「児童ポルノ」の意義
児童ポルノ法における「児童ポルノ」は、同法2条3項において、「写真、電磁的記録……に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」と定義されている。
そして、ここでいう「児童の姿態」については、法文上直接明示されてはいないものの、平成11年の児童ポルノ法制定時から、実在する児童の姿態を意味し、したがって実在しない児童の姿態を描写したものは「児童ポルノ」に該当しないと解されてきた5)。
その実質的理由として、児童ポルノ法は、「児童ポルノ」について、
それが児童を性の対象とする風潮を助長するのみならず、描写の対象となった児童の人権を害するものであるという観点から、必要な規制を行うものであるところ、実在しない児童を描写したポルノについては、描写の対象となった児童の人権を害するということはできないという説明がなされているが6)、児童ポルノ法2条1項は、「この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。」と規定して、「児童」の範囲を年齢によって画しており、年齢は、出生の日から起算し、所定の方法によって計算するものである(年齢計算二関スル法律1項、2項)ことからすると、「児童」が現に実在する人物に限られ、「児童ポルノ」も実在する児童の姿態を描写したものに限られると解すべきことは、文理上明らかであるといえる。
本決定は、児童ポルノ法2条,項の規定に言及した上で、同条3項
の「児童ポルノ」の意義について、従来の解釈と同様に、実在する児童の姿態を描写したものに限られると解すべきことを明示したものである。