これはだめですよ。児童ポルノ法では「特定電子計算機」なんて意味わからない。
しかも、児童ポルノや有体物なのに「画像を製造した」になっていて、だめだめです。
起訴状丸写しはだめだって研修所で習わないんですかね。
弁護人も意味不明なのに認めたらだめですよ。
被告人は、h21.3.26、28、30の3回 児童(16)方において、児童に乳房陰部を露出する姿態をとらせて児童のカメラ付き携帯電話を用いて、児童をして撮影させ、同携帯電話機から 甲会社が管理するアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバにメールに添付して送信させ 3回同所において 画像データを前記サーバに記憶蔵置させて、3号ポルノである3画像を製造したものである
不正アクセス行為の禁止等に関する法律
第2条(定義)
1 この法律において「アクセス管理者」とは、電気通信回線に接続している電子計算機(以下「特定電子計算機」という。)の利用(当該電気通信回線を通じて行うものに限る。以下「特定利用」という。)につき当該特定電子計算機の動作を管理する者をいう。
2 この法律において「識別符号」とは、特定電子計算機の特定利用をすることについて当該特定利用に係るアクセス管理者の許諾を得た者(以下「利用権者」という。)及び当該アクセス管理者(以下この項において「利用権者等」という。)に、当該アクセス管理者において当該利用権者等を他の利用権者等と区別して識別することができるように付される符号であって、次のいずれかに該当するもの又は次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたものをいう。
一 当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号
二 当該利用権者等の身体の全部若しくは一部の影像又は音声を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号
三 当該利用権者等の署名を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号
3 この法律において「アクセス制御機能」とは、特定電子計算機の特定利用を自動的に制御するために当該特定利用に係るアクセス管理者によって当該特定電子計算機又は当該特定電子計算機に電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機に付加されている機能であって、当該特定利用をしようとする者により当該機能を有する特定電子計算機に入力された符号が当該特定利用に係る識別符号(識別符号を用いて当該アクセス管理者の定める方法により作成される符号と当該識別符号の一部を組み合わせた符号を含む。次条第二項第一号及び第二号において同じ。)であることを確認して、当該特定利用の制限の全部又は一部を解除するものをいう。
研修720号のこの事案ですね。
7ヶ月後にDLしたんですが、送ってもらうために撮らせたのだとすると犯意については継続していると言えないこともないです。
でも、上述したように、不正アクセス罪の記載が混入している点と、データを児童ポルノとして記載している点で、控訴すれば破棄されたと思います。
こんなの悪い見本です。おかげで、以来、データを児童ポルノとする判決が散見されます。
星景子「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号に該当する姿態を児童自らに撮影させ、その画像を同児童の携帯メールに添付して・・・」研修 第720号
(1) Vlに係る児童ポルノ製造罪
被告人は,平成18年10月,V1(当時16歳の女児)が18歳未満の児童であることを知りながら,束京都内の児童の自宅において同児童をしてその乳房及び陰部等を露出させる等の姿態をとらせ、これを児童の携帯電話機のカメラにより静止画として撮影させ、その画像を携帯電話機からYプロハイダー会社が管理する特定電子計算機であるサーバーコンピューターに電子メール添付ファイルとして送信させた上平成19年5月神奈川県内の被告人方に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線を介して・前記パーソナルコンピューターに受信して記憶・蔵置させて,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であっで性欲を興奮又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データを製造した。(2)V2に係る児童ポルノ製造罪
平成19年6月 V2 (当時17歳の女児)が18歳未満の児童であることを知りながら,東京都内の児童の自宅において,児童をしてその乳房及び陰毛等を露出させる等の姿態をとらせ,これを同児童の携帯電話機のカメラにより静止画として撮影させた上その画像を同携帯電話機からYプロバイダー会社が管理する同都千代田区内に設置したアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバーコンピューターに電子メール添付ファイルとして送信させ,そのころ同所において,その画像データを前記コンピューターに受信して記憶・蔵置させて,衣服の全部又は一部を射すない児童の姿態であっで性欲を興奮又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データを製造し
このような訴因や犯罪事実の記載について東京高裁H20.9.18は訴因不明確だとしています。
東京高裁平成20年9月18日
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成20年2月29日地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成名義の控訴趣意書及び平成20年6月30日付け控訴趣意補充書(ただし,第1のみ)各記載のとおりであるから,これらを引用する。
第1 訴訟手続の法令違反(訴因不特定)の主張について
1 論旨は,要するに,原判決は,原判示第2の事実として,起訴状記載の公訴事実と全く同旨である,被告人が,平成年日,ホテルにおいて,当時17歳の女子児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,同日ころ,同市内の被告人方において,上記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造したとの事実を認定したが,上記公訴事実の記載は,訴因が不特定であって,刑訴法256条3項に違反し,公訴が無効であるにもかかわらず,公訴棄却の裁判をせず,原判示第2の事実を認定し有罪とした原審の措置には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
検討すると,起訴状記載の公訴事実につき訴因の明示に不備があったとしても,その公訴事実自体によって全く訴因が特定されているといえないような極限的な場合を除いては,直ちに当該起訴がその効力を失うものではなく,訴因の記載が明確でない場合には,裁判所は検察官に釈明を求め,それにもかかわらずなお不明確な場合にこそ,訴因不特定として公訴棄却すべきであると解されるところ,本件公訴事実は,犯行の主体・客体,目時・場所を特定していることはもとより,その方法についても「児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,(中略)上記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ」という程度には具体的に表示しているから,訴因不特定として公訴棄却すべき場合に当たらないことは明らかであり,所論は採ることができない。
2しかしながら,職権をもって調査すると,原判決には以下に説示するとおりの訴訟手続の法令違反があり,この点において破棄を免れない。
(1)原審記録及び当審における事実取調べの結果によれば,以下の事実が認められる。すなわち,
ア 被告人は,平成18年月日,市内のホテルにおいて,当時17歳の女子児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金4万円の対価を供与して同児童と性交し,もって児童買春した(原判示第1の事実)。
イ 上記児童買春の際に,被告人は,同ホテル内において,同児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをとらせ,これを所携のデジタルカメラで撮影し,上記姿態を同カメラ内蔵の記録媒体であるピクチャーカードに視覚により認識することができる方法により描写した。
ウ 次いで,被告人は,同日,同市内の被告人方において,上記デジタルカメラをパーソナルコンピューターに直接接続し,上記ピクチャーカードに記録した上記姿態に係る画像データを上記パーソナルコンピューター内蔵の記録媒体であるハードディスクに視覚により認識することができる方法により描写した。その上で,被告人は,上記ピクチャーカードに記録した上記姿態に係る画像データは消去した。
なお,その際,被告人は,上記ピクチャーカードに記録した画像データを,まず上記ハードディスクのCドライブのフォルダの1つであるデスクトップに作成したフォルダに複写したが,その後の平成19年月日には,上記ハードディスクのDドライブに作成したフォルダにそのデータをそのまま移動させた。
しかし,上記パーソナルコンピューターに内蔵されたハードディスクは,物理的に1台の装置であり,それを見掛け上(論理上)複数のドライブに分割して,Cドライブ,Dドライブとして使用していたにすぎないものであった。
エ 原判示第2の事実に係る起訴状には,被告人に対する公訴事実として,要旨「被告人は,平成18年,市内のホテルにおいて,当時17歳の女子児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童をして,その乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,同日ころ,同市内の被告人方において,前記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」との記載がなされ(以下,単に「本件公訴事実」という。),これに対する罪名及び罰条として,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反同法律第7条第3項・第1項,第2条第3項第2号・第3号」が挙げられている(以下,この項において,本件公訴事実に関する事件を「本件」という。)。
オ 原判決は,(罪となるべき事実)の項で,第2の事実として,本件公訴事実と同旨の事実を認定し,(法令の適用)の項で,罰条として,同法7条3項,1項,2条3項2号,3号を摘示し,刑種の選択以下の法令適用に及んでいる。
(2)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,この項において,単に「法」という。)にいう「児童ポルノ」とは,「写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」と定義されている(法2条3項)。
したがって,本件のような電磁的記録に係る事案において,児童ポルノとは,画像データ等の電磁的記録自体ではなく,当該電磁的記録に係る記録媒体(フロッピーディスク,CD−ROM,MOディスク,DVD,メモリーカード,ハードディスク等)を指すものといわなければならない(この点を指摘する所論は正当である。)。
(3)本件公訴事実は,上記(1)エのとおりの記載がなされ,罪名及び罰条の記載や公訴事実の記載全体の体裁からすれば,法7条3項の児童ポルノ製造罪に該当する事実が起訴されたものであると解されるところ,公訴事実中に,「もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」と記載されており,結論として電磁的記録である画像データ自体が児童ポルノに該当するとしているものと解さざるを得ず,これが上記(2)の法の解釈を誤解したことに基づく誤った記載であることは明らかである。そして,上記(1)ア〜ウの事実関係を前提とすると,本件において,製造行為の客体である児童ポルノに該当し得るものは,デジタルカメラに内蔵されたピクチャーカード,あるいはパーソナルコンピューターに内蔵されたハードディスクが考えられるところ,本件公訴事実中にはこれらが挙げられておらず,製造行為の客体である児童ポルノが明示されているとはいえない。
他方,本件公訴事実においては,製造行為の目時・場所については特定されており,その方法についても「児童をしてその乳房及び陰部を露出させるなどの姿態をとらせた上,これをデジタルカメラで撮影し,その画像データを記憶させ,(中略)前記画像データをパーソナルコンピューターに記憶,蔵置させ」という程度には記載がなされており,訴因としておよそ釈明の余地がないほど不明確なものとはいえず,訴因の補正又は変更により十分対処できる程度のものといい得るから,このような場合,原審としては,検察官に対し,本件公訴事実について釈明を求め,電磁的記録である画像データ自体を児童ポルノであるとする誤った記載は撤回削除させ,製造行為の客体である児童ポルノが何であるかについて明らかにさせるなど,訴因の記載を明確にさせた上で,審理すべきであったといわなければならない。
しかるに,原審は,そのような措置をとることなく,訴因不明確なまま審理を終結し,あまつさえ「もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態等であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ20画像を製造した」という本件公訴事実中の明確に誤った記載までそのまま漫然と踏襲して,上記(1)オのとおり事実を認定し,かつ,法令の適用をしているのであるから,原審の訴訟手続には法令の違反があり,これが判決に影響を及ぼすことが明らかである。
したがって,弁護人のその余の控訴趣意に対する判断をするまでもなく,原判決は破棄を免れない。
第2 破棄自判
この東京高裁判決はなかなか「研修」に取り上げられませんね。