「拙稿」ってやつです。
草稿は公開済です。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050427/1114570028
判決批判のところまではスパスパ書けたんですが、「一部没収」というのは実際動かしてみないとわからない点があります。
ということで、叩き台にでもしてください。体系持ってる学者じゃないので、平気です。
実は、弁護人が他人のデータが没収されたことに気付くまでの裏話(macな証拠物の閲覧・謄写)の方がおもしろいと思いますが、お話しできません。
また、東京高裁平成15年6月4日の当該判示部分のみ引用していますが、全部は紹介していません。判決速報(東京高裁判例速報3202号)には、別の部分が紹介されています。
電子媒体上の「他人の」電磁的記録の没収について
東京高裁平成15年6月4日の事例を基に−
奥 村 徹
Ⅰ事 件
Ⅱ背景
Ⅲ大法廷判決昭和37年11月28日の射程範囲
Ⅳ私 見
Ⅴ現在の実務とその問題点
Ⅵ最近の議論と改正動向
Ⅶ改正案の課題
事件の方は、上告中なんで、最高裁に「拙稿」を届けることになります。
刑法雑誌の論文も弁護人の主張と同旨である
って。
なお、わからないから割愛した問題点としては、データの支配権の法的性格の問題があります。
他人にデータを預けた場合の、データ主の支配権については、
物権的構成(データを自由に使用収益処分できる。データ主にデータの所有権がある)
債権的構成(データ保管者に対して寄託の趣旨に反する行為を禁止する請求ができるにすぎない。データの所有権は保管者にある)
があるところ、東京高裁平成15年6月4日は債権的構成を取っています。
東京高裁平成15年6月4日
所論のとおり,本件MOには,ホームページのバックアップデータと推認されるファイルも記録されているが,本件MOが没収されることによって被告人の請負ったホームページの作成,管理が不可能になったとしても,被告人が債務不履行贅任を負い,発注者が,被告人や第三者に対し本件MOに保存されている発注者が提供したファイルを無断で使用しないよう請求することはできても,本件MO自体は被告人の所有物であり,発注者等が本件MOについて物権的な権利を有しているとは認められない。また,没収は,物の所有権を観念的に国家に帰属させる処分にすぎず,帰属した物の処分は別個の問題である。仮に国に帰属した後に,国が本件MOを発注者等の権利を審するような使用や処分をしようとした場合には,その行為の差し止めやファイルの複写,消去などを求め得る可能性はあるとしても,そのような可能性があることは没収の言い渡しを何ら妨げるものではない。