定である児童ポルノ法2条3項において,同項3号が「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激させるもの」と規定し,「性欲を興奮させ又は刺激一部をするもの」という要件を付加しているのは,衣服の全部又は着けない姿態を撮影したものの中には,家庭等における児童の日常生活の一場面を撮影したものや学術研究目的で撮影されたものも含まれるところ,これらについては社会的に是認されるものであることにかんがみ,これらを除外するためである。このような立法目的に徴すれば,同項3号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは,その撮影目的や撮影された内容等に照らし,一般人を基準として,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるものと解すべきである。
そうすると,本件起訴にかかる画像は,いずれも被告人が自己の性的し好を満足させる目的で,被害児童の陰部を撮影したものであり,しかもそれは性器を接写するなどして,殊更これを強調する内容となっているから,一般人を基準として判断して,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるのであって,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるものということができる。所論は,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は,客体の要件であって,撮影目的を考慮するのは不当であるなどと主張するが,客体を定める要件であっても,考慮する要素を内容等の客観的要素に限定しなければならないわけではなく,撮影目的といつた主観的要素を考慮することもできるというべきである。したがって,原判決に法令適用の誤りはない。