児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪の罪となるべき事実に「姿態をとらせ」を書き忘れた理由不備の判決で実刑にしている事例

 形式ミスですが、控訴して指摘すれば、法定通算が稼げますので、弁護人は判決謄本を取って、チェックしてあげて下さい
 判例としては東京高裁H17.12.26とか名古屋高裁H23.5.11を挙げておけば十分です。
 知らぬが仏というわけですが、最近でも見かけます。実刑といっても2〜3年の刑期で、少なくともそのうちの4ヶ月を損しているわけで、大きいと思います。 
 弁護人が一手間かけるかどうかでだいぶ刑期が変わります。

横浜 地裁 H17 実刑
神戸 地裁 尼崎 H17 実刑
新潟 地裁 H18 実刑
松山 地裁 西条 H18 実刑
松山 地裁 西条 H17 実刑
新潟 地裁 H18 実刑
横浜 地裁 川崎 H18 実刑
横浜 地裁 小田原 H19 実刑
長崎 地裁 H23 実刑
名古屋 地裁 H23 実刑
秋田 地裁 横手 H17 実刑
広島 地裁 尾道 H23 実刑
札幌 地裁 H23 実刑

 四日市支部の判決を弁護人からもらいましたので、正誤表を作ってみました。

誤(理由不備)
罪となるべき事実
第1 平成年月日午前時分ころから同日午後時分ころまでの間,三重県所在のホテル号室において,上記児童に対し,現金15000円を対償として供与する約束をして上記児童と性交し,児童買春をした。
第2 上記日時・場所において上記児童との性交場面等をデジタルビデオカメラで撮影してMiniDV (津地方検察庁四日市支部平成22年領第335号符号2)に保存するとともに,携帯電話で撮影してマイクロSDカード(同号符号18)に保存し,上記児童に係る児童ポルノを製造した。

↓↓

(罪となるべき事実)
第1 省略
第2 上記日時場所において,上記児童をして,同児童を相手方とする性交に係る姿態をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影して,その姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるMiniDV(津地方検察庁四日市支部平成22年領第335号符号2)に描写するとともに,携帯電話機に内蔵されたビデオカメラで撮影して,その姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに描写し,もって同児童に係る児童ポルノを製造した。

東京高等裁判所平成17年12月26日
 三 訴因が不特定であるとして訴訟手続の法令違反をいう論旨(控訴理由第九)及び罪となるべき事実が法七条三項の製造罪の構成要件をみたさないとして法令適用の誤り、訴訟手続の法令違反をいう論旨について(控訴理由第一〇)
 その論旨は、要するに、起訴状の公訴事実には「姿態をとらせ」と記載されていないのであって、本件公訴は訴因不特定の違法があるにもかかわらず、公訴を棄却することなく実体判断をした原判決には訴訟手続の法令違反があるというのである。確かに、起訴状の公訴事実には、「(被害児童)を相手方とする性交に係る同児童の姿態等を撮影し」と記載するにとどまり、「姿態をとらせ」と明記されていないことは所論指摘のとおりである。しかしながら、起訴状の公訴事実は、別紙一覧表によって、被害児童の姿態の内容を明記して特定している上、罰条として、法七条三項、一項及び法二条三項各号を明示して特定しているのであるから、訴因が不特定であるとまではいえない。また、公訴事実のかかる記載の不備は、被告人の防御に実質的な不利益を与えなかったものと認められるから、その不備を是正させなかった裁判所の手続上の瑕疵が直ちに判決に影響を及ぼすものとまでは認められない。この点の所論は採用できない。
 さらに、所論は、原判決が認定した「犯罪事実」には、「姿態をとらせ」と記載されておらず、犯罪を構成しないにもかかわらず有罪とした原判決には法令適用の誤り、訴訟手続の法令違反があるというのである。
 そこで原判決の説示内容を検討するに、原判決が、その「犯罪事実」の項において、「被告人は、別紙一覧表記載のとおり、……、携帯電話機附属のカメラを使用して、児童である……を相手方とする性交に係る同児童の姿態等を撮影し、その姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるフラッシュメモリ一個に描写し、もって、同児童に係る児童ポルノを製造した。」と認定し、その別紙一覧表において、児童ポルノの種類として法二条三項各号に該当する姿態の内容を明記し、「法令適用」の項においては、別紙一覧表の各行為について、法七条三項、一項及び二条三項各号を適用していることからすれば、原判決の判断は、被告人の各行為について法七条三項の児童ポルノ製造罪が成立するものと認定する趣旨ないし意図であることは明らかである。しかしながら、法七条三項は、「児童に第二条三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者」とし、「児童に姿態をとらせ」という行為をその犯罪構成要件として規定していることは明らかである。児童に姿態をとらせる行為が他の不可罰的な行為とを画する重要な行為要素であることなどにかんがみれば、原判決には罪となるべき事実の記載に理由の不備があるというほかはない。訴因の記載上の不備と異なり、判決のこのような理由上の不備を見過ごすことはできない。したがって、その余の控訴趣意に対して判断をするまでもなく、原判決はこの点において破棄を免れない。
第二 破棄自判
 よって、刑訴法三九七条一項、三七八条四号により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書により、当審において被告事件につき更に次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、別紙一覧表記載のとおり、平成一六年一二月二日から平成一七年二月一七日までの間、前後六回にわたり、静岡県浜松市大瀬町《番地略》所在のB方において、携帯電話機に装着されたカメラを使用し、児童であるC子(《生年月日略》、当時一五歳)をして同表「児童ポルノの種類」欄記載の各姿態をとらせた上、これを撮影して、それら姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるフラッシュメモリ一個に描写し、もって、同児童に係る児童ポルノを製造したものである。

名古屋高等裁判所平成23年5月11日
1 控訴趣意中原判示第2の事実に関する不法な公訴受理及び理由不備の論旨等について
 論旨は,原判示第2の事実に関し,起訴状の公訴事実第2には,被告人が児童との性交場面等を撮影して保存したと記載されているのみで,被告人が児童に性交に係る「姿態をとらせ」とは記載されておらず,起訴状に記載された事実が罪となるべき事実を包含していない(刑訴法339条1項2号)にもかかわらず,原審は公訴棄却の決定をせず不法に公訴を受理した,また,原判決の犯罪事実第2にも,児童に性交に係る「姿態をとらせ」との摘示がないから,理由不備の違法がある,というのである。
・・・
 次に,理由不備の点について検討すると,法7条3項は児童に法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせる行為を構成要件として規定しており,この行為は児童ポルノ製造行為と他の不可罰的な行為とを画する重要な要素となるものであるから,児童ポルノ製造罪については,これを罪となるべき事実として摘示する必要があるというべきである。これを本件についてみると,原判決の犯罪事実第2は,被告人は,被害児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,「上記児童との性交場面等をデジタルビデオカメラで撮影してMiniDVに保存するとともに,携帯電話で撮影してマイクロSDカードに保存し,上記児童に係る児童ポルノを製造した」というものであるが,これをもって児童に性交に係る姿態をとらせる行為を摘示したものとみることはできない。そうすると,原判決には,原判示第2の事実に関し,罪となるべき事実の記載に理由の不備があるといわざるを得ず,論旨は理由がある。そして,原判決は,原判示第1の児童買春罪と上記の児童ポルノ製造罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるとして,1個の刑を科しているものであるから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,全部破棄を免れない。
2 破棄自判
 よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)
 原判決の犯罪事実第2を「上記日時場所において,上記児童をして,同児童を相手方とする性交に係る姿態をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影して,その姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるMiniDV(津地方検察庁四日市支部平成22年領第335号符号2)に描写するとともに,携帯電話機に内蔵されたビデオカメラで撮影して,その姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに描写し,もって同児童に係る児童ポルノを製造した。」と改めるほかは,原判決の犯罪事実に記載のとおりである。