児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

東京都内と神奈川県内における青少年淫行につき、「青少年と知らなかった」という弁解について

 東京と神奈川では条例が違います。
 両罪は包括一罪になります(福岡高裁等)


https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210519/1000064594.html
警察によりますと去年12月とことし1月、川崎市内と都内のホテルで、18歳未満と知りながら、当時高校2年生だった17歳の女子高校生にわいせつな行為をしたとして県などの青少年育成条例違反の疑いが持たれています。
2人はマッチングアプリを通じて知り合ったということで、調べに対し「女性は18歳だと思っていた」と容疑を一部否認しているということです。

 東京都条例は過失による淫行を処罰しない。性交類似行為に至らないわいせつ行為は処罰されない。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(平一七条例二五・追加)
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(平九条例七五・追加、平一六条例四三・平一七条例二五・一部改正)
第二十八条 
第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
(平一六条例四三・一部改正)

【解説】
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物買受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の買受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。


神奈川県条例では過失による淫行は処罰される。
当時の判例がいう「わいせつ」の定義を法文に盛り込んだのはいいが、いまの判例はそこにはない。

神奈川県青少年保護育成条例
みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条 
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならな
い。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。

(罰則)
第53条 
1第31条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
7 第9条第4項、第10条第4項、第15条第4項、第22条第1項、第26条第1項、第27条第4項、第27条の2第1項若しくは第2項第1号若しくは第2号、第27条の3第1項若しくは第2項、第28条第1項、第29条、第30条、第31条第1項若しくは第2項、第33条又は第34条に規定する行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。
解説
4 「ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」とは、当該青少年の年齢について行為者が相当の注意を払い、青少年であることを知らなかったことについて、行為者に過失がなかったことが立証されれば、処罰の対象とされないということである。具体的には、履歴書を提出させるだけでは本人を確認したとは言えず、運転免許証等の顔写真つきの身分証明書で確認するか、必要によっては保護者等に確認するなどの手段を講じた場合は、過失がないと言える。