児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

無断リンクは不正競争防止法違反だという見解

 不正競争防止法の混同惹起行為を警戒してるんでしょうね。

ttp://www.hokkokubank.co.jp/other/goriyou.html
3. リンクについて
(1) 当ホームページへのリンクを希望される場合は、下記連絡先までお申し出ください。なお、当ホームページに無断でリンクすることは不正競争防止法違反になりますので、ご注意ください。
連絡先:株式会社北國銀行 企画部調査広報課 TEL(代表)(076)263‐1111
(2) (2) リンク先として設定するURLは、http://www.hokkokubank.co.jp/とします。これら以外の下層ページに直接リンクを設定することはご遠慮ください。
(3) 当行のロゴマークなどをリンクボタンとして使用することはできませんのでご注意ください。「株式会社北國銀行」「北國銀行」等の文字列からリンクするようお願いします。
(4) 当ホームページをリンク先に設定したこと、またはそれに関連したことから、貴社または貴殿と第三者との間に何らかの紛争が生じた場合でも、当行は損害賠償等の義務・責任を負いませんのでご了承ください。
(5) 以下のようなリンクは固くお断りします。
① 当ホームページがリンク元のホームページの一部として表示されるなど、フレームやその他の方式で当行のコンテンツであることが不明確になるリンク。
② 当行やその商品・サービスを誹謗、中傷する内容を含むサイト、または同様の目的を持つ可能性のあるサイトからのリンク。
③ 違法のおそれ、または公序良俗に反するサイトからのリンク。
④ 当行の社会的信用を毀損し、または当行に経済的損失が生ずるおそれのあるサイトからのリンク。
⑤ 当行と特別な関係にあるかのように見せかけたり、またリンク自体をセールスポイントとして営利の対象にする場合のリンク。

電子商取引等に関する準則
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/060201.pdf
【6】 他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点
【論点】
無断で、他人のホームページにリンクを張る場合、リンクを張った者は、法的責任を負うことがあるか。

(例)
1.
わいせつな画像等をアップしているアダルトサイト運営者が、当該サイトのメンバーであるなどとして、女性の主催する店舗や個人等のホームページのフロントページに、無断でリンクを張る場合
2.
暴力団が、自分の組の企業舎弟であるなどとして、善良な企業のホームページに無断でリンクを張る場合
3.
自己のホームページを有名な大手企業の関連会社のページであるとの誤解を与えて利益を得ようと考えて、大手企業のホームページへ(「関連企業情報はこちら」等といった誤解を誘うような方法で)無断でリンクを張る場合
4.
企業のホームページのロゴマークに、インラインリンクの態様でイメージリンクを張って、自らのホームページが当該企業と関連する企業であるかのように、その商品又は役務について使用する場合


1.考え方
インターネット上において、会員等に限定することなく、無償で公開した情報を第三者が利用することは、著作権等の権利の侵害にならない限り、原則、自由であるが、リンク先の情報を鄯)不正に自らの利益を図る目的により利用した場合、又は鄱)リンク先に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のある場合に、不法行為責任が問われる可能性がある。

2.説明
(1)ウェブページが表示される基本的な仕組み
まず、説明の前提として、WWW を通じたウェブページの閲覧の意味を検討する。一般に、各ウェブページは、画像(gif ファイルやjpg ファイル等)を含む、複数のファイルによって構成されており、
これらのファイルは、html ファイルに記述されたレイアウトに従って、各端末のディスプレー上に表示されることになる。あるウェブサイト中の特定のウェブページにアクセスして、そのウェブページを閲覧する場合、当該ウェブページを構成するファイルは、順次、ウェブサイトからインターネットを経由して、当該ウェブページを閲覧しようとしているユーザーの端末へ送信され、当該端末の記録媒体に複製されることになる。そして、当該端末の記録媒体に複製されたファイルのうち、まずhtml ファイルが読み出され、そのhtml ファイルの記述に従って、そのウェブページを構成する各ファイルが順次展開されて、ディスプレー上の所定の位置に、所定の大きさで、各ファイルに収録された画像等のコンテンツが表示され、このようなプロセスを経て、ウェブページが再現されることになる。そうした方法によって、各端末のディスプレー上に、複数のファイルによって構成されるウェブページが再現されることになる。

それでは、次に、上記の点を前提として、「リンクを張る」ことの意味を検討するに、他者のウェブページにリンクを張る者は、リンク先のウェブページの所在を示すURL を、リンク元のウェブページを構成するhtmlファイルに書き込むだけであって、リンク先のウェブページや画像等のコンテンツを、自ら送信したり、複製しているわけではない。リンク先のURL が記述されたhtml ファイルが、リンク元のウェブページから送信されるように設定し、ユーザーの端末へリンク先の所定のファイルが送信され、ユーザーの端末上で当該ファイルが複製されるようにしているだけなのである。
もっとも、リンク先のウェブページを表示するために、ユーザーが、リンクボタンをクリックする等の行為を行うことが必要となる場合と、ユーザーの特段の行為を要せずに、自動的にリンク先のコンテンツがリンク元のコンテンツとともに、表示される場合とでは、その意味合いが異なってくる可能性もある。そこで、本論点を検討する際には、リンクを通じた、リンク先のコンテンツの送信及び複製の意味合いを、整理、分析する必要がある。

(2)リンクの態様について
リンクの態様にも様々な方式があり、本論点中の各用語は、以下の意味を有するものとする。
AB
サーフェスリンク
ディープリンク
サーフェスリンク」とは、他のウェブサイトのトップページに通常の方式で設定されたリンクをいうものとする。なお、本論点において、「通常の方式で設定されたリンク」とは、ユーザーがリン
ク元に表示されたURL をクリックする等の行為を行うことによってリンク先と接続し、リンク先と接続することによってリンク元との接続が切断される場合のリンクをいうものとする。

ディープリンク」とは、他のウェブサイトのウェブページのトップページではなく、下の階層のウェブページに通常の方式で設定されたリンクをいうものとする。

イメージリンク
インラインリン
AB
画像へのリンク
画像ファイル
HTMLファイル
画像へのリンク
「イメージリンク」とは、他のウェブサイト中の特定の画像についてのみ設定されたリンクをいう
ものとする。

「インラインリンク」とは、ユーザーの操作を介することなく、リンク元のウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの
端末に送信されて、リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいうものとする。

(3)不法行為等に基づく責任
リンクを張る際に、リンク先とリンク元の関係等が誤認され、リンク先のホームページ開設者の名誉が毀損されたり、信用が毀損されたりする等、何らかの損害が発生した場合、(刑法上の信用毀損
罪、名誉毀損罪が成立する可能性もあるほか、)民法上の不法行為責任が生じる可能性がある。これらの事例は、リンク特有の問題というよりも、リンクという手段を用いて、違法行為が実行される
場合に他ならず、リンクを張った者の責任の有無を判断するに際しては、関連する法令の解釈に従って判断すべきことになる。

インターネット上において、会員等に限定することなく、無償で公開した情報を第三者が利用することは、著作権等の権利の侵害にならない限り、本来自由である。しかし、リンク先の情報を鄯)不正に自らの利益を図る目的により利用した場合、又は鄱)リンク先に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のある場合に、不法行為責任が問われる可能性がある。

つぎに、リンクを張ることによって、商品等表示に関して、不正競争防止法に定める不正競争行為14が生じる場合があるかを検討する。
まず、サーフェスリンクやディープリンクのような通常の方式のリンクを張る場合には、ユーザーの行為を介さないとリンク先の情報が表示されないから、他人の商品等表示の使用といえるかどうか、また、それを自己の商品等表示として使用しているといえるかどうかを考えると、こうした行為が不正競争行為に該当する可能性は極めて低いと考えられる。

一方、インラインリンクの方式でリンクを張る行為については、リンク先の商品等表示を、リンク元の営業とリンク先の営業とを誤認混同させるように使用した場合や、著名な商品等表示を自己の商品等表示として使用した場合には、不正競争行為に該当する可能性がある。
つぎに、商標法について検討すると、サーフェスリンクやディープリンクのような通常の方式のリンクを張る行為自体は、他人の商標を、出所表示として使用する行為に当たらない場合が多いことから、原則として商標権侵害にはならないと考えられる。

ただし、こうした方式のリンクであっても、リンクを張る際に、例えばリンクボタンなどにリンク先の企業の商標を無断で使用している場合には、リンクを張る行為自体ではなく、当該商標の使用について、その使用態様によっては商標権侵害の問題が発生する可能性があるから、注意する必要がある。

(4)具体的検討
例1、例2の場合は、リンクという手段を用いて、リンク先の名誉や信用を毀損する行為と解され、不法行為と認定される可能性が考えられる。
例3の場合には、リンク元のウェブページに、リンク先の企業を特定する名称等が表示されるものと考えられるが、これらの表示は、リンク先と関連会社であるとの誤解を与えて不正の利益を得、又はリンク先に損害を被らせる蓋然性の高い場合には、不法行為責任が問題となる可能性があると考えられる。

例4は、リンク先のロゴマークなどにのみインラインリンクを張る場合であり、リンク先の「商品等表示」のみがリンク元において表示されることになる。このため、ロゴマークを、リンク先の企業の関連会社であるかのような誤認混同を招くようなかたちで使用する場合や、自分の企業のロゴマークとして使用する場合には、不正競争行為に該当する可能性があると考えられる。

また、当該ロゴマークが他人の登録商標である場合、自らのホームページ上で、当該登録商標をその指定商品又は指定役務について使用すると、その使用態様によっては、商標権侵害となる場合がある。

14 不正競争防止法により、需要者の間に広く認識されている他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。)と同一又は類似した表示を使用して営業活動等を行い、その他人の営業であるか、又はその他人の営業等と何らかの関係があるかのような誤認混同を生じさせる行為は、不正競争行為になる(不正競争防止法第2条第1項第1号)。また他人の商品等表示が著名である場合には、誤認・混同を生じさせなくても、自己の商品等表示として使用した場合には不正競争行為になる(不正競争防止法第2条第1項第2号)。

(5)その他
なお、「無断リンク厳禁」という趣旨の記載がなされていたとしても、リンクを張られる行為によってリンク先のホームページ開設者に何らの損害が発生しない場合には、損害賠償請求権は成立しない。ただし、「損害」には経済的損害だけでなく精神的損害も当然含まれており、経済的損害が生じていない場合にも、精神的損害が生じている場合があることに注意が必要である。
もっとも、「無断リンク厳禁」という趣旨の記載がある場合には、ホームページ開設者がリンクされることを望んでいないことを明確に表明していることを意味するので、不法行為の成否を判断する際の事情の一つとして考慮されることになると思われる。

上記のように、「無断リンク厳禁」という趣旨の記載があるか否かによって、法的な取扱いが決定的に異なることになるわけではない。しかしながら、リンクの法的な意義については、必ずしも明確な理論が確立しているわけではなく、無断リンクを巡って、様々な紛争が生じている現状を考慮すると、「無断リンク厳禁」と明示されているウェブページにリンクを張る場合には、十分な注意が必要である。