児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ベテラン裁判官は「今回の事案では、再犯の恐れがある分、逃亡の恐れも高いと考えて保釈請求を却下すべきだった」と話す。

 控訴保釈なので裁量保釈しかありません。
 逃亡しないで再犯する奴もいるので、逃亡のおそれありということにならないでしょう。

第90条〔裁量保釈〕
裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

保釈中に「強姦再犯」 3件で懲役9年判決後 26歳被告を起訴
2016.06.12 読売新聞東京朝刊
 ◆大阪地裁の判断に疑問も
 連続強姦(ごうかん)事件で大阪地裁から懲役9年の判決を言い渡され、控訴中に保釈された被告の男が、保釈の2週間後に東京都内で別の女性を暴行したとして、強姦罪などで起訴されていたことがわかった。勾留された被告が保釈される割合は年々増えているが、再犯率の高い性犯罪で長期の実刑を言い渡しながら保釈を認めた大阪地裁の判断に対し、裁判官の間でも疑問の声が上がっている。
 関係者によると、無職被告(26)は2013年9月〜15年4月、大阪市内の自宅(当時)に20歳代の女性3人を誘い込み、暴行したとして強姦致傷罪で大阪地裁に起訴された。
 同地裁は、今年1月25日に開かれた裁判員裁判の初公判の10日前に被告を保釈。初公判で被告は起訴事実を認めた。同地裁の長瀬敬昭(たかあき)裁判長は同29日、懲役9年の実刑判決を言い渡し、被告を収容したが、被告側は量刑を不服として即日控訴し、改めて保釈を請求。長瀬裁判長は2月1日、保釈を許可した。
 だが、被告は、その2週間後の15日に東京都新宿区のホテルで別の20歳代女性を監禁、暴行したとして、3月に強姦、監禁罪で東京地裁に起訴された。
 大阪地裁判決によると、被告は13、15年の事件で、いずれも女性をスカウトし、面接などと称して自宅に誘っていた。女性の顔を殴って骨折させたり、腹部にスタンガンを押しつけたりしたほか、暴行場面を撮影したこともあり、検察側は論告で「再犯の恐れがある」と指摘。判決も「常習的かつ手慣れた犯行」と指摘していた。
 被告は東京の事件でも、携帯電話で「モデル募集」などとウソのメッセージを送信。女性をホテルに誘い込み、暴行に及んだとして起訴されている。
 大阪の事件では、大阪高裁が今月7日、被告側の控訴を棄却。東京の事件で勾留中の被告は「合意があった」などと起訴事実を否認しているとみられ、東京地裁で現在、公判前整理手続きが続いている。
 読売新聞が今回の保釈について大阪地裁に見解を聞いたところ、同地裁は並木正男所長名で「個別の事案についてコメントする立場にない」と答えた。

 ◆性犯罪で長期刑 保釈は異例
 「3人の被害女性と示談が成立していて証拠隠滅の恐れが小さく、被告も犯行自体は認めているから逃げないと思ったのだろう」。保釈を認めた長瀬裁判長の判断について、あるベテラン裁判官はそう推測する。

 大阪地裁判決は、被告の犯行の悪質性を指摘しつつ、示談が成立して総額700万円を支払ったことや、反省の姿勢を示していることを被告に有利な事情として挙げていた。

 日本の刑事司法は、否認した被告を保釈しない運用が「人質司法」と批判され、冤罪(えんざい)の要因とされてきた。だが、2009年開始の裁判員制度を見据えて05年に公判前整理手続きが導入されると、早い段階で争点が固まるため保釈の判断がしやすくなり、軽微な事件を中心に保釈が増加。地裁・簡裁が1審判決前に保釈を認めた割合は、04年の12・1%から、15年は25・7%に上昇した。

 ただ、法定刑の下限が懲役1年以上の事件は、刑事訴訟法上、裁判所が「保釈するべき特別な事情があり、逃亡などの恐れもない」と判断しない限り、保釈できない。このため、下限が懲役5年の強姦致傷罪のように、長期の実刑が言い渡される事件での保釈は極めて異例だ。しかも性犯罪の再犯率は高く、15年の調査では、08〜09年に性犯罪で有罪判決を受けた被告の32%に性犯罪の前科があった。

 ベテラン裁判官は「今回の事案では、再犯の恐れがある分、逃亡の恐れも高いと考えて保釈請求を却下すべきだった」と話す。

 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「保釈率を上げることは司法の健全化のために不可欠だが、常習性の高い性犯罪事件で長期の実刑となる被告の保釈には慎重になるべきだ」と指摘する。

 長瀬裁判長は1994年任官。刑事裁判の経験が長く、最高裁司法研修所の教官を務めたこともある。