児童ポルノ製造につき共謀関係にある共犯者に「提供」するために製造する行為は、提供目的製造罪か、姿態をとらせて製造罪か
共犯者(他者に提供する目的はない)に送信するために撮影した場合は、姿態をとらせて製造罪の共謀共同正犯だよね。
某支部令和6年5月21日
強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
(罪となるべき事実)
被告人は、
第1 A(当時○歳)が13歳未満の者であることを知りながら、Bと共謀の上、同人に提供する目的で、令和年月日午後時39分頃から同日午後時42分頃までの間、において、Aに衣服を脱がせてその胸部及び陰部を露出する姿態をとらせ、これを被告人が使用する携帯電話機で撮影し、その画像データ2点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録して保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
(法令の適用)
罰 条
判示第1及び第2の各行為のうち
各強制わいせつの点 いずれも、刑法60条、令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
各児童ポルノ製造の点 いずれも、刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条3項、2項、2条3項3号
科刑上の一罪の処理 判示第1及び第2の罪について
いずれも、刑法54条1項前段、10条(それぞれ重い強制わいせつの罪の刑で処断)
1 「提供」概念から
児童ポルノ法の「提供」は、児童ポルノを相手方において利用し得べき状態に置くことをいう。
「相手方において利用可能にする」というのは、相手方というのは「犯人以外の者」であるから、犯人以外の者において利用可能にするという意味である。製造犯人は手元にあって既に利用可能であるからである。製造犯人間での「提供」は観念できない。
既遂時期を見ても、必ずしも相手方が現に受け取らなくても提供罪が成立するとされるが、製造犯人は、手元に持っているので、相手方が利用すべき状態かとか、受け取った状態とかが観念できない。既遂にならない。
島戸の解説によれば、提供は他人に利用可能な状態にする行為とされており、共犯者として利用可能になっている者への送信は含まない。
島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
製造犯人が児童ポルノを動かすことはあり得る。行為者が右手から左手に持ち替えるとか、自宅外の倉庫に送るとか、オンラインストレージに置くとか、自分あてにメールで送信する等。しかし、それは、製造犯人の実力支配下である限りは、所持・保管であって、提供ではない。共同正犯の場合も同じである。
坪井麻友美「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」H26_捜査研究 第63巻第9号(2014年9月号)
参考までに、刑法175条の「頒布」は、不特定又は多数への現実の交付を言うと解され、「不特定多数」というのであるから、頒布犯人以外の者への交付をいうと解される。
条解刑法
制定時の児童ポルノ法は、頒布・販売罪と称していたが、不特定又は多数の者への譲渡を犯罪化したもので、特定かつ少数への譲渡は犯罪化されておらず、頒布販売行為者自身も除外されていた。
森山野田「よくわかる児童買春児童ポルノ禁止法」h11版3版
2 共謀共同正犯からの説明
Bは直接製造行為に関与して居らず、共謀共同正犯*1として、製造罪とされている。
この場合、実行者とは同心一体の関係にあるから、実行者が共謀者に画像を送ったとしても、右手から左手に持ち替えたようなもので、児童ポルノが動いたことにならないから「提供」とは言わない。
条解刑法
3 不可罰的事後行為
製造共犯者間でのやりとりは、製造に当然伴う所持行為として別途所持罪を構成しないし、もし処罰するとしても、単純所持罪(7条1項)と評価される。
4 共謀共同正犯による製造罪の裁判例
共謀して製造という事案もあるのだが、姿態をとらせて製造罪(4項)か第三者への提供目的製造罪(7項)で立件されている。共同正犯者間での提供目的製造罪(3項)の事案はない。
大津地裁r5.3.20
年月日 令和 5年 3月20日 裁判所名 大津地裁
事件番号 令4(わ)240号 ・ 令4(わ)284号 ・ 令4(わ)307号 ・ 令4(わ)348号 ・ 令4(わ)367号
文献番号 2023WLJPCA03206005
【罪となるべき事実】
第2 被告人は、Aと共謀の上、B(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年6月26日午後6時18分頃、前記被告人方において、同児童に対し、被告人が同児童の胸部をなめ、手指で弄ぶ姿態及びその乳房を露出させる姿態をとらせ、これをAが使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その動画データ1点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した(令和4年8月12日付け起訴状記載の公訴事実第1関係)。
【法令の適用】
罰条 判示第1の行為 刑法60条、176条後段
判示第2の行為 刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号
大津地裁r4.11.22
■28310713
大津地方裁判所
令和04年11月22日
(罪となるべき事実)
第2 被告人は、Aと共謀の上、X(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年6月26日午後6時18分頃、前記A方において、同児童に対し、Aが同児童の胸部をなめ、手指で弄ぶ姿態及びその乳房を露出させる姿態をとらせ、これを被告人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その動画データ1点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した(令和4年8月12日付け起訴状記載の公訴事実第1関係)。
第4 被告人は、Aと共謀の上、X(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年3月5日午前0時6分頃から同日午前6時26分頃までの間に、前記A方において、同児童に対し、被告人が同児童の腕を掴みながらAの陰茎を手淫させる姿態、Aが同児童の胸部や陰部をなめ、手指で弄ぶ姿態及び同児童の乳房、陰部を露出させる姿態をとらせ、これをAが使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その動画データ4点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した(令和4年8月12日付け起訴状記載の公訴事実第2関係)。
(法令の適用)
罰条
判示第1の行為 刑法60条、176条後段
判示第2の行為 刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号
判示第3の行為 刑法60条、179条1項
判示第4の行為 包括して刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号
尼崎支部r3.7.5*4
那覇地裁r6.2.2*5
東京地裁 r6,1,29*6
松江地裁 r5.9.27
■28313521
松江地方裁判所
令和05年09月27日
(罪となるべき事実)
第1(令和5年3月20日付け公訴事実第1)
被告人両名は、共謀の上、被告人Aの長女であるBが18歳に満たない児童であることを知りながら、別紙2(別表1)記載のとおり、令和2年6月30日午後10時32分頃から令和4年12月15日午後11時13分頃までの間、29回にわたり、別紙2(別表1)記載のD所在被告人A方ほか1か所において、Bにその乳房又は陰部を露出した姿態をとらせ、被告人Aが、これらを同人使用の撮影機能付きスマートフォン又はB使用の撮影機能付きスマートフォンで撮影した上、その頃、各所において、各静止画データ合計29点を、被告人A又はBが使用するスマートフォンの内蔵記録装置に記録させてそれぞれ保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識できる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
1 被告人Yの関係
(1) 罰条
判示第1の各所為 別紙2(別表1)記載の番号ごとに(ただし、〈1〉1及び2、〈2〉3及び4、〈3〉5及び6、〈4〉7及び8、〈5〉10及び11、〈6〉12及び13、〈7〉15ないし17、〈8〉18及び19、〈9〉20及び21、〈10〉22ないし24、〈11〉25ないし27、〈12〉28及び29は、それぞれ包括して)刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
判示第2の所為 刑法65条1項、60条、令和5年法律第66号による改正前の刑法179条2項、177条前段
判示第3の所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段、2条3項3号
(2) 刑種の選択 判示第1及び第3についていずれも懲役刑を選択
(3) 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
(4) 未決勾留日数の算入 刑法21条
2 被告人Aの関係
(1) 罰条
判示第1の各所為 別紙2(別表1)記載の番号ごとに(ただし、〈1〉1及び2、〈2〉3及び4、〈3〉5及び6、〈4〉7及び8、〈5〉10及び11、〈6〉12及び13、〈7〉15ないし17、〈8〉18及び19、〈9〉20及び21、〈10〉22ないし24、〈11〉25ないし27、〈12〉28及び29は、それぞれ包括して)刑法60条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
判示第2の所為 刑法60条、令和5年法律第66号による改正前の179条2項、177条前段
(2) 刑種の選択 判示第1についていずれも懲役刑を選択
(3) 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
(4) 未決勾留日数の算入 刑法21条
(5) 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書