児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「性犯罪についての捜査資料から被害者の少女数人の体の画像をスマホで撮影」する行為は、児童ポルノ製造罪には当たらない。

 製造していることは間違いないわけですが、立法者解説では、所定の目的(提供・陳列)もなくただ複製行為するだけというのは製造罪に当たらないと説明されています。
 こっそり複製しているので「ひそかに製造罪(7条5項)」になるように読めますが、

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
7条5項
前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 判例(最決r1.11.12)は、一次製造者(撮影者)が、複製(二次製造)した場合にのみひそかに製造罪になるとしています。この判例はそう読むのです。

判例番号】 L07410103
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷決定/平成31年(あ)第506号
【判決日付】 令和元年11月12日
【判示事項】 ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否
【判決要旨】 ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は,同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる。
【参照条文】 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2-3
       児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7-2
       児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7-5
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集73巻5号125頁
       裁判所時報1735号2頁
       判例タイムズ1471号18頁
       判例時報2441号61頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 法学セミナー65巻6号110頁
       刑事法ジャーナル64号117頁
       ジュリスト1549号97頁
       ジュリスト1570号135頁
       論究ジュリスト35号226頁
       判例時報2467号157頁
       警察公論75巻11号193頁
       警察公論76巻4号84頁
       法曹時報73巻5号1007頁
       警察学論集74巻9号147頁

       主   文

 本件上告を棄却する。

       理   由
 弁護人奥村徹の上告趣意のうち,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条5項の規定について憲法21条1項違反をいう点は,児童ポルノ法7条5項が表現の自由に対する過度に広範な規制であるということはできないから,前提を欠き,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は,同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たると解するのが相当である。
 これと同旨の原判断は正当として是認できる。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 木澤克之 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 山口 厚 裁判官 深山卓也)

判例タイムズ1471号18頁
 3 5項製造罪と同じように製造手段が限定されている児童ポルノ法7条4項の製造罪(児童に全裸姿態等をとらせ,これを記録媒体等に描写することにより児童ポルノを製造する罪。以下「4項製造罪」という。)においても,本件と同様,二次的製造行為について同罪が成立するか否かという問題があり,4項製造罪に関する立法関与者の解説では,複製は除外されるとの見解が示されていた(森山眞弓ほか編著『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』100頁,島戸純「『児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律』について」警察学論集57巻8号96頁)が,最高裁第三小法廷平成18年2月20日決定・刑集60巻2号216頁,判タ1206号93頁は,「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録にかかる記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たる」として,3項(現4項)製造罪の成立を認める判断を示した。
 5項製造罪においても,4項製造罪と同様,複製の問題が生ずることが予想されたところ,立法関与者の解説を見ると,5項製造罪は,手段の限定がされているため,盗撮により製造された児童ポルノを後に複製する行為は,基本的に本条項の処罰対象ではないと考えられるが,少なくとも,撮影者本人による「製造」として予定される一連の行為までもが5項製造罪の対象から除外されるものではないと考えられるとの見解が示され,平成18年判例が紹介されている(坪井麻友美「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報66巻11号57頁)。

https://news.livedoor.com/article/detail/24978984/
50代の検察事務官の男は性犯罪についての捜査資料から被害者の少女数人の体の画像をスマホで撮影し持っていた疑いが持たれている。
画像は男が現在とは違う部署で担当していた性犯罪の捜査資料にあったものとみられていて、調べに対し男は容疑を認めているという。