児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ウイルスバスターがウイルスだった場合

http://nsearch.yahoo.co.jp/bin/search?p=%A5%C8%A5%EC%A5%F3%A5%C9%A5%DE%A5%A4%A5%AF%A5%ED&st=n&c=
 こまめにupdateするとバグ入りだったりするということですね。

http://www.trendmicro.co.jp/support/news.asp?id=677
■発生状況
発生条件
弊社製品をご使用のお客様が、2005年4月23日午前7:33から、該当パターンファイルが削除される9:02の間に、検索エンジン7.5xを搭載したコンピュータにウイルスパターン2.594.00をアップデートするとコンピュータの動作が著しく遅くなり、コンピュータを使用できない事象が発生しました。本問題修正済みのウイルスパターンファイル2.596.00は、2005年4月23日午前10:51に公開しており、ウイルスパターンファイル2.596.00へアップデート出来ているお客様においては、本問題は発生しません。
原因
Ultra Protect圧縮ファイルを解凍、検索するためのパターンファイルの問題
※原因については、引き続き調査中です。
■対応方法
ウイルスパターンファイル 2.596.00(日本時間:AM10:51頃公開)にて問題を修正しております。
ウイルスパターンファイル 2.596.00へアップデートできている環境においては、本問題は発生いたしません。
既に、問題が発生している環境においては、以下の方法にて対応をお願いいたします。
以下の手順で、修正済みのウイルスパターンファイル 2.596.00 を適用してください。

 刑事責任については、ネット関係、業務関係は故意犯しかないので、該当する罰条がありませんが、こんなソフトは「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」ですから、法案にいう「ウイルス」そのものです。

法案
http://www.moj.go.jp/HOUAN/KEIHO5/refer02.html
第十九章の二  不正指令電磁的記録に関する罪
  (不正指令電磁的記録作成等)
 第 百六十八条の二 人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一  人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二  前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2  前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3  前項の罪の未遂は、罰する。
  (不正指令電磁的記録取得等)
 第 百六十八条の三 前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 なお、故意犯の場合は、死刑・無期懲役という重要な公共的法益に対する罪については、過失犯が設けられています。
 ウイルス罪(3年)や電子計算機損壊業務妨害罪(5年)について、罰金程度の過失犯を設けるのもアイデアでしょうね。
 被害が広く薄く(中には深刻な被害者もいる)という場合。

第116条(失火)
失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
2 失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

第117条(激発物破裂)
火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
2 前項の行為が過失によるときは、失火の例による。

第117条の2(業務上失火等)
第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。

第122条(過失建造物等浸害)
過失により出水させて、第百十九条に規定する物を浸害した者又は第百二十条に規定する物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、二十万円以下の罰金に処する。

第129条(過失往来危険)
過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。
2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

 水道、鉄道という伝統的なインフラについて、過失犯からも保護しているのなら、電気通信回線などの新進のインフラについても、過失犯からの保護を検討する必要があるでしょうね。
 故意犯の法定刑も軽い気がしますが。




[児童ポルノ・児童買春]児童ポルノは没収すべきか、被告人に還付すべきか?

小林節先生の児童ポルノ禁制品論に触れました。
http://www.nnn.co.jp/rondan/ryoudan/050322.html

 禁制品論は一理あると思います。
 奥村弁護士も、児童ポルノであるHDDを被告人に還付するなという主張をしたことがあります。 

2 控訴理由第13(訴訟手続の法令違反)
 前提として、児童ポルノデータを没収してその分量刑を軽くせよという主張であるから、被告人に不利益な主張ではない。
 本件では、捜査段階で児童ポルノデータか記録されたHDDが押収済となっている。
 押収されたHDDは解析されて、どこのデータが児童ポルノであるのか、本件の犯罪事実と関係があるのかも特定されている。
 上記児童ポルノデータは、証拠物として検察官が保管していると思われるところ、原判決は没収しなかった。没収しないので、検察官は被告人に還付手続を取ることになる。
 これは現行法における提供罪であるし、個々の提供行為は、児童ポルノ販売罪の保護法益(描写された者の権利)を侵害する行為である。児童ポルノの害悪を正解すれば、被告人に還付するなどもってのほかである(大橋検事 ハイテク犯罪の捜査 捜査研究2004.12.)

 素人考えでも、児童ポルノ販売罪で有罪が確定した者に、犯罪供用物件である児童ポルノを還付するというのは間抜けな話である。
 しかるとき、児童ポルノ罪においては裁判所は児童ポルノをなるべく没収する法律上の義務を負い、没収を怠った場合には、訴訟手続に瑕疵が生じると解するべきである。

 しかし、高裁は、没収しなくてもいいんだということでした。
 法禁物でないという判断は出ていますよね。
 やっぱりそこまでして還付する必要はないとおもうんですが。

福岡高等裁判所那覇支部平成17年3月1日
10控訴趣意中原判決に没収の言渡しがないとの主張について
所論は要するに,本件においては,児童ポルノデータが記録されたハードディスクドライブが捜査機関によって押収されており,かつ,どのデータが当該児童ポルノデータであるかの解析もされていて,一部消去の方法により児童ポルノデータを没収することは可能であるにもかかわらず,原判決はそのような没収の言渡しをしておらず,これでは当該児童ポルノデータを被告人に還付するという違法な結果を生じるから,裁判所には当該児童ポルノデータを没収すべき義務があり,これを怠った場合は訴訟手続に瑕疵が生じると解すべきであるし,没収の言渡しをすればその分量刑を軽くすることができるのに,それを怠る一方でその分重い刑の言い渡しをするのは不当であるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるというにある。
しかし,所論のような犯行の用に供された児童ポルノデータの消去は没収の言渡しをしなくとも実現できることであるし,没収をしない分重い刑を量定したとは認められないから,原判決には所論のような訴訟手続の法令違反はない。論旨は理由がない。