児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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県青少年健全育成条例違反:小学生とみだらな行為、容疑で無職男逮捕 /千葉

 13歳未満の場合は「青少年に対し、威迫し、欺き、又は困惑させる等青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない性行為又はわいせつな行為」というのはそのまま強姦罪・強制わいせつ罪なので、親告罪の趣旨から、刑法だけが適用されると考えています。

http://mainichi.jp/area/chiba/news/20110224ddlk12040136000c.html
逮捕容疑は、16日午前2時ごろ、県内の小学6年の女児(12)の自宅で、18歳未満と知りながらみだらな行為をしたとしている。同署によると、女児は父と2人暮らし。当時、父は別の部屋にいた容疑者に気付かなかったという。
 21日に娘が帰宅しないことを心配した父が交番に相談。翌日夕方になって容疑者と一緒に帰宅したため事情を聴いたところ、「性欲を満たすためにやった」と容疑を認めたという。女児とはインターネットのチャットで知り合ったという。

千葉県青少年健全育成条例の解説
27 みだらな性行為等の禁止(第20条)
(みだらな性行為等の禁止)
第20条 何人も、青少年に対し、威迫し、欺き、又は困惑させる等青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、風俗営業法第2条第6項第1から3号まで又は第7項第1号に規定する営業に関し青少年を客に接する業務に従事させる目的で、青少年に性行為又はわいせつな行為を教え、又は見せてはならない。
    追加〔昭和60年条例第36号〕、一部改正〔平成6年条例第8号〕、
全部改正〔平成17年条例第22号〕
【解説】
 本条は、性行為やわいせつな行為が未成熟な青少年に与える痛手・影響の大きさを考えて、このような行為から青少年を保護するために、動機及び手段において社会通念上非難を受けるべき性質の性行為やわいせつな行為に限定して禁止するものであり、青少年の性をもてあそぶ心ない成人から青少年を保護するために設けたものであるが、平成11年11月1日に児童買春法が施行され、対償を供与又は供与の約束を伴う買春が禁止されたことにより、同法との整合性を図るため本条の改正が求められていた。
 このことから、同法の対象とならない対償の供与等を伴わない不当な手段(威迫し、欺き、又は困惑など)によって単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為又はわいせつな行為については、同法を補完し、本条例で規制するようにした。
1 第1項
(1) 何人もとは、県民はもとより旅行者、滞在者を含み、また、成人であると少年であるとを問わず、現に県内にいるすべての者をいう。
(2) 本条の対象となる青少年とは、すなわち小学校就学の始期から18歳に達するまでの者をいい、婚姻による成年に達したものとみなされる者は除く。
(3) 威迫とは、言動、態度等により相手方に心理的威圧を加え、不安の念をいだかせることをいう。 
(4) 欺きとは、嘘を言って相手を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる一切の行為をいう。
(5) 困惑させてとは、立場を利用した言動や態度により相手を惑い困らせ、精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。
具体的には、債権債務関係、雇用関係等特殊な関係を利用して義理人情の機微につけ込む場合等が考えられる。
(6) 単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為とは、青少年との真摯な関係がない性行為をいう。ここでいう性行為とは、性交のほか性交と同視できる性交類似行為を含む。
(7) わいせつな行為とは、いたずらに性欲を刺激又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥心・嫌悪の情をおこさせる行為をいう。本項の例としては、陰部に手をふれたり、単なる性欲の目的を達するためにのみ行う接吻、乳房を撫でること等がこれに当たる。
罰 則 違反した者は、、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される。(第28条第1項)
2 第2項
(1) 教えとは、青少年にみだらな性行為又はわいせつな行為を相当程度具体的に教示することであり、単に一般的な卑わい談話をすることは該当しない。
(2) 見せるとは、みだらな性行為又はわいせつな行為を具体的に、直接的に青少年に見せることをいう。
本項は、青少年が個室付浴場業、個室型ファションヘルス、ストリップ劇場等又は派遣型ファションヘルスにおいて、客に接する業務に従事させる目的で、青少年に行為を具体的に教えたり、又は見せたりする行為等を禁じたものである。
 (3) 客に接する業務とは、本条第19条の3第2号の解説と同じ意味である。
罰 則 違反した者は、1年以下の懲役又は 50万円以下の罰金に処せられる。(第28条第2項)

【関係法規】
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第 122号)
第2条
○刑法(明治40年法律第45号) 
第174条、第176条、第177条、第178条、第182条
児童福祉法(昭和22年法律第164号)
第34条、第60条
○児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条、第4条、第5条、第6条
売春防止法(昭和31年法律第118号)
第2条、第3条
○犯罪軽法(昭和23年法律第39号)
第1条

【関係判例
○福岡県青少年保護育成条例違反(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決)
〜淫行行為の解釈〜
  淫行とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。
和歌山県青少年保護育成条例違反(昭和48年12月20日大阪高裁判決)
〜青少年条例と刑法の関係〜
  刑法の規定は、「風俗犯としての面をもつとともに18歳未満の少年に対するこれらの行為を処罰することによって間接的には右少年の保護が図られることも否定しがたいところであるけれども、むしろ、直接的には主として個人の一種の人格的自由としての性的自由を保護法益とする」のに対し、条例の規定は、「少年は心身が未成熟であるため反倫理的な行動経験による衝撃や影響を受けることが多く、またこれからたやすく回復しがたいなどの点で成人に比してきわめて特徴的であるので、そのような少年の情操を害するおそれのある行為から少年を保護し,少年の健全な保護育成を図ることを目的とする」ものであるから、「両者はその趣旨ないし目的を異にする」のであり、抵触しない。
○福岡県青少年保護育成条例違反(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決)
 〜青少年条例と児童福祉法の関係〜
児童福祉法第34条第1項第6号の)「同規定は、18歳未満の青少年との合意に基づく淫行をも条例で規制することを容認しない趣旨ではないと解するのが相当である。」