実務上、罰金を即日納付すれば釈放するという運用になっていますが、根拠規定を捜してみました。
高校教諭 罰金20万円=長野
佐久区検は25日、容疑者(36)(東御市新屋)を東御市青少年健全育成条例違反で佐久簡裁に略式起訴した。簡裁は同日、罰金20万円の略式命令を出し、容疑者は即日納付した。
読売新聞社
飲酒運転で事故 警官を略式起訴=広島
広島区検は19日、路線バスに追突後、飲酒運転が発覚して、道路交通法違反(酒気帯び運転)容疑で現行犯逮捕された容疑者(58)について、新たに乗客1人にけがを負わせたことがわかったとして、同法違反、自動車運転過失傷害罪で広島簡裁に略式起訴した。同簡裁は同日、罰金50万円の略式命令を出し、容疑者は即日納付した。
[読売新聞社 2012年4月20日(金)]
「罰金払えない。」なんていうと正式起訴されちゃうこともあるでしょうが、規定を見る限り、略式命令が送達されると、勾留状が失効するし、罰金滞納を理由に勾留することもできません。
「罰金はすぐ払う。でも手持ちがないので、近日中に必ず払う」と言ってみれば、納付しなくでも釈放されうると思います。
刑事訴訟法
第345条〔勾留状の失効〕
無罪、免訴、刑の免除、刑の執行猶予、公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。)、罰金又は科料の裁判の告知があつたときは、勾留状は、その効力を失う。
※略式命令の場合に準用するという規定はない
大コンメンタール刑事訴訟法第2版8巻p365
I 趣旨
無罪,免訴,刑の免除,刑の執行猶予,公訴棄却(338条4号による場合を除く),罰金,科料の裁判の告知があったときは,被告人の逃亡のおそれが少なくなり,刑の執行を確保するために身柄を拘束する必要も少なくなるので,その裁判の確定をまたないで勾留状の効力がなくなることが定められたものである。
本条は,当初は, 「無罪,免訴,刑の免除,刑の執行猶予,公訴棄却,管轄違,罰金又は科料の判決の宣告があったときは,勾留状は,その効力を失う。」と規定されていた。このうち,管轄違いの判決(329条〉の場合には,直ちに管轄権のある裁判所に再起訴をするのが通常であろうし, 338条4号に基づく公訴棄却の判決の場合には,その公訴提起の手続を補正して再起訴をする可能性が高いので,被告人の身柄を確保する必要性があり,判決宣告と同時に勾留状を失効させることには不都合があった。そこで,昭和28年法律172号により本条を改正し,この2つの場合を除外するとともに,決定による公訴棄却の場合(339条〉にも準用があるとする当時の通説を採用して,その点を明らかにするために「裁判の告知」と改めたものである。
検察講義案平成21年版P81
身柄拘束中の被疑者の場合は,略式命令の謄本が被告人に送達された時に釈放手続をとる。
仮納付の裁判があった場合は,罰金などの徴収を迅速かつ確実に行うために直ちにその裁判を執行して罰金又は科料を仮納付させることが有効である。
なお,仮納付の裁判を履行しない場合には,強制執行の手続をとることはできるが,直ちに労役場留置の執行をすることは許されない。
7訂 徴収事務解説 P118
だいたい、略式命令の仮納付については明文規定がないことも判明
(注)略式命令の裁判に仮納付の裁判を言い渡すことができるかについては,明文がないが, 「付随の処分」として仮納付を命ずることが
できるものとして運用されています。
森田久弘「徴収事務(1)」研修 第684号P55