児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の取締り方針|取扱注意|

 単純所持罪については、こういう通達が出てます。
 不開示の部分も、昇進試験雑誌kosuzoなどをみれば垣間見えます。

自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の取締り方針|取扱注意|
原議保存期間1年未満(平成27年12月31日まで)
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正
する法律(平成26年法律第79号。以下「改正法jという。)により新設された「自己の性的好奇心を満たす目的」による児童ポルノ所持罪(第7条第1項)(以下「自己性的目的所持罪jという。)の罰則が、本年7月15日から適用開始となります。
自己性的目的所持罪については、改正法案を審議した参議院法務委員会において、「児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと」、「第7条第1項の罪の適用に当たっては、同項には捜査権の濫用を防止する趣旨も含まれていることを十分に踏まえて対応すること」に政府は格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされたことから、以下の方針に基づく適正な取締り及び関係部署への指示を徹底願います。
1 基本方針
自己性的目的所持罪の取締りは、以下の基本方針に基づき行うこととする。
○ 児童を性的搾取・性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用
児童ポルノ禁止法第3条(適用上の注意)は、「この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。」と規定している。また、参議院法務委員会でも、この規定と同趣旨の附帯決議がなされていることから、この基本原則に則り自己性的目的所持罪の罰則の適用に当たること。
○ 製造・提供罪等、より重い罰則の適用
児童ポルノの製造、提供、公然陳列等の事案については、自己性的目的所持罪ではなく、より重い本来の罰則を適用することを原則とする
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kosuzo2017年8月号
3立件時の検討事項
原則として、児童ポルノ自己性的目的所持罪の適用を検討する前に、強制わいせつ等の刑法犯や、児童ポルノの製造、提供、公然陳列等の、より罰則の重い犯罪の適用を検討する。

○客観的・外形的証拠に基づいた適正な取締りの徹底
自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的J及び「自己の意思に基づき所持するに至った」ことを、できるだけ客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、被疑者の供述を裏付ける客観的・外形的証拠(所持態様・分量・内容、通信ログ・内容等)を確保すること
警察庁少年課に対する事前協議の徹底
既述のとおり、自己性的目的所持罪については、参議院法務委員会において、捜査権の濫用を防止することについて格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされるなど、本罪の適用は慎重に行わなければならない。こうしたことから、警察として全国的に斉一な取締りが実施されるよう、平成26年6月25日付け少年課長通達「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に基づく取締りの報告について」に基づき、確実に警察庁少年課(福祉犯係[警電■■■■■■■■■■■■■■■■|)に事前報告を行い、協議すること
2対象事犯
児童を性的搾取・性的虐待から守るとしづ児童ポルノ禁止法の目的及び参議院法務委員会附帯決議を踏まえ、「児童に対する新たな性的搾取文は性的虐待の防止J又は「供給者側の犯行の抑止」に繋がる以下の事案を「重点検挙対象事犯」とする。
なお、以下に示す重点検挙対象事犯は、重点となる対象を示したものであり、重点対象であることの立証(....................)を求めるものではない。また、重点検挙対象事犯に該当しない事案であっても、悪質なものについては、検挙対象となり得る(下記{自己性的目的所持罪取締り方針概念図】参照)
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3 任意廃棄を含む注意警告の措置に留める事案
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どのような事案について警告等の措置に留めるべきかは、事案ごとに警察庁少年課との協議において判断する。

kosuzo2017年8月号
4適用を検討するべき福祉犯の罪名、要件及びその立証要点
(1)適用を検討するべき罪名
児童ポルノ自己性的目的所持罪(児童買春等処罰法7条1項)
(2)要件
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る)
(3)立証要点
ア捜索・差押え
被疑者の居宅など関係先に対する捜索・差押えを確実に実施し、本件に関係する証拠品を押収・精査して本件犯行を裏付ける捜査を行う。
また、児童ポルノ画像については確実に押収して、以後の流通・閲覧防止を図る。
イ被害児童の特定
児童買春等処罰法における「児童」とは、18歳に満たない実在の者をいうことから、本件児童ポルノの被写体となる被害児童の特定に向けた捜査を徹底する。
なお、被害児童が特定されない場合であっても、医師の年齢鑑定により児童性(18歳未満の児童であること)が判定されれば、立件することは可能である。
児童ポルノ該当性
当該画像を見分して、児童ポルノに該当するか否かを判断する。例えば、本件画像について、児童買春等処罰法2条3項3号の児童ポルノ該当性を判断する場合には、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臂部又は胸部)が露出され又は強調されているものであるか、性欲を興奮させ又は刺激するものであるか等について慎重に判断する。
エ年齢知情性
被疑者において「被害児童の年齢が18歳未満である」という認識が必要であるため、この点を鋭意取り調べるとともに、各種裏付け捜査を徹底する。
オ客観的・外形的証拠に基づいた適正な取締りの徹底
「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づき所持するに至った」ことを、できるだけ客観的・外形的証拠により立証することが必要である。
本件の場合、被疑者の供述があれば、それを裏付ける又は否定する客観的・外形的証拠(所持態様・分量・内容、通信ログ・内容等)を確保する。

KOSUZO 2017教旬ガイドブック
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノ所持した者に当たらない場合
○嫌がらせ等によりメールで送り付けられた場合
○ネットサーフィンによる意図しないアクセスの場合
○パソコンがウイルスに感染し、勝手に児童ポルノをダウンロードした場合
○インターネット上の掲示板に児菫ポルノが掲載された場合の掲示板やサーバの管理者の場合
(4)職務質問に伴う所持品検査で児童ポルノと思われるも
のを発見した場合の自己性的目的所持罪による現行犯逮I捕は、被写体が18歳未満かどうかは医師の鑑定又は被写~、体の特定を待たなければはっきりしないこと、「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づいて所持するに至った者」を客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、それらが明白でなければ困難である。
(5)警察庁では、自己性的目的所持罪の適用に当たっては、全ての事案について事前報告を求めていることから、認知した段階で本部少年担当課に速報して指示を受ける。