児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

5項製造罪(不特定多数)と4項提供罪(不特定多数)は牽連犯だという主張

 この主張はこの程度です。
 4項提供罪(不特定多数)は包括一罪ですから(名古屋高裁那覇支部)、そこをかすがいにして、広く科刑上一罪になることになるはずです。
 立法趣旨からすれば「包括一罪」というのが間違ってるんですが、畏れ多くも「判例」ですから従いましょう。

http://www.sanspo.com/shakai/news/101210/sha1012100501002-n1.htm
逮捕容疑は6月12日、東京豊島区のカラオケボックスで、デジカメで私立高1年の女子生徒(16)のわいせつ画像を撮影した上、6月30日から8月25日までの間、東京都千代田区のアダルトショップに画像を提供するなどした疑い。同容疑者は新品の下着にサラダオイルなどでしみを作り、使用済みとしてアダルトグッズ店などに販売する際、撮影した画像をセットでつけていた。

2提供目的製造罪と提供罪
牽連犯の要件である抽象的牽連性と具体的牽連性を満たすから牽連犯である。
条解刑法第2版p198
判例コンメンタール刑法第1巻P493

3牽連犯とする裁判例
判例を挙げる
奈良地裁H18.1.13
さいたま地裁熊谷支部H18.2.9
富山地裁高岡支部H19.4.11
さいたま地方裁判所川越支部H20.3.11
東京高裁H20.8.13
牽連犯としたさいたま地裁川越支部判決の法令適用を東京高裁が追認している。

さいたま地方裁判所川越支部H20.3.11
◇科刑上一罪の処理刑法54条1項前段・後段,10条(判示第3の児童ポルノ提供とわいせつ図画販売,児童ポルノ提供目的所持とわいせつ図画販売目的所持は,それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,判示第2の児童ポルノ製造と判示第3の児童ポルノ提供・わいせつ図画販売,児童ポルノ提供目的所持・わいせつ図画販売目的所持との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として刑及び犯情の最も重い児童ポルノ提供目的所持の罪の刑で処断)

東京高等裁判所H20.8.13
6法令適用の誤りについての職権による指摘
原判決には,(1)原判示第2の事実について,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項前段,4項前段を適用すべきところを,同法7条5項前段しか適用しなかった点,(2)原判示第3の事実中,児童ポルノ提供及び児童ポルノ提供目的所持について,7条5項前段、4項前段を適用すべきところを,同法7条5項前段,4項後段を適用した点,(3)原判示第2と原判示第3の罪を牽連犯とした上で,原判示第3の児童ポルノ提供目的所持の罪の刑で処断するとしたにもかかわらず,原判示第2の刑種の選択をした点,(4)主文で没収を言い渡したにもかかわらず,その根拠法条を摘示しなかった点で,法令適用の誤りがあるが,これらはいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな誤りとはいえない。

4 児童ポルノ法には刑法8条にいう「特別の規定」がないこと。
 牽連犯は刑法第1編54条に根拠があり、提供目的製造罪と提供罪とが「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるとき」に当たることも明白である。
 しかも、児童ポルノ法には刑法8条にいう「特別の規定」がない。

刑法
第8条(他の法令の罪に対する適用)
この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。

従って、両罪が牽連犯となることは明かである。