同一児童に対する数件の児童ポルノ製造行為(7条4項)につき、包括一罪説を前提にして訴因変更で製造行為の追加を許しながら、判決の法令適用欄では「併合罪」とすることの可否(東京高裁r6.11.19)

 被告人作成の控訴理由に対する判断です。
 東京高裁も数回の製造行為を包括一罪と判示しています。
 ここまで言うんだから、包括一罪なんでしょうな。

 なお、併合罪説の高裁判例も幾つかあるので、判例違反で上告可能です。
武田正・池田知史「児童ポルノ法(製造罪, 罪数)」判例タイムズ1432号
名古屋高裁H23.7.6*2 (津地裁H22.12.27*3)
名古屋高裁H22.3.4*4 (名古屋地裁H21.10.19*5)
阪高裁h28.10.26*14(姫路支部h28*15)
名古屋高裁h26.10.22*16

東京高裁r061119
 3 以上の経過を前提に、検討する。
 (1) まず、前記訴因変更請求は、前記のような追起訴状及び本件請求書の記載から明らかなとおり、追起訴状記載の公訴事実(5回の撮影行為による児童ポルノ製造)に、新たな複数の撮影行為等の事実を追加するものであった。
 他方、前記のような原判決の法令の適用の説示に照らすと、原判決は、原判示第2の1についても、第2の2についても、前記別表1及び別表2の番号ごとに一つずつの児童ポルノ製造罪が成立し、これらがすべて併合罪の関係にあると判断したものと解される。すなわち、原判決は、少なくとも判決宣告時において、追起訴状記載の公訴事実と、本件請求書記載の公訴事実のうち前記の追加された事実との間に、公訴事実の同一性はない(単一性がない)と判断したことになる。
 (2) 所論は、要するに、前記訴因変更請求は、公訴事実の同一性を欠く数罪の訴因を追加するものであって、許可することができないものであるのに、これを許可した本件決定は違法、無効であると主張するのである。
 そこで検討すると、そもそも、訴訟手続が発展的性格を有していることに鑑みれば、訴訟行為の適法性及び効力は、当該訴訟行為の行われた当時の訴訟の状況を標準として判断するのが相当である。したがって、訴因変更許可決定がされた後、判決において、その訴因変更の前提となる公訴事実の同一性判断と異なる罪数判断がされたからといって、直ちに、その訴因変更許可決定が違法なものと評価されるべきではない。
 そこで、本件決定時の訴訟の状況についてみると、訴因変更請求を行っている以上、原審検察官は、本件請求書記載の公訴事実について成立するのは一つの罪であるとの立場を取っていたと考えられる上、本件請求書の記載によれば、撮影はすべて同じ児童を対象とするものであったから、原審裁判所としては、その後の証拠調べにより明らかになり得るこれらの撮影に係る客観的な事情や被告人の主観面の状況によっては、本件請求書記載の公訴事実につき、包括して一つの児童ポルノ製造罪が成立する(したがって、公訴事実の同一性が認められる)との判断に至る可能性がある、と考えてもおかしくはない状況にあったといえる。加えて、原審弁護人が、前記訴因変更請求に異議がない旨述べていたことにも照らすと、原判示第2に係る証拠調べが未了であった本件決定の時点において、原審裁判所が、公訴事実の同一性が認められ得ることを前提に、本件請求書による訴因変更を許可したことが、違法であったとはいえない。
 (3) 以上のとおり、本件決定に違法はなく、したがって、本件決定が無効であるとか、そのため、原判決に、請求を受けない事件について判決をした違法があるとも認められない。
 その他所論が縷々主張する点を検討しても、以上の判断は左右されない。
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 3 原判決の罪数判断の当否等(法令適用の誤りの論旨について)
 (1) 前記のとおり、原判決は、原判示第2の1について、前記別表1の番号ごとに15個の児童ポルノ製造罪が成立し、これらが併合罪となるとの判断をしたものと解される。
 しかし、児童ポルノ製造罪が成立するためには、児童ポルノの製造行為として、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写する行為が必要であるところ、記録媒体等に描写する行為が一つなのであれば、そこに成立する児童ポルノ製造罪の罪数は、一罪と考えるのが相当である。原判示第2の1における記録媒体等に描写する行為は、前記のとおり、最終的にハードディスクに保存するまでの一連の行為一つであるから、この場合に成立する児童ポルノ製造罪は一罪である。
 したがって、原判示第2の1に係る原判決の罪数判断及び法令の適用には誤りがあるといわざるを得ない。
 (2) 所論は、原判示第2の1及び2につき、児童ポルノ製造罪は1回の性行為ごとに一罪とすべきであるから、この点からも原判決の罪数判断は誤っている旨主張する。
 この点、1回の性行為の中で複数の画像が撮影された場合、これを一つの児童ポルノ製造罪と評価すべき場合もあり得ると考えられるが、1回の性行為中の撮影であれば必ず一罪となるものとまではいえず、一罪となるか数罪となるかは、その撮影に係る諸事情により、事案ごとに判断されるべきと解される。
 そこで、原判示第2の2について改めて検討すると(なお、原判示第2の1については、前記のとおり、原判決の罪数判断に誤りがあることが明らかであるから、この点について改めて検討はしない。)、原審証拠から認められる児童ポルノに該当するそれぞれの静止画や動画データの内容、その撮影日時等に照らせば、前記別表2の番号ごとに児童ポルノ製造罪が成立するとした原判決の判断が、およそ不合理なものであるとまではいえず、原判決の罪数判断が誤っているとはいえない。
 (3) 以上のとおり、原判決には、原判示第2の1に係る法令適用の誤りがあるが、本件においては、原判示第2の1の罪数を15個の併合罪と解しても、一罪と解しても、原判示第2の2において複数の児童ポルノ製造罪が成立する以上、導かれる処断刑の範囲に差はない。また、原判示第2の1の児童ポルノ製造罪が一罪であるとしても、その動画データが15点存在することを量刑上考慮することは何ら不当ではないことに照らすと、原判決が、原判示第2の1を15個の併合罪として処理したために、殊更に重い量刑がされたとうかがわれるような事情も見いだせないというべきである。
 そうすると、前記の原判決の法令適用の誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかなものとはいえない。
 (4) なお、所論は、被告人は、防御対象となるべき児童ポルノ製造行為はデータをハードディスクに保存する行為だと思い込んでいたにも関わらず、判決時に至って突如として各データの撮影行為が児童ポルノ製造行為だと認定されたのだから、不当な不意打ちであり、防御に実質的な不利益があった、などと主張する。しかし、前記2のとおり、児童ポルノの製造行為について、原判決が指摘のような認定をしたとは解されないし、原判示第2の1の罪数如何にかかわらず、各データを撮影したことも含めて、訴因変更後の公訴事実において明示されていたことなどの本件の訴訟経過に照らせば、被告人に実質的な防御上の不利益があったとも認められない。
 (5) その他所論が縷々主張する点を検討しても、以上の判断は左右されない。
 法令適用の誤りの論旨は理由がない。