児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

同一機会の青少年ABに対するわいせつ行為を包括一罪とした事例(和歌山地裁h29.8.31)

 社会的法益だから、個人にこだわらないということでしょうか。

和歌山地方裁判所平成29年8月31日和歌山県青少年健全育成条例違反被告

       判   決
 上記の者に対する和歌山県青少年健全育成条例違反被告事件について,当裁判所は,検察官氷室隼人及び私選弁護人前畑壮志各出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

被告人を懲役1年6月に処する。
この判決が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成29年5月23日,和歌山市■の■中学校■において,
1 ■(当時13歳。以下「被害者A」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
2 ■(当時13歳。以下「被害者B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後5時頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
もって,それぞれ青少年に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
1 罰条 包括して和歌山県青少年健全育成条例33条1項,26条1項(判示の各わいせつ行為は,同一の犯行場所において犯行時刻を一部重なり合って行われたものであるから,包括一罪として処理)
2 刑種の選択 懲役刑を選択
3 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,被害者らが18歳に満たない青少年であることを知りながら,同被害者らの背後から手を乳房に押し当てて弄んだという和歌山県青少年健全育成条例違反の事案である。その態様は,当時中学校教師であった被告人が,被害者ら生徒のために開いた補習授業において,解答の誤りを指導する口実で各被害者の肩に触れた際に,胸元まで手をまわして乳房に押し当てるというものであって,教師の立場を利用した悪質なものである。
 その上,被告人は,平成29年3月下旬頃から同様のわいせつ行為を繰り返す中で本件犯行に及んでいる。本件犯行当時、被告人が過重労働状態にあったことはうかがわれるものの,初めてわいせつ行為に及んだ後に自省する機会があったにもかかわらず,被害を受けた生徒が抵抗や被害申告をしないことに乗じて,その後も自己の性的欲求を満たすため同様の行為を繰り返して本件犯行に及んでいるのであるから,本件犯行は卑劣というほかなく,経緯にもさほど酌むべき点があるとはいえない。
 また,被害者のうち1名は,本件犯行の発覚後に欠席日数が増えるなど,本件犯行が当時中学2年生の青少年である被害者らの心身に与えた影響は計り知れず,当然のことながら,被害者らやその母親らはいずれも厳しい処罰感情を有している。 
 以上によれば,被告人の刑事責任は軽視できるものではなく,懲役刑をもって臨むほかない。
 しかしながら,他方において,被告人には,事実関係を認めた上,公判廷においても被害者らに対する謝罪の意思を表明するなど反省の態度を示していること,本件により懲戒免職処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けていること,被告人には前科前歴がないことなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。
 そうすると,被告人を今直ちに刑務所に送ることにはいささかためらいを感じる面があることを否定できないから,当裁判所は,以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文の懲役刑を科してその刑事責任の重さを明らかにした上,今回に限りその刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断し,主文の刑を決めた次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
(検察官求刑-懲役1年6月)
平成29年8月31日
和歌山地方裁判所刑事部
裁判官 奥山浩平

教員の児童ポルノ・児童買春事件の量刑

 教員からの相談が多いので、手持ちの判決書を集計してみました。
 児童買春して、製造すると2罪と数えています。

 5罪で実刑というのがあるので、手抜きすると、この辺りでも実刑になります。児童3名とハメ撮りしたくらいです。
 6~16罪は、「懲役3年執行猶予5年」が多く、実刑事案も散見され、ギリギリの感じが出てきます。
 量刑理由にある有利な事情を全部揃えるくらいの情状立証を尽くして下さい。どんな情状立証が執行猶予になっているかは裁判例に当たって下さい。
 非教員と比べると、1ランク重い感じです。
 学校での地位をみると、役職がある場合は重くなっています。

 20罪くらいになると、確実に実刑になります。このあたりの控訴審の弁護人は奥村です。

  懲役 年 懲役 月 執行猶予 罰金 罪数 最年少被害児童
簡裁       50万 01罪 15才
簡裁       50万 01罪 15才
簡裁       50万 01罪 15才
簡裁       50万 01罪 15才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予3年   01罪 13才
地裁 懲役1年 00月 執行猶予3年   02罪 14才
地裁 懲役1年   執行猶予3年   02罪 16才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予3年   02罪 14才
地裁 懲役1年 00月 執行猶予3年   02罪 16才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予4年   02罪 12才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予4年   02罪 17才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予4年   02罪  
地裁 懲役1年 06月 執行猶予3年   02罪 15才
地裁 懲役2年 06月 執行猶予4年   02罪 14才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予3年   02罪 15才
地裁 懲役1年   執行猶予3年   02罪 13才
地裁 懲役2年   執行猶予4年   02罪 16才
地裁 懲役2年   執行猶予3年   02罪 15才
地裁 懲役2年   執行猶予3年   02罪 15才
地裁 懲役1年 00月 執行猶予3年   02罪 14才
地裁 懲役2年   執行猶予3年   02罪 15才
地裁 懲役2年   執行猶予3年   02罪 15才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予4年   03罪 14才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予4年   03罪 16才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予3年   03罪 16才
地裁 懲役1年 06月 執行猶予3年   03罪 13才
地裁 懲役3年 00月 執行猶予5年   04罪 16才
地裁 懲役2年   執行猶予4年   04罪 17才
地裁 懲役1年 10月 実刑   05罪 15才
高裁 懲役2年 06月 執行猶予4年   05罪 15才
地裁 懲役3年   執行猶予5年   06罪  
地裁 懲役3年   執行猶予4年   07罪 14才
地裁 懲役3年   執行猶予4年   08罪 13才
地裁 懲役2年   実刑   08罪 13才
地裁 懲役2年 06月 執行猶予4年   09罪 14才
地裁 懲役3年   執行猶予4年   10罪 14才
地裁 懲役2年   実刑   10罪 14才
地裁 懲役3年   執行猶予5年 保護観察 10罪 14才
地裁 懲役2年   執行猶予5年   16罪 17才
地裁 懲役2年 06月 実刑   19罪 13才
地裁 懲役2年   実刑   22罪 14才

「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノ所持した者に当たらない場合」KOSUZO 教旬ガイドブック 平成27年・28年度版収録 2017年

 埃かぶってる写真集・DVDとか
 先祖からの蔵の奥に眠っているとか。

○嫌がらせ等によりメールで送り付けられた場合
○ ネットサーフィンによる意図しないアクセスの場合
○パソコンがウイルスに感染し、勝手に児菫ポルノをダウンロードした場合
○インターネット上の掲示板に児童ポルノが掲載された場合の掲示板やサーバの管理者の場合

※送付後に、児童ポルノであることを認識した上で、自己の性的好奇心を満たす目的で保存し直すなどしたときは、その時点で「所持するに至った者」に該当する。

4)職務質問に伴う所持品検査で児童ポルノと思われるものを発見した場合の自己性的目的所持罪による現行犯逮捕は、被写体が18歳未満かどうかは医師の鑑定又は被写体の特定を待たなければはっきりしないこと、「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づいて所持するに至った者」を客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、それらが明白でなければ困難である。



KOSUZO 教旬ガイドブック 平成27年・28年度版収録 2017年

2010年の事件について「当時16歳の彼女と関係をもったとすれば、東京都の青少年保護育成条例に、時効(3年)とはいえ、明確に違反している。さらには強制性交等罪(5年以上の懲役)にもなりうる行為だ。こちらは時効(10年)にもなっていない。」という記事

2010年の事件だと罪名は
強制性交罪ではなく強姦罪(3年以上の有期懲役)・・・公訴時効10年
児童ポルノ製造罪(罰金または3年以下の懲役)・・・公訴時効3年
東京都青少年の健全な育成に関する条例違反(罰金または2年以下の懲役)・・・ 公訴時効3年
ということになって強姦罪が成立するときは、青少年条例は適用されない(法条競合)。
 なお、強姦罪は告訴不要。(平成二九年六月二三日法律第七二号附則2条2項)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190227-00010876-bunshun-pol
「翌年の大学受験を控えて色々な悩みを抱えており、『話を聞いてくれるかもしれない』という気持ちがありました。錦糸町駅に行くと、10分ほど歩いて『自宅兼事務所なんだ』という古びたマンションに連れ込まれた。彼はおもむろにクローゼットからダンボール箱を取り出すと、『これ、大人のおもちゃなんだ。試してみるか?』と聞いてきた。中には怪しい器具がぎっしりと詰まっていました。高校生の私は、そんなもの見たこともなかった。言葉を失っていると、彼が力任せに覆いかぶさってきたので、私は『止めて!』と叫び、必死に抵抗しました。でも彼は、痛がる私を押さえつけながらハンディカムを手に持ち、撮影し始めたのです。避妊具は付けたがらず『殺精子剤を使うから大丈夫だよ』と言って、そのまま押し入ってきました」

 当時16歳の彼女と関係をもったとすれば、東京都の青少年保護育成条例に、時効(3年)とはいえ、明確に違反している。さらには強制性交等罪(5年以上の懲役)にもなりうる行為だ。こちらは時効(10年)にもなっていない。

4~6歳児への強制口腔性交罪+児童ポルノ製造4件で、懲役9年とした事例 千葉地裁H30.10.11

 
 改正前は強制わいせつ罪(176条後段)で、わいせつ性だとか、保護法益を争ってましたが、強制口腔性交罪(177条後段)になっちゃうと既遂時期とか挿入したかくらいしか争うとこがないですよね。

裁判年月日 平成30年10月11日 
裁判所名 千葉地裁 裁判区分 判決
事件名 強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA10116006
 上記の者に対する強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官及川恭輔及び私選弁護人林通嗣各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役9年に処する。
 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
理由
 【罪となるべき事実】
 被告人は,千葉県●●●幼稚園で教諭として勤務していた者であるが,
第1
 1 同幼稚園に通園するA(当時4歳。以下「A」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Aと強制的に性交等をしようと考え,平成29年10月10日午前10時28分頃,同幼稚園内において,Aの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記日時頃,同所において,衣服を脱がせたAに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第2
 1 同幼稚園に通園するB(当時5歳。以下「B」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Bと強制的に性交等をしようと考え,平成29年11月6日午前9時55分頃から同日午前9時56分頃までの間に,同幼稚園内において,Bの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第3)
 2 Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午前9時44分頃から同日午前9時56分頃までの間に,同所において,衣服を脱がせたBに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態,Bに陰部を露出させる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ3点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,それぞれ視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年3月30日付け起訴状記載の公訴事実第4)
第3
 1 同幼稚園に通園するC(当時6歳。以下「C」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Cと強制的に性交等をしようと考え,平成29年12月25日午後1時42分頃,同幼稚園内において,Cの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年2月23日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 2 Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後1時36分頃から同日午後1時43分頃までの間に,同所において,Cに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態,被告人の陰茎を触らせる姿態,Cの陰部を露出させる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ2点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,それぞれ視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年2月23日付け起訴状記載の公訴事実第2)
第4
 1 同幼稚園に通園するD(当時6歳。以下「D」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Dと強制的に性交等をしようと考え,平成30年1月5日午前11時8分頃,同幼稚園内において,Dの口腔内に被告人の陰茎を入れるなどし,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をした。(平成30年2月6日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 2 Dが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午前11時4分頃から同日午前11時10分頃までの間に,同所において,衣服を脱がせたDに,その口腔内に被告人の陰茎を入れる姿態,被告人の陰茎を触らせる姿態,Dの陰部等を露出させる姿態などをとらせ,これを被告人の動画撮影機能付き携帯電話機及びタブレット端末で撮影し,その動画データ3点を同携帯電話機及び同タブレット端末の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,それぞれ視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,同児童に係る児童ポルノを製造した。(平成30年2月6日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 【証拠の標目】括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。
 (省略)
 【法令の適用】
 罰条
 判示第1の1,第2の1,第3の1,第4の1の各行為 いずれも刑法177条後段
 判示第1の2,第2の2の各行為 いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,3号
 判示第3の2,第4の2の各行為 いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,2号,3号
 刑種の選択 判示第1の2,第2の2,第3の2,第4の2の各罪につきいずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の1の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 【量刑の理由】
 1 本件は,被告人が当時勤務していた幼稚園の園児4名に対し,約3か月の間に口腔性交をした上,それぞれその状況等を撮影して児童ポルノを製造したもので,常習的な犯行である。
 被告人は,幼稚園教諭という立場を利用し,他の職員が少ないタイミングを見計らうなどするとともに,ドレスを着せてあげるなどと甘言を用いるなどして被害児童らと保育室で2人きりの状況を作り,事もあろうに被害児童らが被告人を信頼し慕っていたことや,被告人の性的意図を理解できない未熟さにつけこみ,被害児童らに対し,口腔性交に及んでいる。かかる犯行態様は,巧妙かつ卑劣で,相当悪質である。
 被害児童らは,性的なことについての判断能力のない年齢である。何をされているか分からないまま,一方的に性的自由を侵害されており,犯行時間が長いとはいえなくても,被害結果は重大である。また,大切な我が子を安心して任せていた幼稚園において,我が子が信頼していた教諭から本件犯行に及ばれたことを知った保護者の衝撃や怒りは察するに余りある。そして,保護者らが,今後,本件の記憶が我が子の健全な成長や人格形成に悪影響を及ぼす可能性を懸念・心配し,被告人に対する峻烈な処罰感情を述べるのも当然のこととして理解できる。
 また,被告人は,幼稚園教諭として児童の健全な育成を図るべき立場にあり,児童心理や将来の影響等について専門的な知識を有していたにもかかわらず,被害児童らへの悪影響等全く顧みず,むしろその立場を悪用し,被害児童らを自己の性欲のはけ口にしたのであって,本件犯行の動機,経緯に酌量の余地は全くない。
 以上に加えて,児童ポルノを製造した点も無視できないことを併せ考えると,本件の犯情は非常に悪く,被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。
 2 そうすると,被告人が,D,Cに対して各200万円(ただし,Dについては損害賠償金の一部として),Bに対して230万円をそれぞれ支払って,C及びBとの間では示談が成立したこと,被告人の母親が情状証人として出廷して今後の指導監督を誓約したことや,被告人が罪を認めて反省と謝罪の弁を述べていること,被告人に前科前歴がないことなど,被告人に有利に酌むことのできる事情を十分考慮しても,主文の刑は免れない。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑 懲役13年)
 平成30年10月17日
 千葉地方裁判所刑事第5部
 (裁判長裁判官 市川太志 裁判官 福田恵美子 裁判官 下村有朋)

大法廷h29.11.29の警察の理解  強制わいせつ罪における「性的意図」の要否KOSUZO 試験に出る・実務に役立つ 昇試サブノート 。

 被害者との関係出ちゃってます。
 判決では一言も触れてないのに。

KOSUZO 試験に出る・実務に役立つ 昇試サブノート SeasonⅤ 2018年 5月号 Vol.9 No.098
判例カード
強制わいせつ罪における「性的意図」の要否
刑法
[最判平29.11‘29]
、事案
I甲は、金に困って、インターネットを通じて知り合ったAから金を借りようとしたところ、金を貸すための条件として被害者(当時7歳■■■■■■■■■■■■■■■■)とわいせつな行為をしてこれを撮影し、その画像データを送信するように要求された。
Ⅱそこで、甲は、被害者が13歳未満の女子であることを知りながら、全裸の被害者に対し、被告人の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をして、強制わいせつ罪(刑法176条)に問われた。
◎論点
強制わいせつ罪が成立するためには、行為者の性的意図が必要か。
判例の考え方
従来の判例は、強制わいせつ罪の成立要件として、行為の性質及び内容にかかわらず、犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを一律に求めていた(最判昭45.1.29)。
↓しかし
①性犯罪に対する社会の受け止め方が変化した今日では、本罪の成立要件を解釈するに当たっては、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべきであり、行為者の性的意図を一律に成立要件とする解釈は維持できない。
②本罪のわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断する。
③そのような個別具体的な事情の1つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定しない。
↓これを本件についてみると
甲の行為は、行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから、その他の事情(性的意図等)を考慮するまでもなく、性的な意味合いの強い行為として、客観的にわいせつな行為であることが明らかである。よって、甲に強制わいせつ罪が成立する。

Q&A
Q1本判例は、強制わいせつ罪の成立には、行為者の性的意図を考慮する必要は一切ないとするものである。
Q2本判例は、強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」と評価されるべき行為には、「行為そのものが持つ性的性質が明確な行為」と「行為そのものが持つ性的性質が不明確で、具体的状況等を考慮しなければならない行為」があるとする。
Q3本判例による判例変更は、純粋に法理論の進展によるものであり、性犯罪に対する社会の受け止め方の変化を反映したものではない。
Q4本事案の甲の行為は、児童買春等処罰法の提供目的児童ポルノ製造罪及び児童ポルノ提供罪にも該当する。
・・・
A1×本判例は、本罪の成立に性的意図が常に不要であるとはしていない。行為そのものの性的性質が不明確である場合には、行為の客観面のみからわいせつ行為性を判断することは容易でなく、具体的な諸般の事情の1つとして行為者の主観的事情(性的意図)を判断要素として考慮しつつ、総合的にわいせつ行為性を判断する。
A2○本判例は、「わいせつな行為」には、「行為そのものが持つ性的性質が明確」ゆえに「当該行為が行われた際の具体的状況等いかんにかかわらず当然に性的な意味があると認められる」行為と、「行為そのものが持つ性的性質が不明確」ゆえに「当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難い」行為がある、と整理する。その上で、性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを判断するに当たって、「個別具体的な事情の1つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」としている。
A3×本判例は、最近の性犯罪に関する一連の法改正(性犯罪の厳罰化、強制性交等罪の新設、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設等)につき、性的な被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映したものであるとした上で、それを踏まえて判例変更したものである。
A4○本判例の原審において、甲には提供目的児童ポルノ製造罪(児童買春等処罰法7条3項前段)及び児童ポルノ提供罪(同条2項)も成立し、強制わいせつ罪とは併合罪となるとしている(大阪高判平28.10.27)。

KOSUZOでは「自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合はハードディスク(有体物)の所持罪に該当する」とされているのに、被告人方で被告人が所有する外付けHDDに保存していたのを児童ポルノ電磁的記録頒布目的保管罪とした事例(名古屋地裁H30.11.5 被告人控訴)

 
 児童ポルノ兼わいせつHDDを手元に置いていた場合は、「児童ポルノを保管し、わいせつ電磁的記録を保管した」というべきですね。

平成30年11月5日宣告 
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
判    決
理    由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 ひそかに製造罪
第2 不特定多数の者に有償で頒布提供する目的で,平成31年2月23日,被告人方において,記録媒体である外付けハードディスクに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,女児の性器を露骨に撮影したわいせつな画像データを記録した電磁的記録2点及び同児童ポルノであり,かつ女児の性器を露骨に撮影したわいせつな画像データを記録した電磁的記録40点を保管したものである。
(法令の適用)
罰条
罰条
 判示第2の事実中
  児童ポルノ電磁的記録頒布目的保管の点につき
          児童ポルノ法7条7項後段,6項,2条3項3号
  わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管の点につき
          刑法175条2項
科刑上1罪    刑法54条1項前段,10条
  (判示第2につき1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,1罪として重い児童ポルノ電磁的記録頒布目的保管罪の刑で処断)
刑種の選択    いずれも懲役刑選択
(検察官西村恵三子,私選弁護人奥村徹出席)
(求刑 懲役2年)
  平成30年11月5日
    名古屋地方裁判所刑事第6部
                裁判官 田邊 三保子

KOSUZO 2017年 12月号 Vol.8 No.093
生活安全
Q31 次は、児菫買舂、児菫ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児菫の保護等に関する法律に定める自己の性的好奇心を満たす目的による児菫ポルノ所持(保管)罪(以下「所持(保管)罪」)についての記述であるが、誤りはどれか。

(1)児童ポルノの「所持」とは、有体物(写真、DVD・ハードディスク(記録媒体)等)である児童ポルノを、自己の事実上の支配下に置くことをいう。
(2)電磁的記録の「保管」とは、電磁的記録を第三者の実力支配内に置いておくことをいう。
(3)「自己の性的好奇心を満たす目的」については、所持の態様、分量、所持している対象の内容等の客観的事情からの推認により立証される。
(4)所持(保管)罪が成立するためには、児童ポルノであることを認識し、かつ、所持(保管)について認容している必要がある。
(5)所持(保管)罪が成立するためには、「自己の意思に基づいて所持(保管)するに至った」ことの立証が必要である。
・・・・・・・・・・・・


A31 自己の性的好奇心を満たす目的による児童ルノ所持(艫)罪 答え(2)
(2)×
電磁的記録の「保管」とは、電磁的記録を「自己」の実力支配内に置いておくことをいう。具体的には、当該電磁的記録をコンピュータのレンタル・サーバに保存したり、自己が自由にダウンロードすることができるネットワーク上の記録媒体に保存する行為がこれに当たる(これに対し、自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合はハードディスク(有体物)の所持罪に該当する)。

(3)○枝文のとおり。
(4)○メールで児童ポルノを送り付けられた場合や、バソコンがウイルスに感染し勝手に児童ポルノをダウンロードしてしまった場合でも、そのことを認容しないときは、所持(保管)罪は成立しない。
(5)○ 枝文のとおり(枝文解説(4)参照)。第三者から嫌がらせ等で児童ポルノを送り付けられた場合等、送り付けられた時点では、所持(保管)に当たらず、「自己の意思に基づく」ものでなかったとしても、その後メールに添付された児童ポルノ画像を開き、当該ファイルが児童ポルノであることを認識した上で、性的好奇心を満たす目的で、これを積極的な利用の意思に基づいて自己のパソコンの個人用フォルダに保存し直すなどしたときは、その時点で新たに「自己の意思に基づいて所持するに至った」に該当すると考えられる。

強制わいせつ罪の性的意図の論稿

国会図書館の検索では、議論されるのは最近になってからに見えます。

 

URL タイトル 著者 掲載誌情報 請求記号 国立国会図書館書誌ID
http://id.ndl.go.jp/bib/029501073 刑事判例研究(Number 199)強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否[最高裁平成29.11.29判決] 仲道 祐樹 論究ジュリスト = Quarterly jurist 28 (28):2019.冬 p.188-193 Z72-E372 29501073
http://id.ndl.go.jp/bib/029295121 刑法 強制わいせつ罪と性的意図[東京高裁平成30.1.30判決] 成瀬 幸典 法学教室 458 (458):2018.11 p.145 Z2-715 29295121
http://id.ndl.go.jp/bib/029405000 判例研究 強制わいせつ罪の成立要件と「性的意図」[最高裁平成29.11.29判決] 日和田 哲史 上智法学論集 62 1・2 62(1・2):2018.11 p.177-191 Z2-238 29405000
http://id.ndl.go.jp/bib/029390056 判例研究 強制わいせつ罪における行為者主観の行為意味への還元 : 平成29年11月29日最高裁判所大法廷判決が行ったこと 江藤 隆之 桃山法学 / 桃山学院大学法学会 編 29 (29):2018.10 p.139-164 Z71-J995 29390056
http://id.ndl.go.jp/bib/029351507 刑事判例研究 強制わいせつ罪において性的意図を考慮要素とする意義をなお存するとし、さらに強制わいせつの際に被害児童の姿態を撮影し児童ポルノを製造した場合の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係につき、撮影機器内に一次保存した場合は観念的競合、複製するなどして二次保存した場合は併合罪とした事例(富士見市ベビーシッター事件控訴審判決)[東京高裁平成30.1.30判決] 神元 隆賢 北海学園大学法学研究 = The Hokkai-Gakuen law journal 54 2 54(2)=160:2018.9 p.209-220 Z2-27 29351507
http://id.ndl.go.jp/bib/029348363 強制わいせつ罪の成立に性的意図は必要か : 平成29年11月29日最高裁大法廷判決を契機として 谷脇 真渡 桐蔭法学 / 桐蔭法学会 編 25 1 25(1)=49:2018.9 p.75-109 Z2-B385 29348363
http://id.ndl.go.jp/bib/029163219 実務刑事 判例評釈(case 281)最大判平29.11.29 刑法(平成29年法律第72号による改正前のもの)176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが,行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではないとした事例 石飛 勝幸 Keisatsu koron 73 8 73(8):2018.8 p.88-95 Z2-158 29163219
http://id.ndl.go.jp/bib/028892671 最高裁大法廷 時の判例 刑事 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否[平成29.11.29判決] 馬渡 香津子 ジュリスト = Monthly jurist / 有斐閣 [編] 1517 (1517):2018.4 p.78-89 Z2-55 28892671
http://id.ndl.go.jp/bib/028840897 判例クローズアップ 強制わいせつ罪における「性的意図」の要否[最高裁大法廷平成29.11.29判決] 曲田 統 法学教室 450 (450):2018.3 p.51-57 Z2-715 28840897
http://id.ndl.go.jp/bib/028813163 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否[最高裁大法廷2017.11.29判決] 松木 俊明 , 奥村 徹 , 園田 寿 法学セミナー 63 3 63(3)=758:2018.3 p.48-52 Z2-19 28813163
http://id.ndl.go.jp/bib/028779350 刑法 強制わいせつ罪の主観的要件としての性的意図の要否[最高裁大法廷平成29.11.29判決] 成瀬 幸典 法学教室 449 (449):2018.2 p.129 Z2-715 28779350
http://id.ndl.go.jp/bib/028746218 最新判例演習室 刑法 強制わいせつ罪における性的意図の要否[最高裁大法廷平成29.11.29判決] 豊田 兼彦 法学セミナー 63 2 63(2)=757:2018.2 p.123 Z2-19 28746218
http://id.ndl.go.jp/bib/028948912 判例詳解(Number 20)強制わいせつ罪における性的意図[最高裁平成29.11.29判決] 高橋 則夫 論究ジュリスト = Quarterly jurist 25 (25):2018.春 p.113-121 Z72-E372 28948912
http://id.ndl.go.jp/bib/029314160 日髙義博先生古稀祝賀論文集 下巻 高橋則夫, 山口厚, 井田良, 川出敏裕, 岡田好史 編集委員 A711-L62 29314160
http://id.ndl.go.jp/bib/029502479 強制わいせつ罪における性的意図の法的性質と要否 神元 隆賢 法政論叢 = The Japanese journal of law and political science 54 2 54(2):2018 p.103-124 Z2-616 29502479
http://id.ndl.go.jp/bib/029109589 強制わいせつ罪における「性的意図」 : 最高裁平成29年11月29日大法廷判決を契機として 塩見 淳 刑事法ジャーナル 56 56:2018 p.33-38 Z71-P215 29109589
http://id.ndl.go.jp/bib/029325773 刑事判例研究 強制わいせつ罪の成立と性的意図の要否[最高裁平成29.11.29判決] 小棚木 公貴 北大法学論集 = The Hokkaido law review 69 3 69(3):2018 p.886-840 Z2-25 29325773
http://id.ndl.go.jp/bib/028732756 最新 刑事判例研究(第45回)行為者の性的意図の満足と強制わいせつ罪の成否[最高裁大法廷平成29.11.29判決] 前田 雅英 捜査研究 66 12 66(12)=804:2017.12 p.2-13 Z2-66 28732756
http://id.ndl.go.jp/bib/028134703 法学のアントレ(第2回)判例 性的意図は強制わいせつ罪の成立要件か? 森永 真綱 法学教室 440 (440):2017.5 p.2-3 Z2-715 28134703
http://id.ndl.go.jp/bib/028112691 山中敬一先生古稀祝賀論文集 下巻 井田良, 川口浩一, 葛原力三, 塩見淳, 山口厚, 山名京子 編集委員 A711-L49 28112691
http://id.ndl.go.jp/bib/027588496 刑法 強制わいせつ罪の主観的要件として犯人の性的意図は必要ではないとされた事例[神戸地裁平成28.3.18判決] 成瀬 幸典 法学教室 432 (432):2016.9 p.166 Z2-715 27588496
http://id.ndl.go.jp/bib/026823690 研修の現場から 強制わいせつ罪における性的意図について 田原 浩子 研修 808 (808):2015.10 p.83-90 Z2-162 26823690
http://id.ndl.go.jp/bib/025946216 判例解説(第396回)客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば強制わいせつ罪の成立に欠けるところはなく,犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図の有無は同罪の法益侵害とは関係を有しない旨判示した事例[東京高裁平成26.2.13判決] 田中 健太郎 研修 797 (797):2014.11 p.21-30 Z2-162 25946216
http://id.ndl.go.jp/bib/025845533 強制わいせつ罪における性的意図(2・完) 神元 隆賢 法学研究 / 北海学園大学法学会 [編] 50 1 50(1)=144:2014.6 p.57-76 Z2-27 25845533
http://id.ndl.go.jp/bib/025586100 最新・判例解説(第21回)被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者にその旨の認識があれば強制わいせつ罪の成立に欠けるところはなく,行為者の性的意図の有無は被害者の性的自由という強制わいせつ罪の保護法益の侵害とは関係を有しない旨判示された事例[東京高裁平成26.2.13判決] 浅沼 雄介 捜査研究 63 6 63(6)=759:2014.6 p.2-10 Z2-66 25586100
http://id.ndl.go.jp/bib/025518089 強制わいせつ罪における性的意図(1) 神元 隆賢 法学研究 / 北海学園大学法学会 [編] 49 4 49(4)=143:2014.3 p.809-824 Z2-27 25518089
http://id.ndl.go.jp/bib/5487202 強制わいせつ罪における性的意図の要否 阿部 純二 現代刑事法 : その理論と実務 2 3 2(3) (通号 11) 2000.03 p.22~27 Z71-D368 5487202
http://id.ndl.go.jp/bib/000002491967 犯罪各論の現在 町野朔 著   AZ-716-G10 2491967
http://id.ndl.go.jp/digimeta/2759381 専修法学論集 (19)     Z2-190  
http://id.ndl.go.jp/bib/1527877 強制猥褻罪における性的意図--異論のある刑事判例-4- 平出 禾 専修法学論集 (通号 19) 1974.11 p.p1~29 Z2-190 1527877
http://id.ndl.go.jp/bib/242311 強制わいせつ罪の成立には行為者の性的意図を要するか 木村 栄作 警察学論集 / 警察大学校 編 23 8 23(8) 1970.08.00 p.132~135 Z2-63 242311
http://id.ndl.go.jp/digimeta/2670267 警察学論集 23(8)   警察大学校 Z2-63  

強制性交罪で逮捕され、青少年条例違反で略式命令となった事例

 同じ性交を構成要件としていても、法定刑が20年と2年と違うのは、保護法益とか暴行脅迫によるかという点なんでしょうな。
 

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019020400755&g=soc
逮捕容疑は昨年10月23日夜、普通乗用車に中学1年の女子生徒(13)を連れ込んで、都内の駐車場に止め、車内で乱暴した疑い。
 少年育成課によると、2人はスマートフォンの学生限定チャットアプリ「ひま部」を通じて知り合ったという。容疑者は高校生と偽って登録。女子生徒に「会いたい」と連絡し、「本当は37歳で1人暮らしをしている」などとうそをついていたとみられる。
 女子生徒はアプリに顔写真を載せて登録しており、チャットで住所や電話番号を教えてしまったため、誘いを断ることができなかった。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019022201170&g=soc
 女子中学生に乱暴したとして強制性交容疑で逮捕された東京都豊島区役所の元広報課長容疑者=懲戒免職=について、東京区検は22日、都青少年健全育成条例違反罪で東京簡裁に略式起訴した。簡裁は同日、罰金50万円の略式命令を出した。
 関係者によると、区検は容疑者による暴行や脅迫があったとまでは認定できないと判断した。
 命令によると、容疑者は昨年10月、当時中学1年の女子生徒が18歳未満であると知りながら、みだらな行為をした。(2019/02/22-20:25)

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説h28 
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第18条の6
何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない。
【要旨】本条は、すべての者に対し、青少年と反倫理的な目的、手段による性交又は性交類似行為を行うことを禁止する規定である。
【解説】平成17年の条例改正前の本条は、平成9年の条例改正によって新設され、平成16年の条例改正で法律との異同部分を整理した規定である。
平成9年の条例改正では、情報化や性の商品化が著しく進み、「性」に関する意識が大きく変化する中で、性風俗に安易に係わる青少年と、その相手方となる大人(18歳以上)の行動が、深刻な社会問題となり、性の商品化から青少年を守るため、青少年に対する買春等の禁止が新設され、第18条の2第1項において、「何人も、青少年に対し、金品、職務、役務その他財産上の利益を対象として供与し、又は供与することを約束して性交又は性交類似行為を行ってはならない。」、第2項において、「何人も、性交又は性交類似行為を行うことの周旋を受けて、青少年と性交又は性交類似行為を行ってはならない。」と規定した。
平成16年の条例改正では、平成11年11月1日に児童買春・児童ポルノ禁止法が施行され、児童に対して対償を供与等し、性交等をすることが禁止されたことに伴い、同法との整合性を図るため、いわゆる「金品等の供与等を伴う性交又は性交類似行為」と規定していた条例第18条の2第1項を、すでに効力が失われているため削除した。
また、同法の対象とならない対償の供与等を伴わない周旋による性交又は性交類似行為については、条例第18条の3第1項により、.「何人も、性交又は性交類似行為を行うことの周旋(対象の供与又は供与の約束を伴うものを除く。
)を受けて、青少年と性交又は性交類似行為を行ってはならない。
」とし、独立した条文としての改正を行った。
しかし、メディアから性に関する情報が流され、出会い系サイトの利用により青少年が大人との接触の機会が増加するなど、青少年の性を取り巻く環境は、近年大きく変化している。
このような中で、青少年が健全に成長する環境づくりのため、大人に対して、青少年との反倫理的な性交又は性交類似行為に対する責任を問い、大人の姿勢を正すことをねらいとして、平成17年の条例改正で淫行処罰規定へと改正した。
「何人も」とは、国籍、住所、年齢、性別を問わず、都内にいる全ての人(自然人)を指す。
したがって、青少年が本条に定める行為を行った場合でも、本条の違反に該当するが、条例第30条(青少年についての免責)により罰則は適用されない。
「みだらな性交又は性交類似行為」とは、「淫行」と同義であり、最高裁判例によれば、「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。
」とし、例えば、婚約中の青少年又はこれに準ずる真蟄な交際関係にある青少年との間で行われる性交等は含まないとしている。
「性交類似行為」とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下におけるあるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為・同性愛行為などであり、児童買春・児童ポルノ禁止法における性交類似行為の解釈と同義である。

秋山千明(東洋英和女学院大学・保護司) 性犯罪の現状と性犯罪者処遇プログラムの有効性について 「更生保護学研究」第13号 

秋山千明(東洋英和女学院大学・保護司) 性犯罪の現状と性犯罪者処遇プログラムの有効性について 「更生保護学研究」第13号 
 大法廷判決は更生保護にも影響するのか。

5.まとめ
被害者学の観点からすると,我が国の性犯罪者処遇プログラムは、刑事施設においては,性犯罪再犯防止指導の中で,被害者理解が指導科目に組み込まれている。
この点は評価できるであろう。
また,保護観察所においては,性犯罪者処遇プログラムのコア・プログラムのセッションDの被害者への共感で,被害者が受ける影響について,被害者の立場に立って考えさせることにより,事件につながる認知の歪みを修正するとともに,再犯の防止に向けた動機付けを高める24という処遇を行っているが, この点も評価できるであろう。
しかしながら,性犯罪者処遇プログラムの有効性を考えると,社会的なスキルの欠如,被害者への共感性の乏しさ,動機付けの低さ25などが指摘されていることから,認知行動療法による性犯罪者処遇プログラムは, まだ不十分な要素が多々あるように思われる。
また,我が国の性犯罪処遇プログラムにおいては, 自分の起こした性犯罪が, どのような過程で起きたのかを一定の仮説的モデルを用いて理解させ,性犯罪がコントロール可能なものであるという意識を高め,変化の動機付けを強化するように働きかける弱ということであるが, しかし,筆者が入手した資料は限られているものの, もっと具体的に踏み込んだ被害者に対する教育が必要ではないかと考えられる。
我が国の性犯罪者処遇プログラムの対象者は,平成29年の刑法の一部改正前までは男性ではあるが,現時点においてさえ, もし, 自分が同性愛者で好きでもない相手から自分の意思に反して性行為を強制された時のことを想像させ,それがどれだけ侮辱的なことをされたかを考えさせるような指導方法を採用すれば,処遇対象者は,恋愛のプロセスなしに,性行為を強要された相手の気持ちが少しは分かるのではないかと筆者は思うのである。
また,強制わいせつ罪の成立に「性欲を満たす意図」が必要かが争われた刑事裁判で,最高裁大法廷は,別17年11月29日,性的意図を「必要」とした最高裁判例を47年ぶりに変更し, 「一律に必要とするのは不相当」との初判断を示した。これは,被害者保護を重視した変更である。
強制わいせつ罪の成立には,性的意図があるといった加害者側の事情ではなく,「被害者が受けた性的被害の有無や内容,程度こそ目を向けるべきだ」とした27.筆者がこれまで重視している被害者の視点から性犯罪を考えるという視点がここにも展開されていると思う。
刑事施設はもとより,保護観察所においても,被害者のことを考えさせる機会をなるべく多く作ることによって,再被害の防止,再犯防止につながるのではないだろうか。

児童ポルノ単純所持罪(自己性的目的所持罪)の現行犯逮捕が難しい理由 KOSUZO 2016年1月号

児童ポルノ単純所持罪(自己性的目的所持罪)の現行犯逮捕が難しい理由 KOSUZO 2016年1月号
 受験情報誌に載ってました。
 警察庁の公文書ではマスクされてました。

論文
児菫買舂児菫ポルノに係る行為等の処罰及び児菫の保護等に関する法律の一部を改正する法律(平成26年6月25日公布)について述べなさい。
答案例
1 現行犯逮捕の可否
自己性的目的所持罪においては、
○児菫ポルノと思われるものの被写体が18歳未満かどうかは、医師の鑑定又は被写体の特定を待たなければならないこと
○「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づいて所持するに至った者」を客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、例えば、職務質問に伴う所持品検査で、児菫ポルノと思われる物を発見した場合でも、この事実により現行犯逮捕することは一般的には困難である。
2 的確な速報
今回新設された自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的」「自己の意思に墓づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者」と処罰範囲が限定されており、また、法案審議を行った参議院法務委員会において「捜査権の濫用に至らないよう」必要な付帯決議がなされている。
したがって、警察庁においては、自己性的目的所持罪の適用に当たっては、全ての事案について事前報告を求めていることから、認知した段階で本部少年課に速報して指示を受ける必要がある。

福島県青少年健全育成条例の自画撮り規制

 国会図書館にあります。1/2までしか謄写できないので、ここで途切れました。
 SEXTING(製造罪)で検挙した被疑者の、未遂・予備の事件をこの条例でやるんでしょうかね。

福島県青少年健全育成条例の解説h30
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第26条の2
何人も、青少年に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。次号において同じ。)の提供を行うように求める行為。
(2) 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求める行為。
(平30条例76 .追加)
【要旨】
本条は、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を不当に求める行為を禁止した規定である。
不当に求める行為については、青少年を対象とした児童ポルノ等の提供を求める行為のうち、青少年の健全な育成を阻害するおそれのあるものとして、青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させる等、その心身の未成熟に乗じて、不当な手段により行う、社会通念上非難を受けるべきものを対象としており、その行為の認定にあたっては、動機手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断しなければならない。

【解説】
1 本条は、刑法をはじめ関係法令だけでは規制できない部分を青少年の保護、健全な育成という面から取り上げて規定したものである。
2行為者の認識であるが、まず、年齢の知情性については、本条例は、第34条第6項で、条例上の特定の罰則規定については、年齢の知情性がなくとも処罰可能とする規定を置いているが、本規定は、第34条第6項の規定の対象外としている。つまり、要求を行う者に、相手が青少年だという認識がなかったと認められる場合は、処罰できないこととなる。本規定は、「当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること」を禁止するものであり、相手方が青少年であると認識できるような事実が全くない場合には適用できない。
次に、本条例が適用されることの認識であるが、本県内の青少年に要求したという認識は、原則として必要ない(昭和61年12月2日高松高裁判決) 。ただし、例えば、青少年が本県外にいるという積極的な認識がある場合には、慎重に判断すべきである。
3本条で使われる主な用語の意義、解釈は次のとおりである。
(1) 「何人」とは、国籍、住所、年齢、性別を問わず、全ての人(自然人)を指す。したがって、青少年が本条に定める行為を行った場合でも本条の違反に該当するが、第36条(適用除外)により、罰則は適用されない。
(2) 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等ということである。したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
また、どのような表現が「児童ポルノ等の要求」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ禁止法」という。)第2条第3項に該当する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録が提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要である。
(3) 「提供を行うように求める」とは、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得るべき状態に置く法律上事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、無体物としての電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
また、「求める」とは、青少年に対して、要求するのみならず、勧誘するなども含めた広い概念である。
(4) 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供
・・・


 あと半分を福島県からもらいました。

(4) 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者が、それを拒否されたと認識しているにもかかわらずということになる。したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが児童ポルノ等の提供を行うように求めた者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
(5) 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しないが、単に「威勢を示す」(軽犯罪法1-13) というよりは強度のものを指す。
なお、「威力」との差異に関し、公職選挙法第225条1号の「威力」とは「人の意思を制圧するに足りる勢力」、同3号の「威迫」とは「人の不安を抱かせるに足りる行為」をいい、両者の違いは、人の意思を制圧するに足りる程度の行為であるかどうかにあるものと解すべきであると判示している(昭和42. 2.4最高裁第2小法廷判決)。
(6) 「欺く」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることである。真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
(7) 「困惑させる」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。相手方に威力を示す場合義理人情の機微につけ込む場合、恩顧愛執の情義その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
(8) 「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
【罰則】
第1号又は第2号違反30万円以下の罰金
【関係法令】~ ~
○児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第2条3項(定
義)、第7条第2項(児童ポルノ提供) ~ ~
【参考資料】
昭和61年12月2日高松高裁判決(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関す
る条例(昭和38年香川県条例第50号)違反事件)
【争点~いわゆる迷惑行為防止条例、条例の場所的適用範囲】
本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA男方に電話をして、同人の妻B子に対し「あんたが好きです。会ってほしい。」などと反覆して申向け、もって同女に著しい不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年12月23日香川県条例50号) 10条、11条1項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であって、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接かつ現実的に香川県に関わりを持ったものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。~なお、本件条例12条は本件条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意を示しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者の範囲を直ちに限定することは相当ではない。~
また、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条例の存在、内容を了知することが不可能若しくは困難なことから、行為に際し違法性の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性の認識は必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性の認識に欠くる所はなかったものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない。
そうすると、本件につき本件条例が適用されないとした原判決には法令の適用に誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。
よって、刑訴法397条1項、380条により原判決を破棄し、同法400条但書を適用して当裁判所において更に判決する。

なお児童ポルノ要求行為については過失処罰はありません。

8 第6項の「過失がないときは、この限りでない」とは、第24条、第24条の2,第24条の3及び第25条第2項の規定に違反した者が、当該行為の相手が青少年であることを知らなかったことについて過失がなかった場合は、処罰されないということである。
「過失のないとき」とは、具体的事案ごとに提出された客観的資料の種類、その提出の際の状況、及びその確認方法の有無、難易等を総合的に検討して、社会通念に照らし、通常可能な調査が適切に尽くされているといえるか否かによって決せられることになる(昭和46年11月大阪高裁)。

「本罪におけるわいせつ概念を単純に「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と理解し、さらに、判例のように、社会通念に照らして客観的に「性的意味」や「その性的な意味合いの強さ」を判断するとした場合であっても、その具体的な判断方法が問われざるをえない」  嘉門優「法益論」 

 定義ではなくて、要素で説明を試みる感じ。
 精液掛けるとか、児童に撮影送信させるとかはどうでしょうか?

第四章 強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について…252
第一節 問題の所在
第二節 強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について
1 わいせつ概念(253)
2 重大な性的侵襄性(254)
3 暴行・脅迫要件との関係(255)
第三節 わいせつ行為の類型化
第四節 わいせつ行為の判断基準
1 性的部位への接触型(260)
2非性的部位への接触型(261)
3被害者に触らせる行為(263)
4非接触型(264)
第五節 おわりに
・・・
2 重大な性的侵襄性
しかし、現在、以上のような伝統的な定義は放棄されるべきだといわれている276。なぜなら、「性欲を刺激・興奮させ」や「性的蓋恥心を害する」という表現は、幼児など性的蓋恥心・判断力を持たない者に対する保護が及ばないかのような誤った印象を与えるからだというのである277。そのため、わいせつな行為を単純に「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と定義すべきだと主張されている278.以上の批判に加えて、前述のとおり、最高裁判例変更を行い、性的意図は不要だとし、わいせつ行為の判断について、「社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断」すべきだとした(最大判平成29年11月29日刑集71巻9号467頁)。このようにわいせつ概念の変更の要請が現在非常に高まっているといいうる。
ただし、仮に、本罪におけるわいせつ概念を単純に「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と理解し、さらに、判例のように、社会通念に照らして客観的に「性的意味」や「その性的な意味合いの強さ」を判断するとした場合であっても、その具体的な判断方法が問われざるをえない。学説上、判断に当たっては、
( i )関係する部位、
( ii )接触の有無・方法、
(iii)継続性、
(iv)強度、
(v)性的意図、
(vi)その他の状況
が、総合的に考慮されなければならないといわれている279.本稿もこの結論に同意するものであるが、なぜこれらの要素が考慮対象とされるべきなのか、さらには、それぞれの要素が性的侵襲の「重大性」判断にどうかかわるのかという点についてさらに検討する必要があると思われる。
この検討に当たって、保護法益や性的侵害の内実について抽象論を繰り広げても、望ましい解答がえられるとは考えにくい。そこで、強制わいせつ罪については多くの裁判例がこれまで集積されてきていることから、次節において、本罪が認められた裁判例をその行為態様ごとに類型化し、その性的侵害の内実を分析するという手法を採用することとしたい。

 被害者は,一連の被害状況を具体的に供述している上,その内容に不自然,不合理な点はない・・・捜査段階から一貫した供述をしていることからすると,被害者の証言が記憶違いによるものとは考え難い。また,嘘をつくような事情も認められない。よって,被害者の供述は信用できる。 これに対して,被告人は,・・との発言はしていないなど不自然さが否めないものである。また,自身の記憶について,・・犯行状況に関する供述にはあいまいな点が多い上に,被告人が上記状況について供述をしたのは,少なくとも本件から3か月以上経過した後であるこ

 事実認定を争うと、こういう感じで否定されます。






裁判年月日 平成30年10月 1日 裁判所名 甲府地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)100号 ・ 平30(わ)141号 ・ 平30(わ)196号 ・ 平30(わ)253号
事件名 強制わいせつ致傷、強制わいせつ、強制わいせつ未遂被告事件
文献番号 2018WLJPCA10016002
 上記の者に対する強制わいせつ致傷,強制わいせつ,強制わいせつ未遂被告事件について,当裁判所は,検察官小串依里及び同宮上泰明並びに国選弁護人板山俊一(主任)及び同大西達也各出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由

 (犯罪事実)
 被告人は,
 第1 自転車で通行中のA(当時45歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,平成29年5月7日午後9時42分頃,a市●●●上において,同人に対し,いきなりその背後から同人の身体をつかんで引っ張るなどした上,抵抗する同人の首を絞めるなどし,「黙らないと殺すぞ」などと言うなどの暴行脅迫を加え,その着衣の上から同人の両胸を揉み,陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をした。
 第2 徒歩で通行中のB(当時17歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,同年12月2日午後8時40分頃,山梨県b市●●●において,同人に対し,いきなり背後からその口を手で塞ぎ,仰向けに寝転んだ状態の同人の脇にしゃがみ込んで手に持っていたカッターナイフを示し,「抵抗するな」などと言うなどの暴行脅迫を加え,強いてわいせつな行為をしようとしたが,同人が抵抗したため,その目的を遂げなかった。
 第3 C(当時19歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,同月4日午後11時30分頃,同市●●●において,同人に対し,いきなり背後から抱き付き,その口を手で塞ぐなどし,同人を路上に倒した上,「殺すぞ」などと言い,その顔面を拳で数回殴り,同人の頭部等に膝を乗せて路上に押し付けるなどの暴行脅迫を加えて,着衣の上から同人の胸を揉み,陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をし,その際,前記一連の暴行により,同人に全治約10日間を要する顔面部打撲傷の傷害を負わせた。
 第4 ランニング中のD(当時28歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,平成30年2月28日午後10時45分頃,同市●●●上において,同人に対し,その背後から同人の身体に腕を回して押さえ付け,その首を腕で締め付けるなどした上,同人を路上に投げ倒してその身体を路面に打ち付けさせ,うつ伏せになっている同人の服をつかんで強く揺さぶりながら拳をその背中付近に当てるなどの暴行を加えたが,同人が大声を上げるなどしたため,その目的を遂げず,その際,前記一連の暴行により,同人に加療約10日間を要する左側胸部挫傷等の傷害を負わせた。
 (証拠)
 (争点に対する判断)
 1 本件の争点
 本件の争点は,①第2について,被告人が被害者に対してカッターナイフを示した具体的な態様と,②第4について,被告人が被害者の胸部付近を拳で殴ったか否かである。
 2 争点①(第2でカッターナイフを示した具体的な態様)について
 被害者は,仰向けに寝転んだ状態で被告人を蹴るなどして抵抗していたところ,被告人が自分の右腰辺りに回り込んでしゃがみ込み,カッターナイフを出して「カッターを持ってるんだぞ,抵抗するな」などと脅してきた旨供述する。
 被害者は,一連の被害状況を具体的に供述している上,その内容に不自然,不合理な点はない。カッターナイフを示された状況について,刃物が怖かったのでその場面の記憶に間違いはないと述べており,捜査段階から一貫した供述をしていることからすると,被害者の証言が記憶違いによるものとは考え難い。また,嘘をつくような事情も認められない。
 よって,被害者の供述は信用できる。
 これに対して,被告人は,寝転んだ被害者に蹴られて後ろに下がった際,被害者も立ち上がり,2メートルくらい離れて向き合った状態になったときにカッターナイフを出して示した旨供述する。
 しかし,被告人の供述は,信用できる被害者の供述に反する上,被害者が抵抗している最中ではなく距離を置いて向かい合った状態になって初めてカッターナイフを出したとか,犯行現場が暗く見えにくいにもかかわらずカッターナイフを持っているとの発言はしていないなど不自然さが否めないものである。また,自身の記憶について,カッターナイフを示したのは本件だけなので印象に残っていると述べるものの,犯行状況に関する供述にはあいまいな点が多い上に,被告人が上記状況について供述をしたのは,少なくとも本件から3か月以上経過した後(上記第4の事件で初めて逮捕された平成30年3月5日以降)であることからすれば,その記憶の正確性には疑問がある。
 よって,被告人の供述は信用性を欠くといわざるを得ない。
 信用できる被害者の供述によれば,被告人は,仰向けに寝転んでいる被害者の右腰辺りにしゃがみ込んでカッターナイフを同人に示したことが認められる。
 3 争点②(第4で被害者の胸部付近を拳で殴ったか否か)について
 被害者は,うつ伏せの状態で大声で助けを呼んでいたところ,被告人に膝でお尻を押さえ付けられ,背中や体の側面部を全体的にぽこぽこぽこと十数回くらい連続して殴られたり,服を引っ張られてぐちゃぐちゃにされたりした,殴られたというのは,拳を見たわけではないが,背中に当たった硬いものの感覚から拳であると感じた旨供述する。
 被害者は,一連の被害状況を具体的に供述している上,その内容に不自然,不合理な点はない。被害直後から一貫した供述をしており,記憶違いによるものとは考え難く,嘘をつくような事情も認められない。
 よって,被害者の供述は信用できる。
 もっとも,被害者は,被告人が拳で殴っているのを直接見たわけではなく,背中に当たった硬いものの感覚から拳で殴られたと感じたと述べており,その程度等についても,ぼこんぼこん,ではなくて,ぽこぽこぽこぽこぽこ,という感じであった,殴りつつ服を引っつかみつつという感じであったと述べるものである。さらに,被害者の左側胸部の怪我は投げ倒されて左側面を打ち付けた際に負ったことが否定できないものであり,背中及び右側胸部には怪我が認められないことも併せ考えれば,被告人が被害者の尻を膝で押さえ付け,そのダウンジャケットをつかんで強く揺さぶりながら,その背中に拳を当てたにとどまる可能性も否定できない。
 よって,被告人が被害者の胸部付近を拳で殴ったとまでは認定できず,うつ伏せになっている被害者の服をつかんで強く揺さぶりながら拳をその背中付近に当てたとの認定にとどめることとする。
 なお,被告人は,被害者に自分の拳が当たった記憶はないと供述する一方で,被害者のダウンジャケットを引っ張ったり揺さぶったりした際に拳が当たったため被害者が殴られたと感じたのかもしれないとも述べており,必ずしも被害者の供述と矛盾する供述をしているわけではないから,被告人の供述が上記認定を妨げるものとはならない。
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は平成29年法律第72号による改正前の刑法176条前段に,判示第2の所為は刑法180条,176条前段に,判示第3及び第4の各所為はいずれも同法181条1項(176条前段)にそれぞれ該当するところ,判示第3及び第4の各罪について所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役5年に処することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 甲府地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 丸山哲巳 裁判官 望月千広 裁判官 種村仁志)

学校盗撮のひそかに製造罪で、「女子生徒多数」という当初訴因が、「別表記載の通り合計177名」に変更させられた事例(某地裁h28)

 ひそかに製造罪って、3~4時間撮影してて、児童がABCDEF・・・と出てくる訳ですが、個人的法益の罪と考えると、個人特定する必要があります。
 罪数的には、ABCDEF・・・に対する各ひそかに製造罪が成立して、観念的競合なんでしょうね。

別表
A12
B12
C13
D14
E14