児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

0.3%の違法画像でHDD全部没収(大阪地裁h18)

 児童ポルノ提供目的所持罪・わいせつ物販売目的所持について、違法なのは1個(765MB)なのに25OGBHDDを全部没収するという判決が出ています(大阪地裁h18)。
0.3%の違法で全部没収。
 媒体上に他人のデータがある場合に第三者没収の規定は適用されないし(最高裁h18)、ちょっとでも違法でも全部没収してしまうし、ということで、えらいことです。

没収 
刑法19条1項1号,2項本文(判示3の各ハードディスクドライブ4台はいずれもわいせつ図画販売目的所持罪の犯行を組成した物で被告人の所有するもの〔複製中の犯行であるため,その後にコピーされた動画ファイルも含めて全体を没収することの是非が問題となり得るが,ハードディスクはそれ自体で1個の完結した記憶装置であって,その中の一部の電磁的記録を物理的に峻別して特定することは極めて困難である上,そもそも刑法は,有体物でない電磁的記録の一部を除いて没収することを予定していないと解されるから,上記ハードディスクとそのドライブ(もとよりこれらは一体のものである。)全体を1個のわいせつ物とみて没収することに格別の支障はないと解される。〕)

 しかし、今回わいせつ図画と認定されたのはファイルサイズ765mbであって、250GBという全体の容量からすればわずか0.3%(1000分の3)である。99.7%については違法の認定がない。
 1000分の3の違法データを没収するのに、残り99.7%の違法と認定されていないファイルやHDD本体まで没収するのは、被告人の財産権を不当に侵害するものであり、憲法29条1項に違反する。
 また、仮に没収が適法だとしても、1000分の3の違法データを没収するのに、残り99.7%の違法と認定されていないファイルやHDD本体まで没収するのは、量刑の問題としても不当である。

違法データの没収方法について
 これは、同じ媒体上の合法データ・第三者のデータ・媒体そのものの財産的価値を保全しながら、没収の目的を達成するという合目的的解釈で解決できる。

 今日では、電子媒体が登場し、媒体が安価であるために、生媒体(FD、HDD、MO)よりも、電磁的記録の価値の方がはるかに大きいことが通常である。
 同時に、電磁的記録の価値(データの重要性)は、伝統的な紙媒体と比較して、勝るとも劣らない。今日、研究データやコンピュータソフトも電磁的記録という存在形式でしか存在しないのが通常であり、オンラインストレージされている研究データや開発中のソフトが同一サーバーに保存されていた児童ポルノと一緒に没収された場合の第三者の損害は計り知れない。他人の電磁的記録は、すでに電子計算機損壊等業務妨害罪によって刑法的にも保護されている。
 また、他人の媒体の上に保管された電磁的記録に対する物権的支配権(自由に使用・収益・処分できる権能)も観念できる。
 さらに、その権限を物権というかどうかは別として。合法的データと媒体そのものが財産権として憲法上の保障を受けることは間違いない。
 これらの要請を充たすには、一部消去という執行方法がもっとも妥当である。

3 一部消去という執行方法の可能性
 本件で没収対象とされたファイルの媒体はいずれも大容量のHDDであり、消去可能である。
 通常、没収されない場合には、違法ファイルのみを消去して還付されているのである。これは研修613号でも説明されている。

 さらに、物理的に見ても、刑訴法の没収の執行方法としても、一部消去が可能であるとされている。没収を執行している検察官がこういうのであるから、可能なのである。
研修613「磁気ディスクの偽造データの入ったファイルの処分について」問題となった事例 
 この点において原判決の

その後にコピーされた動画ファイルも含めて全体を没収することの是非が問題となり得るが,ハードディスクはそれ自体で1個の完結した記憶装置であって,その中の一部の電磁的記録を物理的に峻別して特定することは極めて困難である上,そもそも刑法は,有体物でない電磁的記録の一部を除いて没収することを予定していない

という判示は、あたかも、ファイルの特定・消去が不可能であるから一部消去という方法では没収できないとしているが、HDDの地図上でデータを特定できなくても、データを保存・再生・消去できるのは、今や常識であって、原判決は前提を誤っている点で失当である。原判決の上記判示は理由がないから、全体を没収することは許されない。

 また、現行法は物の一部を没収することを予定していないというが、それは、没収の執行方法で柔軟に対応すべきであって、だから全部没収するというのは乱暴である。

 なお、HDDの没収に関しては、東京高裁H14.12.17があるが、19条1項2号物件としての没収に関するものであって、犯罪組成物件として没収(同項1号)しようとする本件とは関係がない。

東京高裁H14.12.17東京高裁判例速報3186号