児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪と5項製造罪(不特定多数)は観念的競合だけど、強盗強姦罪と5項製造罪(不特定多数)は併合罪になる(高松高裁H23.12.13)

 強制わいせつ罪と観念的競合になるという点も「吸収関係だ」などと論難して判断引き出して欲しいところです。

 追認された1審の法令適用を紹介しておきます

(法令の適用)
罰条
 判示第1の所為
     刑法236条1項
 判示第2の所為のうち
   強制わいせつの点
     刑法176条前段
   児童ポルノ製造の点
     児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項前段,4項
 判示第3の所為
     刑法249条1項
 判示第4,第6,第7の各所為
     いずれも刑法243条,241条前段
 判示第5,第9,第11の各所為
     いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項前段,4項
 判示第8,第10の各所為
     いずれも刑法241条前段
 判示第12の所為
     刑法243条,236条1項

科刑上一罪の処理
  判示第2の罪
     刑法54条1項前段,10条
    (重い強制わいせつ罪の刑(ただし,罰金の任意的併科刑については児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪の刑のそれによる。)で処断)
刑種の選択
  判示第2,第5,第9,第11の各罪
      いずれも懲役刑を選択
  判示第4,第6,第7,第8,第10の各罪
      いずれも有期懲役刑を選択
併合罪の処理
      刑法45条前段,47条本文,10条
     (刑及び犯情の最も重い判示第10の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入
      刑法21条
没収
      刑法19条1項2号,2項本文
     (押収してある携帯電話機1台は判示第11の犯罪行為の用に供した物であって,犯人以外の者に属しない。)
訴訟費用の不負担
       刑事訴訟法181条1項ただし書

強盗強姦,強盗強姦未遂(原審認定罪名:強盗強姦未遂,強盗未遂),強盗,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,恐喝被告事件
高松高等裁判所判決平成23年12月13日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

第3 弁護人の控訴趣意中,法令適用の誤りの論旨について
 論旨は,?第4の強盗強姦未遂と第5の児童ポルノ製造,?第8の強盗強姦と第9の児童ポルノ製造,?第10の強盗強姦と第11の児童ポルノ製造の各罪は,いずれもそれぞれ包括一罪の関係にあるのに,これを併合罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
 しかしながら,それぞれの犯行の態様及び各罪の保護法益の差異に鑑みれば,上記?ないし?についていずれも包括一罪関係にあるとはいえない。所論は,強盗強姦罪(未遂含む)に吸収される強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪は観念的競合の関係にあるから,強盗強姦罪児童ポルノ製造罪は包括一罪関係にあると主張するようであるが,独自の見解であり,採用することができない。
 したがって,?ないし?について,いずれも併合罪として処断した原判決に所論指摘の法令適用の誤りは認められない。
 論旨は理由がない。