児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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H13.4〜H15.7にわたる準強制わいせつ罪を包括一罪とした事案(横浜地裁H16.9.14)

 被害児童が数名いて、第2、第3で併合罪加重される場合には、包括一罪になりやすい傾向があります。裁判所もよく考えてないのかもしれません。
 

横浜地方裁判所平成16年9月14日
判例タイムズ1189号347頁
以下の各犯行に及んだ。 
第1 被告人は,平成12年4月ころから,神奈川県市〈番地略〉○○教室等において,同塾塾生(当時)のA子に対し,ロンドン生まれの同女の顔にほくろが数個あることについて,「君はメラノーマかもしれない。君は普通の日本人より色素が薄いから」「日本は紫外線が強いから,君は普通の日本人よりメラノーマになりやすい。メラノーマは,ほくろが癌化して全身に転移する。メラノーマにかかったら,もって半年」などと言い,これに不安を覚え,左乳房下のほくろについて相談に来た同女に「それは危ない」「病院で切り取って調べると,悪性になって全身に広がる。病院には行くな」などと断言し,診察と称して同女の上半身を裸にしてそのほくろを見付けるや,「普通のほくろとは違う。ふくれたようなほくろで,ほくろと肌の境界線がはっきりしてない。色にもむらがある。危ないかもしれない。もしかしたら悪性かもしれない。このままだとちょっとやばいんではないか。もしこのほくろがメラノーマだったら,乳房に,触ると分かるようなしこりができる。癌を早期発見するためには触診したほうがいい。」「いつしこりができるかも分からない。だからこれからも続けた方がいい。」「胸にほくろがあると乳癌になりやすい。乳癌になると子宮に転移しやすい。子宮に転移すると全身に転移する。子宮に転移したかどうかは,指を入れて触ると分かる。」「治療をやめると一気に悪い方向へ行くかもしれないから続けないといけない。」などと言って同女に,医師である被告人にはわいせつ目的などはなく,同女の悪性黒色腫(メラノーマ)や癌の早期発見及び治療のために被告人による乳房や陰部等の検査・治療を受ける必要があると信じ込ませて,被告人の指示や行為に疑いを懐いて拒否することができない心理状態に陥らせたうえ,その抗拒不能状態に乗じて以下の各わいせつ行為をした。 
1 被告人は,平成13年4月14日ころ,前記教室において,A子(当時14歳)に,悪性黒色腫や癌の診療行為等を装って,着衣を脱いで全裸にならせたうえ机の上に仰向けに寝かせ,陰部を押し開き,手指を挿入するなどしたり,その乳房を手でもむなどしてその身体を弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。

2 被告人は,平成14年7月21日ころ,同県市岡本〈番地略〉○○教室個別指導教室において,同女(当時15歳)に,同様な診療行為等を装って,着衣を脱いで上半身裸にならせ,乳房を手で触るなどしたうえ,全裸にならせて机上に仰向けに寝かせ,陰部を押し開き,手指を挿入するなどしてその身体を弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。 
3 被告人は,同年11月3日ころ,同個別指導教室において,同女に,同様な診療行為等を装って,同様に全裸にならせて机上に仰向けに寝かせ,股を開かせたうえ陰部を押し開き,手指を挿入するなどしてその身体を弄び,さらに,陰部等をビデオカメラで撮影した。 
4 被告人は,平成15年1月13日ころ,同教室において,同女に,同様の診療行為等を装って,同様に全裸にならせて机上に仰向けに寝かせ,股を開かせたうえ陰部を押し開き,手指を挿入したり,舌でなめるなどして弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。 
5 被告人は,同年7月17日ころ,同教室において,同女(当時16歳)が同様の状態にあるのに乗じ,同様の診療行為等を装って,同女に制服を着たまま机上に仰向けに寝かせ,その太股等を手で触るなどし,パンティを脱がせ,股を開いたうえ陰部を押し開き,手指を挿入するなどし,さらに同女に着衣を脱いで全裸にならせて机上に俯せに寝かせ,その太股付近を手でなでるなどしてその身体を弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。

 (法令の適用)
 被告人の第1ないし第3の各行為はいずれも刑法178条,176条前段(第1,第2の各行為はいずれも包括して)に,第4の各行為は包括して同法181条(178条,176条前段)にそれぞれ該当するところ,第4の罪について所定刑中有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い第4の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役8年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入することとする。