不同意性交致傷で求刑9年宣告10年(東京地裁r6.7.24)

不同意性交致傷で求刑9年宣告10年(東京地裁r6.7.24)


 DBで検索した痕跡がありますが、「本件犯行は同種事案(路上類型、性交の点未遂、凶器等あり、傷害の程度2週間以内、被害者の年齢13歳以上)の中でも重い部類に属すると評価するのが相当な事案であり、特に上記のとおりの被告人に対する責任非難の大きさに照らすと、検察官の求刑はやや軽いと言わざるを得ない。」で、9年じゃなく10年が出てくるんですかねえ




判年月日  令和 6年 7月24日  裁判所名  東京地裁 
事件番号  令6(合わ)74号
事件名 
文献番号  2024WLJPCA07246002
出典Westlaw Japan
上記の者に対する不同意性交等致傷被告事件について、当裁判所は、検察官小沼智及び同小方もも並びに国選弁護人W1(主任)及び同W2各出席の上審理し、次のとおり判決する。  
主文
 被告人を懲役10年に処する。
 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は、通行中の女性を同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせて性交等をしようと考え、令和6年2月26日午後8時15分頃、東京都墨田区〈以下省略〉先○○緑地土手上の路上において、別紙記載のA(当時15歳)に対し、いきなりその背後から抱き付き、その口を手で塞いで同人を同土手の斜面に押し倒した上、「殺すぞ。」などと言ってその首元にカッターナイフを突き付け、頭部付近を殴るなどの暴行、脅迫を加えたことにより同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、同所において、同人の胸を着衣の上から手でもみ、同人と性交等をしようとしたが、通行人の存在に気付いてその場から逃走したため、その目的を遂げず、その際、前記暴行により、同人に全治まで約2週間を要する頭部打撲割創等の傷害を負わせた。
 (累犯前科)
 被告人は、平成28年12月26日山形地方裁判所強姦罪により懲役6年に処せられ、令和4年10月15日その刑の執行を受け終わったものであって、この事実は検察事務官作成の前科調書(職1)によって認める。
 (法令の適用)
 (量刑の理由)
 被告人は、強姦未遂と強姦の同種前科2犯を有するところ、直近の刑の執行終了後僅か1年4か月余りで本件犯行に及んだばかりか、これまでの経験を踏まえてゴム手袋等を準備して犯行に臨んでいる。2度の服役での学びを反省と更生の機会にするどころか、出所後ほどなくして、若い女性と無理やり性交するという欲求を満たすべく犯行の手口をエスカレートさせていったという本件の経緯は、同種事案の中でも悪質性が際立っている点といえ、被告人については強い非難が妥当する。犯行態様も、被害者の後を付けて周囲に人気がなくなるのを待って本件犯行に及び、逃れようと激しく抵抗する被害者を所持していたカッターナイフで殴打したり押さえつけたりするなどというものであり、被告人の強い犯意もうかがえる。気丈に抵抗し続けた本件の被害者だからこそ、着衣の上から胸をもまれるわいせつ被害にとどまったものの、性交被害にまで至る現実的な危険性が認められる態様である。そうすると、性交の点が未遂にとどまり、傷害結果そのものが比較的軽いことを踏まえても、本件は、被害者の性的自由や身体の安全を大きな危険に晒し、恐怖等の多大な精神的苦痛を与えて高校生になる前の被害者の人生を一変させる重大な犯行というべきである。実際に、被害者やその母は心情の意見陳述において自らの置かれた苦しい立場や心境を述べており、当然ながら被告人の厳罰を求めている。
 以上にみた犯情からすると、本件犯行は同種事案(路上類型、性交の点未遂、凶器等あり、傷害の程度2週間以内、被害者の年齢13歳以上)の中でも重い部類に属すると評価するのが相当な事案であり、特に上記のとおりの被告人に対する責任非難の大きさに照らすと、検察官の求刑はやや軽いと言わざるを得ない。
 そうすると、被告人が犯行を認めて被害者に対する謝罪や反省の弁を述べていること、更生支援計画に従う旨約束していることなど被告人に有利な一般情状を考慮に入れ、検察官の求刑も踏まえて慎重に検討しても、本件犯行に対する責任としては判示の期間の実刑が相当であると判断した。
 よって、主文のとおり判決する。
 (求刑―懲役9年、弁護人科刑意見―懲役6年)
 令和6年7月26日
 東京地方裁判所刑事第15部
 (裁判長裁判官 香川徹也 裁判官 四宮知彦 裁判官 橋詰沙羅)